第二十九話、わたくし、『ちょい悪令嬢』になりましたの。【悪役令嬢バトルロイヤル編反省会】（その４）
──ベンジャミン公国、海軍特殊部隊新兵訓練所、『ビリー・ザ・ブート・キッド』。
「──どうした、もう限界か、お姫様！ 貴様はふぬけた宮廷暮らしで、そのふやけただらしない肉体だけなく、栄えある『シールズ』魂まで腐らせてしまったのか⁉」
「……い、いいえ、教官殿、自分はまだ、やれます……ッ」
「声が、小さい！ 貴様の惰弱なツイートよりも、蚊とんぼの羽音のほうが、何十倍も大きいぞ！」
「サー！ イエッサー！ 教官殿！ 自分は、まだまだ、やれます！」
「本当か！ 二等兵、ベンジャミン！」
「サー！ イエッサー！ 自分はけして、ふやけただらしない肉体など、しておりません！ どうぞ教官殿ご自身の目で、お確かめください！」
「あ、こら！ 訓練中に、いきなり服を脱ぎ出すんじゃない！」
「……そ、そうですよね、やはり後で、二人っきりのベッドルームで、じっくりと♡」
「──うおおいっ、また誤解を招くようなこと、言いやがって！ いつ貴様と俺が、そんな関係になった⁉」
「どうせこのラブコメ路線だと、時間の問題…………いひゃいっ！ ほ、ほっぺたを、ひっぱらないふぇー！」
「何だ、このだるだるにたるんだ、頬肉は⁉ 貴様、一からたたき直してやる！ 今回はホワンロン王国の影ながらの助けもあって、事なきを得たが、下手すると亡国の危機だったんだぞ⁉」
「す、すみまへ〜んっっっ」
「悪役令嬢をたかが一人退けただけで、慢心するんじゃない！ あいつはあくまでも、『悪役令嬢四天王』の最弱の存在に過ぎん！ これからもおまえの行く手には、第二第三の悪役令嬢が、立ち塞がるかも知れないんだぞ⁉」
「──ちょっ、私たち悪役令嬢には、四天王なんていませんけど⁉」
「そもそも今回の訓練も、貴様にもう一度、新兵訓練の当時の気概を思い出させて、たとえ相手が『戦神の悪役令嬢』であろうが、恐れるに足らぬという自負を再確認させることこそを、主な目的にしているのだ！」
「は、はいっ」
「いいか！ 尚武の国のメツボシ帝国だろうが、神竜の国のホワンロン王国だろうが、何する者ぞ！ 俺は信じているぞ、おまえこそが、世界一の悪役令嬢であることを！」
「──！」
「だから今回の戦において、自分が大公の娘として、公国軍総司令官として、不甲斐なかったなどといった、後ろ向きな思いは捨てるんだ！ おまえは良くやった！ シールズ魂に対して恥じることなぞ、何一つない！ 今回は、相手が悪かっただけだ！」
「……」
「そもそも緒戦から『カミカゼアタック』をしてくるなぞ、むしろ指導者失格の暴挙なのだ！ 自軍の兵士の命を何だと思っているのだ？ 兵士に対して常に生命の危険が伴う命令を強いるからこそむしろ、指導者は責任をもって兵士全員の生命を極力尊重した戦略を練り、しかるのちに命令を下さなければならぬというのに！ それに対しておまえは、敵のカミカゼアタックによって精神的混乱を来した将兵たちを叱咤激励し、我が軍の足並みの乱れを最小限に抑え、指導者としての責務をよく果たした！ 立派だったぞ！」
「……」
「だからいつまでも、公国内に敵の侵入を許し、少なからぬ被害を出したことをくよくよ憂うよりも、前向きに復興の指揮こそに、全力を尽くして──」
「ビル」
「むっ、何だ？ 訓練中は、『教官』と呼べと、あれほど──」
「ありがとうね」
「──なっ」
「参謀総長として戦後処理で多忙な時に、いきなり久し振りにこんな『新兵訓練』をしてくれたのも、帝国との戦争以来私が指導者として自信を失って悩んでいるのを見て、元気づけてくれているのですよね」
「えっ、いや、ちがっ、こ、これは、あくまでも、最近たるみきっている、おまえを──」
「でも、大丈夫だから。──だって」
「……だって？」
