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アノニマス||カタグラフィ  作者: 和泉宗谷
Page.3(上):昔馴染みと聖遺物
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0.ささやかな幸福を(序章)

昨日「ライト回やりたい!!」とか言いながらぶっちぎりで重たい(予定)の三話おっぱじめます~!←

一応前半までをライト回として軽めな調子に始めたいと思いますので、宜しくお願い致します~!

彼女と初めて出会ったのは5年前。つまり初めて設立された国立調査団『大和桜花調査団』の招集を受け、迷宮区へ向かったその日だった。

国が秘密裏に所有していた神の力宿す刀、十束剣。その一振である『天之尾羽張』の所有者である草薙一樹は、当時15歳という若年でありながら調査団の中核として国に指名された。

一切の邪悪を打ち払う聖なる焔。――『天之尾羽張』には、そのような特別な力が宿っていたからだ。

『お国のために忠義を成せ』などという前時代的な思考は一樹は勿論持ちえていない。むしろそんなものクソ喰らえ、と思っていたが、しかし彼はこの召集を結果として受け入れた。

外界から一切の刺激を受けられない、モノトーンの世界の弟を連れ出すために。

兄が弟にかっこいい所を見せたいと思う理由には、十分すぎる動機だった。

危険は多くある。現時点でも1万はくだらない調査員がその深淵へと飲み込まれ、今回の遠征でも同所属の調査員は大勢死ぬだろう。

しかし、一樹はさほど悲観してはいなかった。――この身に宿る『未来視』の異能と、弟の頭脳さえあれば、怖いものなど何も無い。そう信じて疑いはしないのだから。

そうやって現地集合で、初めて調査員全員の顔合わせが行われた、イタリア旧中央区。サン・ピエトロ大聖堂跡地で一樹は運命に出会う。


一切の穢れのない濡れ羽色の艶やかな髪。そしてその下の一点の曇りのない琥珀色の瞳の、淡麗な女性。


一目見た瞬間に、一樹は唐突に理解した。――この女からは、距離を取ろうと。

だって、そうしなければ。――この先の未来で、自分は揺れてしまうから。

選択を誤る日が、必ず来ると。無意識下に直感して、一樹はそれでもその美しい女性から、目を離せずにいた。

と、その視線に気づいたのか、琥珀色の双眸がゆるりと一樹に振り返る。黄金の散る紅のそれを揺るぎなく見据えながら、彼女は1歩ずつ踏みしめるように近づく。

やがて、お互いの距離はゼロになる。

「…そんなに見られると恥ずかしいのだが。兎に角まずは自己紹介だな」

その見た目に反して中性的な言葉遣い。まるで鈴の音が鳴るような心地の良い声音で、彼女は破顔しながら手を差し出す。


「――九重藤野だ。貴方と同じく十束剣の一振の今代として、この度の召喚に応じた。同じ担い手として、話が出来たら嬉しいな」


これが運命の出会い。自分には永遠に訪れないだろうと思っていた、甘酸っぱい関係の前触れ。


彼女。――九重藤野との出会いは人知れず、ひっそりとしたものだった。

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