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第六十八話、わたくし、『異世界裁判長』になりましたの。【NAISEIの功罪】(その5)

ちょい悪令嬢「──さて、今回こそは前々からのお約束通りに、『なぜに「転生者」の横行に対して常に目を光らせているはずのホワンロン王国当局が、反乱貴族たちが「NAISEI」によって力を蓄えながら陰謀を巡らせていたのに気づかなかったのか?』と、『自分の周りの人たちが次々と、「別の誰か」に成り変わっていく恐怖』についての審議を、わたくしこと『ちょい悪令嬢』を『裁判長』として、いつもの量子魔導クォンタムマジックチャットルームより、いつものメンバーを『陪審員』としてお迎えしてお送りいたします! ──皆様、よろしくお願いいたします!」




陪審員一同「「「よろしくー!」」」




ちょい悪令嬢「……とは申しても、実はこれって、最初から答えが出ているようなものなんですよねえ」




かませ犬「──なっ、いきなり決着してしまった、だと⁉」


メイ道「ど、どういうことです、お嬢様?」


真王子様「……あー、なるほど」


ジミー「つまりこれについても、少々独特だけど、()()()()で考えればいいわけね?」


妹プリンセス「え、え、どういうことですの?」


ちょい悪令嬢「すでに気づかれている方もおられるようですが、ここは説明が必要なようですね」


かませ犬「当たり前だろ!」


メイ道「……前回と同じってことは、『異世界転生者』と言ったところで、実際にはみんな、生粋の異世界人に過ぎないってことですか?」


真王子様「そうそう」


ジミー「つまり、いくら我が王国の誇る専門部署であろうとも、『王国民の誰と誰が転生者なのか?』についての正確な情報なんて、とても完全には把握できっこないってことよ。何せ王国民の全員が、あくまでも生粋の異世界人であると同時に、誰もが密かに集合的無意識を介して『ゲンダイニッポン人の記憶と知識』を抱え込んでいる可能性だって、けして否定できないんだから」


妹プリンセス「……うわあ、まるでエイリアンか何かに、いつの間にか侵略されているような感じですわね」


ちょい悪令嬢「そうなのです! まさに【反乱貴族編】における隠しテーマこそが、今回の審議対象の一つでもある、この、『自分の周りの人たちが次々と、「別の誰か」に成り変わっていく恐怖』なんですよ! 特に本作における独自ユニークとして、誰もが突然『転生者』となる可能性があり得て、それを予防することなぞできないし、しかも言動が完全に『ゲンダイニッポン人』そのものとなっていても、あくまでも生粋の異世界人であり続けるというところこそが、非常にやっかい極まりないのです!」


かませ犬「……そうか、思ったよりも、『転生者』であるかどうかは、判別が困難なんだな」


メイ道「地方貴族の息子さんや下級役人の娘さんなんかが、いかにも『NAISEI』らしきものをやりだしたとしても、まさしくこの裁判コーナーで言及されたように、ただ単に量子魔導クォンタムマジックスマホによってインターネットで参照した、『ゲンダイニッポン』の最新科学技術を活用しているだけかも知れませんからね」


真王子様「かといって、疑わしき者までしょっぴいていたら、単なる『恐怖政治』だからな」


ジミー「更には、『他の作品の主人公の記憶や知識』がインストールされている場合なんて、本来なら異世界における異変を必ず察知できるはずの『内なる神(インナー・ライター)』であろうが、感知できなくなってしまうしね」


妹プリンセス「……ああ、なるほど、これではとても、今回の『反乱貴族』たちの策謀を、事前に察知するのは難しかったでしょうね。何せ彼ら彼女らはあくまでも、それぞれ独立して『NAISEI』をやっていただけですからね」


ちょい悪令嬢「そうなのです。よって当局による『転生者』に対する取り締まりも、実際に王国や異世界そのものに仇為す等の、『違法行為』を起こして初めて執り行われるといったふうに、後手に回らざるを得ないのですよ」


かませ犬「それで今回は、実際に王都や王城を占拠されるまで、手を出せなかったってわけか。仕方ないこととはいえ、何とも歯がゆいよな」


メイ道「しかも、十数年もかけて下克上の機会を狙っていた、地方貴族の息子さんや下級役人の娘さんたちに呼応するかのように、王国中の不満分子の方々が、いきなり『転生者化』して、更に事態を混沌とさせましたからねえ」


