第6部 一章 2話 魔術師見習いと警部補
1911年10月13日 帝都魔法団 正門前
朝早く指定された時間に門の前で待っていると、流行りのキャンピングカーという家にタイヤがついた様な車が目の前に止まり、運転席の窓から30代ぐらいの無精ひげの男性が顔を覗かせてきた
「そのマントと帽子…魔法団か?」
「そうですが、あなたは?」
「今回の調査を一緒に同行する、ハミルトンだ」
「クラーク魔術師見習いです、車に乗っていいですか?」
私が助手席に乗ると車が動き出した
「ところで、あなたはどこの所属なのですか?ブラックドックの扱いに慣れている専門家だと聞いているのですが」
彼は黒いワイシャツの両脇に二丁拳銃をぶら下げていて、その風貌は政府の人間というよりは、無法者で魔術に心得がある人物だと思えなかった。
「俺は、警察団の夜警課の警部補だ」
夜警課!? 男の人が行く夜の店や性犯罪の事件を担当する課だとしか知らないけど…
魔術に一番遠い部署じゃない…本当にこの人で大丈夫なの…
「えっと今回の調査だけど、村に着いたら村長にあいさつして…」
「俺はブラックドックを捕まえるか仕留めるかすればいいんだろ?」
「え、ええ、できれば殺さないで捕まえてくれると助かります」
「ああ、善処する」
その後会話という会話もなく
私は気づけば助手席で寝てしまっていた。
「おい、見習い起きろ」
男性の声で私はぱっと目を覚ます。
「うん…あ、すいません!寝てしまいました!もう着きましたか…あれ?」
周りはすでに真っ暗で森の砂利の林道に車は止まっていた
「前方の奴ら、見えるか?」
警部補がそう言って人差し指を暗闇に向けながらつぶやいた
私は目をかすりながら指の差す方をまじまじと見てみる。
ちょうど十字路になっていてその中心に無数の赤い点と炎がかすかに見えた
「ブラックドック!!!!!」
大きな声で私は叫んでしまった、初めて見たその異様な姿に私は恐怖してしまった
「見ればわかる、迎撃するぞ!!!」
警部補は、窓を開けて外に出る、ブラックドックもこちらにすごいスピードで迫ってくる
「ライトシュラッシュ!!」
私も外に出て光魔法でヘルハウンドに光の玉を打ちまくった、その隣で警部補は、二丁拳銃で、バンバン撃ちまくっていた。
「警部補!!!!できるだけ殺さないでください!!!」
「バカ言うな!!奴らに食い殺されるぞ!!!」
ブラックドック達は私と警部補の攻撃をジクザクにかわしながら私たちとの距離を詰めてくる
「なんでぇ当たらないのぉぉ!いやぁぁ!しにたくない!!!」
私の脳裏には狼型の魔獣に食い殺されたり嬲られた事件調査記録の記事が脳裏に浮かんでいて、ただひたすら、ライトシュラッシュを打ちまくっていた。
そんな私に比べ、警部補はてきぱきとリロードをしては撃ちと冷静そのもの
「おいおい、それでも魔術師見習いかよ…」
すると、警部補の撃った弾が大きく光り、それを見た
ブラックドックのたちの群れは動きを止めて、道外れの森に逃げてしまった。
「ふぅ…何とかまいたな…それにしても大型だな…」
「死ぬかと思った…」
私は安堵して地べたに座り込んでしまった…
「おいおい、見習いだろうが…」
「だって、だってあんなの初めてですよ!」
「だからって…早く車に乗っていくぞ」
警部補は、手際よく両手に持った拳銃を脇のショルダーにしまってエンジンをかけ始めた
「さっきの奴らは魔術師の使い魔で間違いないな」
「でも…こんな山奥で群れをなしていたし、野生の可能性も…」
「確かに群れを成していたが、俺が銃口を向けたら、ジクザクに向かってきた」
「野生ならまっすぐ突進してくるだろう、そのほうが目標に手っ取り早く仕留められる
だが奴らはこれ(銃)が武器だと認識して回避行動をした」
「だとすると…訓練された使い魔ということですか?」
「そうだ、魔術師がこの付近にいるはずだ」
私たちは警戒しながら道を進んだ
しばらくして、森に囲まれた村についた、ここが調査依頼を出した村だろう
その村は、昔ながらの家が立ち並び、まるで中世の童話に迷い込んでしまったと錯覚してしまうほどだった、門の外にいた村人に私たちのことを伝えると、村長の家へ案内された。
「いやぁ!遠い王都から大変ありがとうございます、わしがぁ村長じゃ」
