3-3.歯車は狂い出す
「え〜っと?この地図通りなら確かこの辺りの筈なんだけどなぁ…」
手に持ったルーズリーフの切れ端と現在地を照らし合わせながら、レグルスは一人ローマの街道で立ちつくす。
切れ端には学院を抜け出す前にアデルに聞いて、書いてもらった周辺地図がそれなりのイラストで描かれている。アデルと再会していくばくもないが、彼の才能の多様さは兄であるアデルも舌を巻く程だ。
離れ離れになる前は、何も知らない雷にさえ脅えていたのに。
頭をよぎった郷愁を、レグルスは頭を降って無理やりに追いやる。いまはそんな感傷に浸っているべき時ではない。
「…"ストレンジ"通り、"20-5"、ね」
つい先程の、迷宮区内に設立された病院での出来事を思い出す。
同時に、あいつの声音も。
『少し早いプレゼントをくれてやる。図書カードでいいか?』
『レジで出せるだろそのくらい。んでもって好きな本でも買ってくるといい。自己学習用に聖書あたりはどうだ、ここでは役に立つぞ』
『20ユーロもあればいいのが買える。5セントくらいはあった方がいいかもな』
かなり乱暴な話題転換に違和感を感じたのは4フレーズ目だ。あの生真面目で自分の出生に少なくない誇りを持っている彼にしては、些か以上に荒い言葉遣い。
違和感に気づき、言われた言葉を脳内で組み上げて、ようやくオリバーが真に伝えたい事に気づいてその場は大人しく引き下がった。
まぁしかし言葉もあながち嘘では無かったらしく、一瞬だけ帰った宿舎の部屋には図書カードが置いてあった。そのことを思い出して、憎らしげに鼻を鳴らして。
「しっかし、フレーズの頭文字が住所とか、いきなりあんな暗号めいた伝言普通気づく?」
しかもあのタイミングで、自分が知らない住所なんて。この住所に何があるのかすら、レグルスには皆目見当もつかない。まぁ図書カードが置いてあったと言うことは、きっとこれも言葉通りに書店なんだろうが。
「本当面倒くさい事してくるよね、お貴族様は」
言いながら、レグルスは僅かに視線を細める。オリバーのその真意を見抜くように。
こんな回りくどい手段を取るほどに、周知されたくないことなのだろう、と。
だからレグルスはここに来るまでの道中、無害な子供を装って神経を尖らせてきた。彼がここまでお膳立てしてくれたものを、自分が無に帰す訳には行かないのだから。
しかしどうやらその心配はないようで、自分には監視のような視線はここまでは感じられなかった。それとなく今もギリギリを攻めてみているが、なんの反応も返って来ないところを見ると、やはり自分の直感は正しいようだ。
それだけ、自分は相手にとって脅威と感じられていないということなのだが。
その事実にレグルスは一人で苛立ちながら、それは場違いな苛立ちだと心の内にしまい込んで、目的地を目指す。
「20-5…ここかな」
紙切れから視線をあげるとやはり書店だった。想像していたよりかはややレトロチックなところを除けば、予想通りの建造物。
真鍮の取っ手を手前に引けば、ささやかな呼び鈴の音が店内に響く。
「Bonjour.」
「わっ!?」
呼び鈴が鳴ってしまったことで、店主にも気づかれてしまったのだろう。ひっそりと探し物をしようと思っていたレグルスは、思わずびょんと飛び退いてしまう。
「ふ、フランス語?オレわかんないよ」
「あぁ、すまない。いつもの癖でね、つい母国語で挨拶してしまった。…てあれ、レグルスくんじゃないか」
「…あ、あなたは、」
群青色のおかっぱに、アメジストの双眸。どことなく見覚えのある色彩に、レグルスは白銀の双眸を瞬く。
「シリルさん、でしたよね?」
「覚えてくれていて嬉しいよ。挨拶出来たのは少しの間だけだったからね、忘れていても仕方ないかなと思っていたんだけど」