「私には頼りになる専属執事がいつも側にいてくれて、こうして私が弱っている時なんかには、必ず励ましてくれるから！」
「……」
「本当にいつもありがとうね、これからも頼りにしているからね♡」
「……」
「あれ？ ビル、どうしたの？ 急に、黙り込んで」
「…………周」
「え、何ですって？」
「──後十周、追加と言ったんだ！ それに俺のことは、『教官』と呼べと言っているだろうが？ この馬鹿者！」
「あっ、はいっ、申し訳ございません、教官殿！」
「いいか、今日はぶっ倒れるまで、容赦しないからな！ おまえもシールズの一員としての意地と誇りがあるのなら、最後まで俺についてこい！」
「──っ。は、はい！ 私どこまでも、教官殿について行きます！」
「よしっ、行くぞ！」
「はいっ！」
そしてすでに日も暮れた訓練場のビーチをを駆け出す、公国最強の絆で結ばれた主従コンビ。
──そんな彼らを夜空に輝く満月だけが、ただ静かに見守っていた。
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ちょい悪令嬢「──はいっ、砂を吐くようなラブコメパートは以上までとして、ここからはいつも通りに、量子魔導チャットルームにおいて、ギスギスした人間関係で定評のある、【悪役令嬢バトルロイヤル反省会】を行って参りましょう！」
かませ犬「言い方！ 何だよ、ギスギスした人間関って⁉」
ちょい悪令嬢「だってそうでしょう？ こうして元婚約者同士である、あなたと私が同席している段階で、もはやラブコメうんぬん以前に、どう考えても良好な雰囲気になるはずがないではありませんか？」
かませ犬「──うっ！ い、いや、俺たちが婚約を解消したのは、二人の年齢差とか、ストーリー上の必要性とか、いろいろとやむを得ぬ事情があったのであり……」
メイ道「……うわあ」
真王子様「男のくせに、責任転嫁も甚だしい」
ジミー「もはや、『王子様』の面汚しね」
妹プリンセス「さいてー」
かませ犬「──またこのパターンかよ⁉ もういい加減、俺のいじりばかりで字数を稼ぐの、やめてくれる？」
ちょい悪令嬢「イエイッ！ 『つかみはＯＫ！』ということで、場も温まったことですし、前回に引き続いて読者の皆さん大注目の、『死に戻り』の実際上の仕組みについての解説コーナーを、早速開始いたしましょう！ ──コメンテーターの『夢魔ですの〜と』さん、よろしくお願いしたします！」
夢魔ですの〜と「……」
ちょい悪令嬢「夢魔ですの〜とさん？」
夢魔ですの〜と「……死ねば、いいのに」
夢魔ですの〜と以外の全員「「「ひっ⁉」」」
夢魔ですの〜と「何よ、ベンジャミン公国のやつら、見せつけてくれちゃって。こっちはずっと王城の地下牢に繋がれていたかと思えば、いきなり過酷な戦場に出動させられて、圧倒的不利な状況だったのをたった一人で覆してやったというのに、平和になった途端、自分たちだけイチャイチャしたりして。確かに私はかつて悪役令嬢としていっぱいヤンチャして、世間様に多大なる迷惑をかけてしまったわよ。でも同じ悪役令嬢でありながら、こんなにハッピーに暮らしているお姫様もいるというのに、この差は何？ 私だってまるで王子様のような素敵な執事が側にいたら、人としての道を踏みはずことなんて──」
ちょい悪令嬢「ひええっ、夢魔ですの〜とさんの暗黒面が、解放されてしまいましたわ！」
メイ道「作者がそれこそ字数稼ぎのために、いらんイントロシーンなんか付けるから」
夢魔ですの〜と「……いっそのこと、こんな腐った悪夢そのままな現実世界なんて、『夢喰らい』であるこの私が、すべて食べ尽くして差し上げようかしら」
かませ犬「お、おいっ、なんか俺たちの影が、不気味にうごめき始めたぞ⁉」
ちょい悪令嬢「──いけない！ 夢魔ですの〜とさんの力が、暴走しようとしている！」
メイ道「夢魔ですの〜とさん、落ち着いて！」