「初めまして、魔法団、魔術師見習いのクラークです」
「俺は、彼女の護衛の警察団のハミルトンだ」
「おお…マント姿…本物の魔女ですなぁぁ」
「はぁ…どうも」
今の時代、魔女は差別用語で使用はタブーとされているはずなのに
辺境までいくとこんなものなのかな…
「村長、早速だが調査内容について詳しく教えてくれないか?」
「あ、そうですなぁ!それがですなぁ、最初は森に目の赤い狼が村の近くに現れましてなぁ」
「それから、わしの家にあるラジオに変な声が流れたり」
「狼なら先ほど私たちも会いましたわ、それでお尋ねしますがこの近くに魔術師などは住んでいますか?」
「魔術師?…いないですなぁ」
「そうですか…」
「それじゃあ、ラジオの音は?」
警部補が村長に尋ねる
「あぁ、そっちはですなぁ、夜になるとアンティーク用の魔法石ラジオから聴こえてくるのじゃ」
「魔法石ラジオか」
「その時間は、決まった時間なのか?」
「夜の8時くらいですわ…」
「なるほど…そろそろだな、早速聞いてみようじゃないか」
私たちは、村長の家にある古い魔法石ラジオのある部屋に向かった
科学が進んでからは、電力を力とする電気ラジオが主流になり、魔力を必要とする魔法石ラジオはほとんど使われなくなった、まぁ魔術師とかはバリバリ現役で使っているけどね。
「こちらが、そのラジオですわ、まぁわしは魔力が無いから使えんからアンティークで飾っているんじゃが、ここ最近勝手に動くようになって…」
村長の書斎室の中央に置いてあったラジオはとても年季の入ったラジオで数字やら書いてあって古いラジオしかわからなかった
「村長さん、このラジオどこで手に入れたんだ?」
「わからんのよ、この家に昔からあるものだからな」
「そうか、クラーク主査、君の能力で調べてくれないか?」
「はい、少し触ってみますね」
わたしはそのラジオに手を添えて、ラジオの記憶を見るために集中する
「う…」
なんだろ、いつもならすぐその記憶が断片的だけど映像として見えるはずなのに、何かに遮られている…こんなの初めての感覚…気持ち悪い…
なんだ…うん?見えた…なんだろう、すごく古い時代だ…誰かが怒鳴り合っている…
やばい、向こうからいけない者が来る…あれは…
その瞬間、目の前が真っ黒になった
「うあぁ!」
わたしはバランスを崩し、後ろにいた警部補によりかかってしまった
「す…すいません」
「問題ない、君こそ大丈夫か?」
「ええ、何か呪術系に遮られたのか…初めてです」
「なるほど…」
なんだろう、すごくこの件に関わってはいけないと自分の直感が訴えている…
「お二人様、そろそろ時間じゃよ…」
村長が私たちにそういうと
魔法石ラジオのランプが光だした
「くるぞ」
「はい…」
ザーザーと砂嵐音がながれる
「…こちら…護衛騎士団の…皇太子が捕まった…敵に…がいる…こちらも危ない…」
途切れ途切れだが、若い男性の声だった
「これじゃ! 毎晩わしの書斎でこれが聞こえるんじゃ!」
確かに、夜中の書斎から聞こえてきたら普通に怖いわ、にしても
この言語は古王国語だ…私も途中途中わからなかったけど
魔術学校でもっと勉強しとけばよかった…
静かに聞いていた警部補が
「これは、魔法石が波動をキャッチしただけだ、ラジオには害はないから大丈夫だ」
「本当かぁ!?」
「それに、この村は古い結界が張られていた痕跡もあるし、変なものは寄ってこないだろう」
「そうなのか…」
「今日はもう遅い俺たちは自分たちの車で寝て明日調査を開始する」
「それじゃ、わしの息子夫婦が使っていた家が向こうにあるからそれを…」
「いや、結構だ」
そうきっぱり言うとそそくさと警部補は村長の家を出て行った
「あ、失礼します!」
そのあとに私も警部補に続く
「あの、警部補…素直に家を借りれば…」
「いや、俺の車の方が安全だ、腹は減ってないか?」
車の荷台は本当に小さな部屋になっていて、少しわくわくした。
警部補は、部屋にあるキッチンで手慣れた手つきでフライパンで目玉焼きをやきながら
サンドイッチを作ってくれた。
「警部補、これすごくおいしいです」
「そうか、よかった」
最初の印象と違って、口は悪いけど悪い人ではないようだ
その日、私は車のベットで眠りについた
誤字脱字、その他あれば教えてください。