言って、オラクルの向こうのアメジストを穏やかに細めながら、シリル・L・ブルームフィールドは紳士としての簡易的な礼をする。
「こんなところで何してるの?」
「言ってなかったか?ぼくは本が好きでね、ここはぼくの店なのさ」
「え、貴族なのに?」
「貴族が商売やっちゃいけない、なんて決まりは無いよ。ま、ほとんど趣味だからそんなに繁盛しているわけじゃないんだけどね」
貴族の三男坊からなのだろうか。グウェナエルや長子のルイと違いかなり垢抜けた調子でシリルはあっけらかんと肩をすくめる。
言葉遣いからも分かるように、シリルはあまり貴族社会に既存していないようで、どちらかと言うと庶民の暮らしぶりに興味があるらしい。と言うよりもそちらの方が彼の気性にあっているらしく、実家にもほとんど帰らずこうして一人でマイペースに暮らしているという、かなり奇抜な男性だ。
貴族はみんなきらびやかな衣装で呑気にパーティを開いて豪華な食事をしている、なんて在り来りな貴族像を持っていたレグルスはかなりショックを受けた。
そんなキリルは気にすることなく。
「だからこうして使われてるの。秘密のやり取りをする場所に、ね」
「、」
唐突な一言に、レグルスは隠しきらずに僅かに動揺する。それだけで貴族の読み合い社会をまがいなりにも経験しているシリルにとっては十分過ぎたようで、オラクルの奥で眇められるアメジスト。
その素直な反応に、きっとこの子は素直で優しい子なんだろうなという言葉は飲み込んで、部屋の奥にあるカウンターに腰を下ろす。
「詮索するつもりはないから安心していい。むしろここに持ち込まれる案件は厄介すぎるものばかりでね、ぼくとしても関わりたくないからご自由に」
言うだけ言って机の上にある一冊を手にすると、シリルは自然な流れでぱらぱらとめくり始めてしまう。客が面前にいるにも関わらず、なんて自由さか。
それは本当に詮索するつもりのない証明だと受け取っておく。
「聖書の棚ってどれになりますか?福音書とか」
「聖書は入口から向かって一番右の奥。…にしても『福音書』ね。あいつが1番気に入ってる書だね」
後ろに続いた言葉はひそめられ、レグルスには届かずに止まった空間に霧散する。
短く礼を言ってレグルスは教えられた右手奥の本棚に向かう。
聖書の数も教派や時代によって枝分かれし、しかし表紙はほとんど変わらずに厳格で単調なものばかり。どれがどれだかレグルスにはさっぱり分からない。
「福音書、福音書…って聖書なんて読んだことないよ。全部一緒じゃないの?」
「福音書は上から三段目の左から数えて13冊目だよ」
透視能力でも持ってるのか、と突っ込みたくなるほど絶妙なタイミングでの指摘に若干引きながら、レグルスは言われた通りの本を引き抜く。
『gospel』――英語で確かに『福音書』と書かれた表紙は、他の本よりも些か年季が入っているように見とれた。
「――君はそれを見ない選択もある」
何の気負いもなくごく自然に表紙をめくろうとした時、やはり絶妙なタイミングでかけられた声にその手を止める。
先程までの軽薄な言葉ではない、重く問い質す声音にレグルスは見えない声の主の先の言葉を待つ。
「君は随分とオリバーに気に入られているようだ。この場所はね、ぼく達とその従者しか知らない場所なんだ。そんな場所を教えるくらいには君を気に入っているし、心を許しているんだね」
ぱたん、とハードカバーを閉じる音。先程から客の1人も入ってこないところを見ると、魔術的な目くらましもされているのだろうかと想像するが、魔力適性の低いレグルスには分からない。
「でもだからこそ、あいつは君をここへ向かわせた。――これ以上、君は踏み込むべきじゃない」
