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(二)‐10
穴の斜面まで死体を引っ張り上げたところで、雨が降り始めた。この場所は木に覆われた場所であったので、頭上で雨が木の葉に落ちる音が聞こえたものの、野上のところまで雨粒が降りてはこなかった。
雨はすぐに強くなり始めた。一メートルほど掘った穴の底に死体を放り込んだ頃には、木々の葉と葉を伝って雨粒が不規則の落ちてきて、野上の肩や頭、腕などにかかった。
懐中電灯の光を当てて穴に放り込んだ死体を見ながら、野上は達成感を感じていた。久しぶりの重労働であった。もちろん日中の仕事も重労働ではあったが、それは機材などを利用することで負担はだいぶ少なくなっていた。それに対してこの穴を掘る作業や死体を持ってくるというのがこれほどまでに大変だとは、思わなかった。だからそれらのことの解放されたという思いが野上を少しだけすがすがしくさせた。
(続く)