第六十五話、わたくし、『異世界裁判長』になりましたの。【NAISEIの功罪】(その2)
ちょい悪令嬢「──さて、今回も前回に引き続き、本編の【反乱貴族編】に対する『異世界裁判』の審議を、私こと『ちょい悪令嬢』を『裁判長』として、いつもの量子魔導チャットルームより、いつものメンバーを『陪審員』としてお迎えしてお送りいたします! ──皆様、よろしくお願いいたします!」
陪審員一同「「「よろしくー!」」」
かませ犬「……なあ、審議が始まる前に、ちょっといいか?」
ちょい悪令嬢「おっ、早速『検察官』から、物言いがつきましたよ!」
かませ犬「俺って、検察官だったんだ⁉」
ちょい悪令嬢「だって、『ツッコミ役』としては最適だし、何よりあなた、さっきの『陪審員一同』の中に含まれていなかったではありませんか?」
かませ犬「えー……」
ちょい悪令嬢「まあ、まとめ役である私以外の役割を、むやみに固定してもアレですので、かませ犬さんは『検察官寄りの陪審員』ということで、一つよろしくお願いいたします♡」
かませ犬「そういうことなら、まあ、いいけどよ……」
ちょい悪令嬢「それで、何なんですか、今度の『ツッコミ』は?」
かませ犬「ああ、忘れていた……って、別にクレームじゃねえよ! 普通に『建設的意見』だよ⁉」
ちょい悪令嬢「おや、そうなのですか? では、伺おうではありませんか、その『建設的意見』とやらを」
かませ犬「……ぐっ、相変わらず、上から目線なやつ」
ちょい悪令嬢「うふふ、こんなロリ美少女から蔑みの視線で見下されて、さぞや堪らないでしょう、『マゾ犬王子様』としては♡」
かませ犬「『マゾ』で『犬』で『王子様』って、どんだけ倒錯しているんだよ⁉ 俺にはそんな、イカレた『属性』はねえ! ──つうか、おまえが『ロリ美少女』である属性こそ、みんなから忘れられているんじゃないのか?」
ちょい悪令嬢「うう、おっしゃる通りです。これぞ、文字媒体である小説というものの、根源的欠陥でございましょうか」
かませ犬「……本来なら、おまえ自身の台詞や他のキャラとの会話とかその他状況描写とかで、ちゃんとおまえがロリであることを、アピールしていかなければならないんだけどなあ」
ちょい悪令嬢「すべてはこの作品の作者の、腕が未熟なせい。無念でございます」
真王子様「──おい、君たち、話が完全に横道に入り込んで迷走しているぞ、ちゃんと本筋に戻したまえ!」
かませ犬「あ、いけね。むしろ俺こそが、それを言いたかったんだっけ!」
ちょい悪令嬢「……え、どういうことでしょう?」
かませ犬「だからさあ、このコーナーって完全に会話劇オンリーだからなのか、すぐに横道にそれてしまうじゃないか?」
ちょい悪令嬢「ええ、まあ……」
かませ犬「これが『座談会』や『反省会』ならまだしも、今回のような『裁判』ともなれば、あまり望ましいとは言えないだろ?」
ちょい悪令嬢「た、確かに」
かませ犬「そこでさあ、最初にはっきりと、例えば『NAISEIの異世界における功罪』とかいった感じに、討議するテーマを明確にしておいて、それから話し合いに入っていくといった流れにしたほうが、よりベターだと思うんだよ」
ちょい悪令嬢「おお!」
メイ道「すごい! かませ犬さんが至極真っ当に、建設的意見を述べられるとは⁉」
真王子様「……これはもはや、天変地異の前触れかも知れんぞ」
ジミー「一体どうした、かませ犬?」
妹プリンセス「何か悪いものでも、拾い食いしたのではありませんの?」
かませ犬「──せっかくおまえらも認める建設的意見を出したというのに、結局袋だたきに遭うのかよ⁉ だったらもう金輪際、発言自体をしないからな!」
ちょい悪令嬢「い、いや、申し訳ございません、悪ふざけが過ぎました。これに懲りずにこれからも、どんどんと忌憚のないご意見をお述べくださいませ。……ぷくく♡」
かませ犬「…………(ムスッ)」
メイ道「うへえ、完全にへそを曲げておられるような……」
真王子様「機嫌を直せよ、かませ犬、男らしくないぞ?」
ジミー「そうそう、あなたの貴重なご意見は、もちろん採用させていただくからさあ」