真王子様「ボクたち『境界線の守護者』のような、対『転生者』のプロフェッショナルが、為す術もなく敵の手で拘束されたのも、普段から自分の身の周りにいる信頼厚い人たちが、いきなり『転生者化』したからだったしな」


ジミー「ほんと、誰がいつ『転生者』になってしまうかがわからない状況に立たされるなんて、恐怖以外の何物でもないわね」


妹プリンセス「もちろんそこら辺のところは、実際に経験なされた、ちょい悪令嬢様ご自身が、身にしみておられるでしょうけどね」


ちょい悪令嬢「ええ、あんな哀しくおぞましい出来事は、二度と御免ですわ──と言いたいところですが、『異世界においては転生者が現れるのは常識』となってしまっている現状においては、これからもけして油断するわけにはいきませんわねえ」


ちょい悪令嬢とかませ犬以外の全員「「「異議なーし!!!」」」




かませ犬「……まあ、そうは言っても、『異世界転生』そのものは別に、悪いことばかりでは無いしなあ」




かませ犬以外の全員「「「──は?」」」




メイ道「な、何をおっしゃっているんですか、かませ犬さん⁉」


真王子様「これまでこの『異世界裁判』コーナーで、『異世界転生者』の弊害について、散々述べてきたというのに、台無しじゃないか⁉」


ジミー「そうよ、さっきも言っていたように、『異世界転生』って、別に本当に『ゲンダイニッポン人』が転生してくるんじゃなく、あくまでも生粋の異世界人が、それこそ『エイリアン』に乗っ取られたり、ある意味『狐憑き』みたいになったり、いわゆる『魔が差した』ような状態になったりして、それまでには考えられなかったような豹変を果たし、とんでもない悪事に手を染めることなんだから!」


妹プリンセス「ホワンロン空軍の第44中隊の方々のように、けして『転生者』が悪人ばかりとは限りませんが、『異世界転生』という()()については、世界というもののことわりを歪めかねない、文字通り『百害あって一利無し』であることは、これまでの本編における経緯を振り返るまでもなく、明白なる事実ではありませんか⁉」




ちょい悪令嬢「──いやいや、皆さん、落ち着いて! お気持ちはわかりますが、かませ犬さんにも何かお考えがございますのでしょう、まずはそれを伺いましょうよ」




かませ犬「……あ、いや、まさかこんなに反響があるとは思わなかったんだけど、言うまでもなくみんなが言っていることにも理があり、『転生化』という常ならざる現象こそが、元々秘められていた当人の『欲望』に火をつけて、人の道を踏み外させたりすることも事実だろう。──でもさ、()()()()だって、考えられないか?」




ちょい悪令嬢「逆の場合、ですか?」


かませ犬「ほら、前に『集合的無意識』について総括的に述べた際に、『集合的無意識とのアクセスは、別に絶対不可能な超常現象ではない。発明家や芸術家等の、何かを成し遂げようとする強い意志を持った者が、飽くなき努力を重ねた結果もたらされる、幸運の女神様からの恩寵という名の「閃き」に過ぎないのだ』って、話になったじゃないか?」


ちょい悪令嬢「え、ええ」


かませ犬「それってまさに、これまでのWeb小説においては、『転生者における前世の記憶の覚醒』であり、この作品においては、『生粋の異世界人に対する天啓』のようなものだとも言えるよな?」


ちょい悪令嬢「──っ。も、もしかして」




かませ犬「──そうだ。この世界サクヒンの流儀にさえ則れば、また違った結論が導き出され得るんだよ。例えば、あくまでも生粋の異世界人である下級役人の娘が、幼い頃から貴族の道楽に過ぎなかった『読書の楽しみ』を、一般庶民にも広げようと決意していたとしよう。普通そんなことは『身の程知らずの夢物語』として一蹴されるところだが、彼女は絶対に実現するんだと、製本関係の研究をし続け、紙の安価な大量生産や印刷技術の発明に取り組んでいくんだ。彼女の不断の努力の姿をまざまざと見せられて、次第に身の回りの人々を中心として協力者も現れるものの、さすがに世界初の製本技術の発明ということもあり、『あと一歩』のところで停滞してしまったりしてね。──けれどもその時、『運命の女神』──それはもしかしたら俺たちの宿敵である『なろうの女神』かも知れないけれど──が、微笑むんだ。そしてその子は晴れて集合的無意識とのアクセスを果たし、『ゲンダイニッポン』の製本技術に関する知識を手に入れて、ついに世界初の活版印刷を現実のものとしてしまうってわけなのさ」




