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彼女の胸に包丁が刺さった瞬間、血がじわじわと彼女の服を赤く染め上げていった。
「何をしているんですか!」
僕は声を荒げて言った。
「こうするしかないの…あなたが亡くならないでいるためには、幸せになるためには…」
僕の幸せ?なれるわけ無いじゃないか。だって…
「どうしてこんな形で好きな人を失って幸せになれると思うんですか…」
すると彼女は一瞬驚いた顔になり、すぐ辛そうな顔に戻る。
「そっか…私を思ってくれていたんだ…私もあなたのことを思っていたわ…好きな人が亡くなる辛さは私の方がわかっているつもりよ。」
みるみるうちに声から元気が失われていく。
「しゃべらないでください…血が…」
「もう、いいの。」
すると彼女はその言葉と同時に胸に刺さっている包丁を抜いた。血が溢れてくる。
「私が助かってしまったら、あなたが亡くなってしまう。もう一回過去に戻ることになってしまう。これ以上、私も、あなたにも辛い思いをさせたくないの。」
「美咲さん…」
「それに、私があなたの両親を殺してしまっているようなもの。私が罰を受けるのは当然なの…」
それから少し間が空いて彼女はいつもの悲しげな笑顔で
「将太君。私の分も幸せになってね。」
これが彼女の最後の言葉だった。