夢魔ですの〜と「──放して！ 私一人だけが幸せになれないくらいなら、みんな不幸になればいいんだあああああっ──！」
※ただ今量子魔導チャットルームにおいて深刻なアクシデントが発生いたしましたので、これ以上実況中継が続けられなくなりました。状況回復まで、しばらくの間お待ちください。
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ちょい悪令嬢「──さて、夢魔ですの〜とさんもどうにか正気に戻られたようですし、改めて『解説コーナー』を再開することにいたしましょう。──夢魔ですの〜とさん、今度は大丈夫でしょうか？」
夢魔ですの〜と「……た、大変失礼いたしました。もう大丈夫でございます」
ちょい悪令嬢「もー、本当にしっかりしてくださいよ、このコーナーは、夢魔ですの〜とさんあってこそなんですからね？」
夢魔ですの〜と「は、はい、以後心して身を慎みます！」
ちょい悪令嬢「では早速、解説コーナーのほう、よろしくお願いします！」
夢魔ですの〜と「……ええと、今回は前回の『異世界転生』全体の仕組みに引き続いて、あくまでも『本作独自の』という注釈がつくものの、大注目の『死に戻り』の現代物理学と心理学に則った解説を行っていくつもりだけど、これってすでに述べた通り基本的には、『異世界転生』の応用のようなものでしかないの」
かませ犬「……ああ、どっちにしろ基本的には、いったん死んだやつを再び甦らせることになるんだからな」
夢魔ですの〜と「とはいえ、双方の間には、決定的な違いもあるの。その最たるものが、双方の仕組みにおける最重要過程をなす、『集合的無意識とのアクセス』が、『異世界転生』においては原則的に『偶発的』に行われるのに対して、『死に戻り』においては『作為的』に行われることなのよ」
真王子様「ほう？ それはすごいな」
ジミー「集合的無意識なんていう、本当に存在するかどうか定かではない、我々人類にとっての文字通り『超自我的領域』に、恣意的にアクセスできる存在がいるとはね」
妹プリンセス「もちろんそんな輩自身、ただ者じゃないんでしょう？」
夢魔ですの〜と「……『境界線の守護者』である、ホワンロンの三姫姉妹が、何をわざとらしいことを──と言いたいところですが、解説コーナーを進める上からは、ナイス質問です。そう、そうなんです、実は我々普通の人間とは違って、自分や他人を集合的無意識に強制的にアクセスさせることのできる、まさしく埒外的存在がいるのです」
ちょい悪令嬢「……そのようなとんでもない輩が、本当に存在しているのでしょうか？」
夢魔ですの〜と「ぶほっ！」
ちょい悪令嬢「夢魔ですの〜とさん？」
夢魔ですの〜と「い、いえ、まさか他ならぬあなたから、そんなことを言われるとは…………ぶふふっ！ ──あ、ごめん、メイ道さん。これ以上余計なことは言わないから、そんなドラゴンも逃げ出すような殺気をぶつけてこないで」
ちょい悪令嬢「？？？」
夢魔ですの〜と「気を取り直して、話を続けましょう。ええと、皆さん肝心な『誰かさん』をお忘れではないかしら？ 私前回『異世界転生』は、集合的無意識へのアクセスによってこそ実現されるって言ったよね？ ところで『異世界転生』を実現させてくれる、Ｗｅｂ小説上の代表的キャラと言えば、誰ですっけ？」
ちょい悪令嬢「あっ」
かませ犬「そうか、『女神』か！」
夢魔ですの〜と「ええ、その通りよ。ほとんどのＷｅｂ小説において、女神が主人公を作為的に異世界転生させているんだけど、そうなると当然のごとく、女神は他者を集合的無意識に強制的にアクセスさせることができることになるの。特に本作における『なろうの女神』においては、このような『小説家になろう』や『カクヨム』等のＷｅｂ小説のメッカにおける、『女神という名の概念』の集合体的存在となっており、まさしく他者を集合的無意識に強制的にアクセスさせる力を有しているからこそ、この世におけるありとあらゆる異世界転生を司ることができているわけなのよ」