かませ犬以外の全員「「「──‼」」」




ちょい悪令嬢「まさか、それって──」


かませ犬「そう、『あの作品』は、別に異世界転生物語()()()()()()んだよ。あの世界では元々、まさしく『活版印刷技術』が産声を上げようとしていたのであって、歴史的必然として、『あの子』に白羽の矢が立てられて、『神の恩寵』として集合的無意識を介して、『ゲンダイニッポンの最新の印刷技術』に関する知識が与えられた──と見なすことだってできるんだ」




ちょい悪令嬢「……確かに、『異世界転生=集合的無意識とのアクセス』を基本とする本作においては、けして否定できませんわね」


メイ道「いやもう、これぞ『異世界転生=集合的無意識とのアクセス』の証明そのものといった、代表例的お話ではありませんか⁉」


真王子様「ああ、もはやこれから以降においては、もしも自作における異世界転生の正当性をはかるつもりがあるのなら、すべてのWeb作家の皆様におかれても、この『原則』こそを踏襲すべきではないのかな」


ジミー「確かに『NAISEI』なんて余計なものは、百害あって一利無しだけど、『製本技術』自体に関しては、異世界の人々に利益を与え得ることは、言を待つまでもないしね」


妹プリンセス「……何か前回に引き続いて、予想外にかませ犬さんの正当なる『ツッコミ』が冴え渡っているのですが、本当にこのコーナー大丈夫なのでしょうか? ──『特に笑いをとる』といった意味合いにおいて」


かませ犬「──いや、別に笑いはとる必要ないだろう⁉」




ちょい悪令嬢「……確かに、『本作り』などといった前向きなテーマに絞るなら、本人の尽きせぬ努力の果てにもたらされる、『神の恩寵』とも『歴史的必然』とも言い得る、『異世界転生者としての覚醒』現象は、間違いなく異世界そのものにとっても、メリットをもたらし得ると言えましょう」




メイ道「……結局は、本人次第ということなんですよ。邪な欲望を持っている者に対しては『堕落』を、前向きな希望を持っている者に対しては『栄光』を、といった具合に、『転生化』自体はどちらにしろ、『ちょっとした後押し』をしてくれるだけで、そのもの自体では正でも邪でもなく、ただニュートラルに作用するだけなんですよね」


真王子様「そもそもが、あらゆる世界のあらゆる存在の無限の『記憶と知識』の集合体である、集合的無意識とのアクセスなんだ、弱い心しか持っていない者はただ呑み込まれてしまうだけで、確固とした強い意志を持っている者だけが、真に正しく使いこなすことができるということなのだろう」


ジミー「……そりゃあ、全人類の集合知に触れたんじゃ、それによる『全能感』によって、自分のことを過信してしまい、王権簒奪にだって走ろうというものでしょう」


妹プリンセス「だからこそ、最初からそんなインチキ的裏技に頼ろうとはせず、自分自身の意志によって自分自身で努力を続けた者にだけに、『運命の女神様』は微笑むというわけなのですわね」




ちょい悪令嬢「──といったように、結局最終的な結論としては、『NAISEI』を始めとする『異世界転生化』は、本人の意志と行動次第という、ある意味至極当然なところに落ち着いたわけですが、むしろ本編等で明言されていたように、『善と悪との二元論』に陥ることなく、このような中庸な結論となったことを、むしろ誇りにしたいかと思います。それでは長らく続いて参りました【反乱貴族編】に関しての『異世界裁判』につきましては、これにて幕にいたしたいかと存じます。読者の皆様、御一読誠にありがとうございました!」




ちょい悪令嬢以外の全員「「「ありがとうございましたー!!!」」」












?「……くすんくすん、あたし、メリーさん。もういいの、こんな作品なんかに出なくても、今ツイッターでは『メ○ーさんがさらに怖い話を学んでくる」とかいうのが活況を呈しているようだから、そっちのほうで活躍してくるの」

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