妹プリンセス「ええ、『討議するテーマを明確にしておいて話し合いに入るべき』とは、まさしく言い得て妙ですわ♡」
ちょい悪令嬢「では早速、今回話し合うべきテーマを、まず最初に決めておくことにいたしましょう」
陪審員一同「「「異議なーし!!!」」」
メイ道「何はさておき是非とも話し合うべきなのは、さっきも挙がっていた、『NAISEIの異世界における功罪』ですよね」
真王子様「まあ、それは外せないよな」
ジミー「他だと、やはり前回触れられていた、『自分の周りの人たちが次々と、「別の誰か」に成り変わっていく恐怖』ですかね」
妹プリンセス「ああ、それも必須ですわね」
ちょい悪令嬢「──その二つは当然として、他に何かございませんか? 最初に挙げられるだけ、挙げておこうかと思うんですが」
メイ道「……ううん、そうおっしゃられても、いろいろあり過ぎて頭の中がごっちゃになっていて、うまく取捨選択できないんですよねえ」
真王子様「何せ、それぞれの論旨が、お互いに複雑に結びついているからな」
ジミー「ここはやはり、最初にその大きな二つのテーマの論議を進めておいて、それに付随する形で思いつくごとに、小さなテーマも扱っていくといった方針でいいんじゃない?」
妹プリンセス「それで最後の最後に、他とは繋がりのない独立したテーマが残っていたら、それについても論議するという流れですね?」
ちょい悪令嬢「……そうですねえ、やはりそっちのほうがいいかもしれませんね。──それでは、先程挙げた大きな二つのテーマのうち、どちらを先に討議いたしましょうか?」
メイ道「……そう、ですねえ」
真王子様「そこはやはり、『NAISEI』からだろ」
ジミー「そちらのほうが、テーマもしっかりしていますしね」
妹プリンセス「もう一つのほうは、ちょっと抽象的だから、捉え方によっては意見が割れて、論議が長引く怖れがありますしね」
ちょい悪令嬢「そうですか、皆さんがそうおっしゃるのなら、そのようにいたしますか………って、どうなさったのです、かませ犬さん。さっきから黙りこくってばかりで」
かませ犬「──え? あ、いや、気にするな。これからの議論の流れをこのまま静観させてもらって、何か『突っ込む』ところがあったら、そのつど『突っ込む』から」
メイ道「ああ、ちゃんと『役割分担』を、わきまえておられるわけですね……」
真王子様「ついに、自他共に認める『ツッコミ役』となったわけか」
ジミー「場合によっては、出番がなくなるかも知れないのに、殊勝なことで」
妹プリンセス「皆さん! 今回は落ち着いてじっくりと討議を行っていき、なるべく『ツッコミどころ』を出さないようにいたしましょう!」
かませ犬「──いや、何でおまえらときたら嬉々として、俺を精神的にフルボッコしようとするわけなの⁉」
ちょい悪令嬢「まあまあ皆さん、『かませ犬さんいじり』はその辺にして、ちゃっちゃと討議に移りましょう♡」
かませ犬「……『いじり』って、おまえなあ」
メイ道「(無視)私は『NAISEI』における最大の問題は何よりも、『転生者』が異世界の実情を完全に無視して、あくまでも『ゲンダイニッポン人』としての視野狭窄で無責任な、『感情論』を持ち込んでくることだと思います」
真王子様「ほう、感情論とな?」
ジミー「ああ、わかるわかる、特に『奴隷制』なんかそうでしょう?」
妹プリンセス「まさか、『ゲンダイニッポン人』の甘ったれたヒューマニズムだけで、国家規模の政治や経済が回っていくとでも、本気で思っているのでしょうかねえ……」
ちょい悪令嬢「非難囂々ですが、まあ、当然の結果ですね。『ゲンダイニッポン人』の豊かで平和ボケした感覚からしたら、『奴隷制』なんて絶対に赦し難いでしょうけど、あちらの世界──すなわち、地球の歴史上においても、かつてのアメリカ南部の大農園経営のように、『奴隷制』が無いと立ち行かなかったケースもあって、そしてそれは間違いなく、当時のアメリカの──ひいては、世界全体の経済を発展させたのであり、たとえ現在の『反差別主義者』たちが、物理法則と常識とを覆してタイムマシンの発明に成功して、今更当時の奴隷制を廃止させようなんて暴挙を行おうとしたところで、けして赦されはしないでしょう」