それだけでレグルスは言っている意味、その裏側に隠された意味も理解してしまう。
これ以上、こちらの世界に足を踏み入れるなと。
これ以上、自分に付きまとうなと。
これ以上は、生命を危険に晒す。
自分からはもう離れろと。それが出来ないのであればこれ以上近づくな。そうしないと生命を落とすことになる、と。
「レグルスくん。君には大切な弟を救ってくれた恩義がある。それはぼくだけでなくロングヴィルの全ての人間が抱いている感情だ。だからこそ、恩人にこれ以上危険な事をさせたくない。君は元々貴族社会ともこんな世界ともなんの因果もない、普通の一般人なんだ。君には、知らない権利がある。君には。――君の人生を楽しむ権利がある」
貴族と孤児ではなく、平等な人間としての言葉。その言葉には一切の裏がないとレグルスは直感で感じ取った。
それが自分の身を案じてくれていると、正確に理解した上で。
レグルスの答えは早かった。
「ありがとうございます、シリルさん。でもオレはもう決めてるんです」
本当は脆くて弱い、あの人の行く末を助けると。
長くて短い沈黙を経て、やがて根負けするように吐かれるため息。
「…やはりぼくでは止められそうにない」
「それにあいつから言われてなんか、絶対にやめてやらないとも決めてるんです」
「そのあたりの頑固さもあいつに似てるな」
くすくすと上品に笑う声を聴きながら、レグルスは今度こそ手にした福音書を開く。
「ならもうぼくは止めない。己の心のままに進むがいい、レグルス・アマデウス。神に愛された者よ」
その先に、どんな福音があるとも知らず。
「――これって、」
*****
唐突の呼び出しに、蓮は隠す気もなく訝しげに琥珀色の双眸を眇める。
彼が不思議に思う点は複数ある。
まずは呼び出された理由。自分が彼に呼び出された理由はいくつか思いつくにはつくが、しかしどれも弱く決定打にならない。そもそもかの『聖戦』時ならいざ知らず、今の自分に利用価値はほとんどないのだ。所詮はいち学生、いち2級医療魔法士。他を探せばいくらでもいる。
次に集められたメンツ。まずは例に漏れず各クラスの監督生らだ。喧嘩を売って以来彼らには会っていなかったしもう会う気も無かったのだが思った以上に速すぎる再会に、自分自身毒気を抜かれてしまった。
それだけなら円卓の生徒が呼び出されただけなのだが、最後の一人の存在がそれを否定する。
蓮から見て左側に立つ、裏地の赤い女学生。しゃんとした佇まいは、それだけで蓮のような庶民とは育ちが違うことを証明している。
近接歩兵科3年、ユーナ・デュ・ウィンスレットは蓮のそんな視線にも気付かぬ振りをして、眼前だけを見据える静謐なシクラメンの双眸。
その視線の先には、この場に蓮を含めた5人を招集した人物が堂々とデスクに着座していて、蓮もユーナの視線を追うように顔を向ける。
蓮が最も不自然に思う、自分たちをこの場に呼び出した張本人は、ゆるりとした口調で喋り出す。
「急な呼び出しに関わらず、よく応じてくれたね」
「いえ、理事長の呼び出しとあれば我々が無視する道理はありません」
明らかに緊張して強ばっているムラトの声に、理事長――アルベルト・サリヴァンは薄く微笑む。
その裏に薄ら寒さを感じて、蓮はひとり緊張感を高める。――かつて戦場で感じたものと同じ種類の、気味の悪さを直感的に感じて。
アルベルトは細い指を絡めると、その下に口元を隠して。
「単刀直入に言おう。君たちには後日に控えた迷宮区最下層への攻略部隊へ加わってもらう」
「わ、…我々が、ですか?」
「そう言った。元々この学院はそのために作られたものだ。それはお前も知っているだろう」
「それはそうですが…。他の調査団の方々が行かれるものと」
ムラトの言葉をアルベルトは鼻で一蹴する。その態度には明らかな嘲りが感じられた。
