ジンセイゲーム~終局の邇~
重くピクリともしないような扉の前にライフルを構え、緊張する好太郎たちがいた。好太郎だけではない。その場にいる全員が緊張していた。
「いいか。いつどこから襲ってくるかもわからない。細心の注意をはらうんだ。」
「わかりました。」
そして真一の合図で好太郎たちとその場にいる隊全員がかたくなに閉じられた扉を開け突撃した。辺りは静まり返っている。
「この辺りにはいないようだな。今朝は寒かったからな。その影響が出ているようだな。」
しかし、真一の目つきは変わらない。いつでも本気だった。
「よし、みなそれぞれの班に分かれて一定の距離を保ちながら進むんだ」
真一の声が無線を通じて響き渡る。
「よし、これからは列車で移動する」
そこには好太郎たちが使って逃げてきた列車もあった。その隣には別の貨物が止まっている。
「これに乗って本州へ渡ろう。中に食糧などが積んである。」
軽く二十両はあるであろう貨物列車に全員乗り込んだ。
「愛梨、大丈夫か?」
好太郎は愛梨をずっと心配していた。
「ありがと。ちょっと怖いけど好太郎がいるから大丈夫!」
その言葉に好太郎は安心した表情をみせた。そして、全員が列車に乗り込みゆっくりと動き出す。本州と北海道をつなぐ連絡橋にさしかかったときだった。全員の表情が固まった。目の前には紅に染まった炎が広がっていた。それはこの世のものではない。まさに地獄だった。
「な、なんだよあれ....」
そこは変電所があった場所だった。おそらく、なんらかの原因で爆発を起こし、ほかに燃え移ったと考えられるのだが、あきらかに炎の色がおかしかった。
「とりあえず消火しよう。ヘリを呼んで上空から消火だ!」
真一は急いで総合連絡部に連絡した。すると十分もたたないうちにヘリが到着し消火活動を行った。そのころ、列車はすでに本州へと渡っていた。全員の空気が重くピリッとしていた。
「なにもいないな...」
「いませんね...」
全員で探すが誰一人としてなにも見つからない。真一が無線でこのことを報告しようとしたそのときだった。
「あああああああああああああああああああ」
奴らが襲ってきた。
「まずい!全員打て!!」
真一の指揮で一斉に冷凍ライフルが発砲し始めた。しかし奴らは減るどころか増えていっている。
「こちら第一班応援を頼む!!!」
真一の声があがる。応援が来るまでの約二十分好太郎たちは冷凍ライフルのみで耐えていた。すると、鈍い音が聞こえてきた。その正体は新型戦闘機Fー35だった。Fー35は轟音を響かせながら攻撃した。つづいて二機、三機とFー35戦闘機が飛来した。それはまさに地獄中の戦争だった。しかし、数は減らない。
「これではらちが明かない。どうすればいいんだ...」
答えは出なかった。どんなに気温が低くてもやはり数の多さには敵わなかった。 そして最悪の事態に陥ってしまった。玉切れだった。
「仕方がない!引き上げるぞ!!」
列車は急ぐように逆方向に進み始める。奴らは追いかけてくる。
「この光景...沙紀が死んだのと同じだ...」
好太郎の中でそれがよみがえった。震えが止まらない。好太郎は動けなかった。気づくと列車は北海道を走っていた。真一はおろか、みな疲れきっていた。基地へ戻るや否や真一は考え込んだ。夜、好太郎と愛梨は同じ部屋にいた。好太郎はいつのまにか寝ていた。しかし、愛梨は眠れなかった。ふと起きて好太郎に近づく。不安げな様子だった。
「好太郎...私たちどうなるんだろうね...早く終わってしまいたいよ...」
その声は今にも消えかかりそうだった。
「......ん?」
愛梨はなにかにきづいた。それは好太郎のポケットに入っていたもの。
「カード???」
そのカードを見た瞬間、愛梨は言葉を放った。
「ジンセイゲーム...」
愛梨は急いで好太郎を起こした。
「好太郎!!これ見て!!」
「なんだよ...」
好太郎もそのカードを見た瞬間、悟った。
「これ、まさか!!」
好太郎は目を見開いた。
次の日、愛梨と好太郎は真一のもとへ駆け込んだ。
「.....というわけなんです。」
「そうか!そういうことか!!」
真一も悟ったようだった。
「早速、実行してみよう。」
そしてある実験が行われたのだった......
.........
一年後、好太郎と愛梨は学校へ向かった。クラスメイトや先生のもとへ。それはいつもと変わらない日常だった。
「おはよ!好太郎、愛梨!今日もラブラブだね~」
「あっ!もう亜加梨うるさいよ~」
「おらっ!もう授業始まる。」
「やっべ。好太郎、愛梨走るよ!」
すべてにおいて、平和だった。
「ねえ、好太郎。戻ってきたんだね。」
「そうだな。愛梨のおかげだよ。」
「そんなことないって」
「あの手があったとはね」
一年前......
カードに書かれてあったものは
「元に戻るには6マス進んでゴールせよ」
ジンセイゲームだった。
これに気付いた愛梨は真一たちと共に実験を繰り返した。何日も何週間も。そしてたどりついた。
ゴールへと。
ゴールした時すべてが変わった。すべてリセットされたのだ。ウイルスも奴らもみな。
その後、ジンセイゲームは2度と使われないためにも、地中深く埋められた。
愛梨のポケットのなかには1枚の説明書がはいっていた。そこにはこう書かれていた。
おわりに
ジンセイゲームは人の人生を左右するもの。時に残酷で
時に助けられ、いろいろなことを学ぶ。これが人生。
これがパラレルワールド。
そう記されていた。そして最後に使われたカードには別のことが書かれていた。それは、
すべて戻る。その後普段と変わりなく過ごすこと。
次の日に実行する
end
そして、今好太郎たちはその命令を実行している。
好太郎はあの出来事をこう語った。
「あの出来事は人生において大切なことをパラレルワールドで知ることができた。そのおかげで日々平和な生活ができている」と。
そして今日もいつもと変わらない日常が待っている。
end
呼んでいただきありがとうございました!
いかがだったでしょうか。
次回作も楽しみにしていただけるとありがたいです!
for KTX*みうぃ 羽火




