×××.sideG:創恋記
最終章更新開始いたします!少年たち(たまに少女たち)の行く末を、どうぞ最後まで見守って頂けますと幸いです。
「あんたって、旦那さんとか欲しいとか思わないの?」
突拍子もない話に、私はぱちりと瞳を瞬く。森林の奥深くの、静寂に横たわる湖の透明なオパール。
「次はどういう暇つぶし?」
「いや、橋で門番をやってるとね、色んな魂を見るじゃない。その中で伴侶の事を想うものも多いのさ」
ざっくばらんにいう友人に、隣の私は膝に顎を載せる。
「考えたこともないわね」
「ほほう、巨人族一の美貌の持ち主は言うことが違いますな」
「揚げ足取らないで。そうじゃなくて、旦那さんが欲しいとか、そういう気持ちを持ち合わせていないだけ」
だって生命は死ぬものだ。それは草木や動物、人間や妖精、そして神ですら平等に与えられる結末。その結末をどうせ迎えるのに、なぜ生命は他を求めるのか。
手に入れたものはいずれ、その手を離れてしまうのに。
それを近くで視ることがでるから、なおのことそう思う。
冷めた私の返答に、しかし友人はニタリと笑う。一応女型の身体なのだから、そういう表情はやめた方がいいと言っているのに。
「じゃあ、そういう気持ちが湧いた相手となら一緒になる?」
「それは、」
言いかけてふと気づく。この意地悪な友人の口車にまんまと乗せられている、と。
「もう、また私で遊んだわね?モーズグズ」
「あんたのそう言う疑わない無垢な精神は貴重よ?だから美人さんなのかね」
「…もう」
この友人のこういった言葉遊びは毎度の事ながら、それに全て引っかかる私も私だと思う。それでも相手を憎いと思ったことは無いのだから、やっぱりこれからも関係性は変わらないだろう。
頭を切りかえて、先程の問いかけを反復する。問われたからには答えないと、それが私の私への向き合い方だ。
何も変化のない、閉じられた楽園。これが理想郷だと知りながら、なんの刺激もない平和の中で感情が死んでいく、せめてもの抗いだ。
憂いを帯びたオパールを、ゲルズは考えるように少し臥せながら。
「でもそうね。そんな相手がもし現れたら、私はきっと、焦がれるような恋をするのでしょう」