「いつまでも守られているだけだと思われては困るな」
「……っ、」
いつまでも独り立ちができない子供を嘲る第三者のような言葉と態度に、そのことに気づいて昂った感情をムラトはなんとか抑え込む。
同じ貴族同士とはいえ、相手は当主で彼は次期当主候補。複数の目がある中で感情的な態度を振るえば、家同士の諍いに発展しかねないことに、ムラトは気づいたからだ。
しかし、と。その問答を聞いて蓮は気づかれないように琥珀色の視線を翡翠色に向ける。
論点をズラされたな、と。
『ほかの調査団はどうなのか』というムラトの問に対して、アルベルトは直接回答をしていない。それが彼にとって痛いところなのかそうでないのかは現時点では分からないが、突かれて欲しくない部分というのは確かなようだ。
そのことに気づいていながら、蓮はそこを指摘する気はなかった。そもそも自分は最深部攻略には参加する意志を示すつもりだったし、何より今のアルベルトに目をつけられたくないからだ。
『聖戦』の時。『ノアズアーク』を率いたケインと同じく復讐に濁った瞳の彼には。
「質問は他にないなら次だ。このリストにある人間に招集をかけろ。部隊編成も記載してあるからその通りにしろ」
「私たちだけでは無いんですかっ?」
アルベルトの言葉に真っ先に反応を示したのは丁那だ。彼女は先のアルベルトの指示を受けてからずっと縮こまって震えていたが、遂に恐怖が打ち勝ったのだろう。元々後方支援科は表立って戦闘をしたくない人間が集まる場所で、それが学生ともなれば迷宮区に出入りする頻度も戦闘科よりかなり低い。それを望んで入った人間も少なくないはずで、性格を見るに丁那もその1人だろう。
恐怖に声を強ばらせながらも言い切った丁那に、今度は目も合わせずに。
「当たり前だ。お前たちが一騎当千の戦闘力を持っていたなら話は別だがな」
「っせめて有志とかにするべきでしょう!?死ぬかもしれないのに、本人の意思を尊重するべきです!」
丁那に後押しされてか、クレスが食い入るように1歩デスクに歩みでる。そのままデスクに乗り出そうと手を挙げて、その行動は途中で不自然に止まる。
目の前の殺気に当てられて、クレスは時間を無理やり止められたかのように静止する。
そのクレスを一瞥する双眸は、苛立ちに眇られた翡翠。
「…何度同じことを言わせる気だ。入学時の誓約書にもそう書いてあるはず。お前たちには従う義務がある」
それだけで声を上げた2人は反論を撤回する。俯いた顔は青白く、額にはいくつもの脂汗が浮き丁那に至っては恐怖で歯が鳴ってしまっている。
――まるで暴君だな。
クレスも丁那もムラトも、この場でももうろくに話すことも出来ないだろうと、取り敢えずこの場を収めようとして。
「それで。私はどのようなご用向きでお呼びしたのでしょう、理事長」
銀鈴のような涼やかで芯のある声と共に、蓮の左側の空気が揺れる。ユーナは1歩歩みでると、真っ直ぐにアルベルトを見据える。
「前置きが長くなったな。いつも私の剣の面倒を見てくれて感謝しているよ、ウィンスレット嬢」
「それは何よりでございます。わが家の当主にもそのようにお伝えいたします」
言って、ユーナはその場で軽く礼をする。ユーナの態度が気に入ったのか、アルベルトの纏っていた空気が僅かに緩む。
アルベルトは微笑んで。
「いつも良くしていただいているよしみでひとつ話がある。今回の最深部攻略に、貴公の魔導具を貸与して貰いたいんだが」
蓮の位置からは、1歩分前に出ているユーナの表情は見て取れない。しかし透けるような空色の下のシクラメンは穏やかに微笑して。
「――そちらは承諾しかねます」
軽やかに返された返答に、アルベルトの瞳が明らかに歪む。