メイ道「まさにそれを、『異世界転生』という名のタイムトラベルで行っているのが、数多のWeb小説の主人公である、『ゲンダイニッポンからの転生者』たちですよね」
真王子様「異世界に『奴隷制』が存在しているということは、それが異世界にとって必要不可欠だからと、なぜわからないんだ?」
ジミー「『NAISEI』って、もしかしたら、『内政干渉』の略語なわけ?」
妹プリンセス「しかも大抵の作品って、パターンが決まっていて、街で見かけた奴隷の美少女が奴隷商から無体にいじめられているのが我慢できずに、いきなりお金か下手したらチート能力にものを言わせて──すなわち『力尽く』で強奪しておいて、何とちゃっかりと自分のハーレム要員に加えるってやつばかりですわよね。一応女の子の立場から言わせてもらえば、奴隷もハーレム要員も、それほどの違いは無いんですけど?」
ちょい悪令嬢「更にはダメ押しとして、『……この子だけを助けるのは、私の自己満足に過ぎない。だがいつかきっと、奴隷制そのものを廃止してみせるぞ!』で締めくくるんですよね♡ ──はい、犬の卒倒、犬の卒倒」
メイ道「地球における奴隷制に関しては、アメリカの『南北戦争』の際において初めてメスが入れられるのですが、別にこれは人道主義に基づくものではなく、奴隷制によって成り立っている南部の経済力に打撃を与えるための、北部側の陰謀に過ぎませんでしたよね」
真王子様「果たして、こういった政治的及び経済的視点等の大局に立って、奴隷制を語っているWeb作家が、一体何人いることか」
ジミー「いや、いませんよ。そもそも奴隷制を強制的に廃絶してしまったら、異世界の社会的システムが瓦解してしまう可能性があり得るという、至極当然な考え方すら、自作の作品の世界観設定に組み込んでいる作家さん自体が、ほとんど見受けられませんからね」
妹プリンセス「かといって、いきなり異世界全体を、奴隷制が必要無いくらいまで、経済的かつ政治的に飛躍させられても困るんですけどね」
かませ犬「……いや、ちょっと待て。そういった異世界全体の現状を無視した、『飛躍的な』経済的政治的施策を強引に、各地方貴族領単位で行っているのが、まさしく『NAISEI』そのものじゃないのか?」
陪審員一同「「「──‼」」」
ちょい悪令嬢「……そういえば、そうでしたわねえ」
かませ犬「──とすると、どうなるんだ? 極狭い範囲なら、『ゲンダイニッポン』の最新の科学技術等を局地的に集中して投下することによって、奴隷制の必要のない社会経済システムの『モデルケース』を実現することだって、十分可能ってことになるわけか?」
メイ道「いえ、話はそんなに、単純なものではないでしょう」
真王子様「『ゲンダイニッポン』の『居酒屋』を一軒持ち込んでくるだけでも、異世界の社会経済システムが急変するとも言われているんだ。ましてやれっきとした一個の地方貴族領が、政治的経済的に大躍進しておいて、周囲の貴族領が影響を受けないことなぞあり得ないだろう」
ジミー「例えば、国中の逃亡奴隷や貧民たちが、大勢領内に流れ込んでくるとかね」
妹プリンセス「後考えられますのは、奴隷の反乱等の悪影響を危惧した周辺貴族たちから、怒りややっかみを買って、政治的に陥れられたり、下手したら実力行使に出られる怖れだってありますよね」
ちょい悪令嬢「やはり、地方の一貴族領だけに限定しようが、『NAISEI』の実現には無理がありそうですね。だからといって国全体や異世界全体の、一足飛びの政治経済的改革なんて、とても無理な話でしょう。──とにかく、中でも異世界モノではお馴染みの、『奴隷制の廃止』政策は、我が『異世界裁判』においては、完全に『有罪』と言うほかはありませんね。──と言うことで、無事に判決も下したことですし、今回はこれまでにさせていただきます。次回は別の議題についてか、あるいは『NAISEI』における他の問題点について討議する予定ですので、どうぞお楽しみに♡」
陪審員一同「「「それでは、読者の皆様、また次回!!!」」」
かませ犬「……いや、もしかして今回の『判決』って、ものすんごい『敵』を作ってしまったんじゃないのか?」