「我々はあくまで個々人との契約を重視しています。ひとつひとつが唯一無二であり、使用者に沿ったものを制作することに美学があるのです」
「金なら出すが」
「そうではありません」
まるで分かってないと、ユーナはふるふると首を振って。
「戦争に使う量産品の粗悪品など、その辺の戦争屋の武器商人に頼んでいただきたい、と申し上げております」
花がほころぶような笑顔と共に皮肉を浴びせた彼女に。
――瞬間、空間を裂くような閃光が一閃する。
蓮が気づいた時には既に応酬は終了していた。いつ抜かれたのか分からない宝剣が、ユーナの左頬を掠め、ばっさりと切り裂かれた髪束がぱさりと落ちる。
血走ってにごってしまった翡翠色を、左頬を僅かに血赤で染めながら、それでもシクラメンの瞳は真っ直ぐに。
「…サリヴァン卿。貴方様はどちらを見ておられますか」
「私はいつでも未来をみている」
「サリヴァン卿。貴方様は何処を目指しておられますか」
「私が辿り着きたい未来だ」
「サリヴァン卿。それは何故でございますか」
「答える義理はない」
貴族同士だということを明確に告げつつ、審問のようなユーナの問いかけにアルベルトは澱みなく答える。握りしめられた宝剣は、これ以上琴線に触れようものならあや待たずユーナの細い肢体を切り裂くだろう。
ユーナは少ない質問で全ての答えを得たかのように、一度だけ誰にも悟らせないように瞼を伏せる。その下のシクラメンの双眸を、悲しみと悲嘆に濡らしながら。
そこまでが、我慢の限界だった。
「理事長」
言いながら、蓮は2人の間に割って入る。突きつけられた宝剣の切っ先を手の甲で払いながら、逆隣にそれとなく目配せを送る。
この場でこれ以上の荒事は、そちらにとっても不都合だろうと。3人の目撃者の存在を示唆して。
蓮のその誘導を理解して、アルベルトは小さく舌打ちをすると荒々しく納刀する。
「話は以上だ。出ていきたまえ」
「失礼致します」
一礼して、ユーナの手を引いて蓮はさっさと理事長室を後にする。もう数秒たりともあの部屋にいたくなくて、自然足取りも荒くなってしまう。
アルベルトもそうだが、ユーナもユーナだ。
「…怒ってらっしゃいます?」
「怒ってないです」
「怒ってらっしゃいますね」
「っ怒ってないよ、」
同じ質問をオウム返しにされて、蓮は思わず振り向いてしまう。視界に入ったユーナの笑顔で、ようやくそれは彼女に嵌められたのだと気づいて立ち止まる。
「…どうしてあんな火に油を注ぐようなことを言ったんですか。もっと言い方があったでしょう」
「ココノエ様、敬語は結構ですよ?」
「今その話するかな」
直さないと話が一向に進まなそうだったから一瞬で直して。そんな蓮の態度が面白いのかユーナはくすくすと笑う。
「やっぱりハヤト様のご友人ですね。良い方ですねココノエ様」
「いい人じゃないよ。あの場は本当は適当に合わせようと思ってたんだから」
その言葉は本当だ。ああいう糸の張りつめている人間の前では極力従順なフリをしておいた方が、後にも先にも楽だと思うから。だからあの場も適当にやり過ごして、適当に帰る予定だったのに。
「傷、診せて。直ぐに治せると思うけど」
「こちらはここままで。ちょうど病院に用事もあったところですので」
伸ばしかけた手を、ユーナは首を振って振りほどく。それよりも、と。ユーナは背後を振り向いて。
「ココノエ様には、ココノエ様のやるべきことがあるようですから」
言葉と共に視線を上げた先。そこには追いかけてきたのであろうムラトと丁那、そしてクレスが居心地悪そうに立っていた。
やがて。
「――ココノエ。話がある」
黒縁のフレームの奥の鉄色に、今まで無かった意志をくみ取って、蓮は無言で先を促した。
多忙につきしばらく更新頻度低めかもしれないです…