かませ犬「……つまり、この前の騒動における『カミカゼアタック』絡みの『死に戻り』もすべて、その『なろうの女神』とやらの仕業だったのか？」
夢魔ですの〜と「『異世界転生』はともかく、『死に戻り』のほうは、偶然では起こり得ないしね」
真王子様「ほう、何でだ？」
夢魔ですの〜と「前回も言ったように、『異世界転生』においては実際に『ゲンダイニッポン人』の肉体や精神が直接この世界に移動してくるのではなく、集合的無意識を介して彼らの『記憶と知識』のみがこの世界の人間の脳みそにインストールされるわけだけど、一般的な『異世界転生』が『死んだゲンダイニッポン人の記憶と知識』であるのに対して、『死に戻り』のほうは当然『生きたゲンダイニッポン人の記憶と知識』なのであって、この世界で死ぬたびに何度も同じ『ゲンダイニッポン人の記憶と知識』がこの世界の人間にインストールされることなんて、偶然であり得るはずがないからね」
ジミー「……いや、そもそもその『なろうの女神』を始めとして、Ｗｅｂ小説の『女神』キャラは、他者を集合的無意識に強制的にアクセスさせるなんて、文字通り神業的芸当を、どうして実現できるわけなの？」
夢魔ですの〜と「……うん、それについて説明するには、集合的無意識論だけでなく、量子論をも踏まえて、かなり混み合った話をすることになるけど、構わないかしら？」
妹プリンセス「うげぇ」
かませ犬「……またこの作者お得意の、量子論のご登場かよ？」
夢魔ですの〜と「わかったわかった、一応補足説明としてさわりだけを述べるから、（読者の皆様におかれましても）興味のある人だけ目を通してみてね。──実は量子論とは難しいことを抜きに一言で言えば、『この世界の未来には無限の可能性があり得る』という極当たり前のことを言っているだけなんだけど、ユング心理学における集合的無意識とは、量子論に則ればまさしくこの『未来の無限の可能性』を具象化したものとも言えて、『重ね合わせ状態』と呼ばれる常に己の未来の無限の可能性とアクセス状態にある量子自体やそれに基づく量子コンピュータならば、原理的にアクセス可能と見なされているんだけど、『重ね合わせ状態』でいられるのはあくまでも極微少レベルの量子に限られて、残念ながら我々現実世界の人間には、原則的には適用されないの。──そう。原則的にはね」
ちょい悪令嬢「……その言い方だと、原則的ではない特殊な場合なら、私たち人間にも適用される可能性があるとでも？」
夢魔ですの〜と「そう、それこそがまさしく、『夢の世界の中にいる状態』なの」
ちょい悪令嬢「はあ？」
かませ犬「夢の世界の中にいる状態って……」
夢魔ですの〜と「だって『まったくの別人になる夢』を見る可能性が誰にでもある限り、夢の世界にいる場合は、目覚めた時に『何者になるか？』の可能性は無数にあるわけであり、つまり『夢の世界の中にいる状態』ではミクロレベルの量子同様に、『目覚めた後の無限の可能性としての自分』と重ね合わせ状態に──つまりは、ユング心理学で言えば、集合的無意識とアクセス状態にあるってことになるのよ」
真王子様「な、何だと⁉」
ジミー「た、確かに、理論的には、そうなるけど……」
妹プリンセス「そう？ ちょっと飛躍が過ぎるんじゃなくって？」
夢魔ですの〜と「何の、まだまだ、本当の論理的飛躍は、むしろこれからなの。──それというのも、『ゲンダイニッポン』においてはお馴染みの、荘子の『胡蝶の夢』や中国神話の『黄龍』を例に挙げるまでもなく、実はこの現実世界そのものが『何者かが見ている夢に過ぎない』可能性があることはご存じかと思うけど、まさしくそのような超越的ないわゆる『夢の主体』とでも称すべき者が存在していたとしたら、我々現実の人間においても夢の存在かも知れないという二重性が生じることになって、ミクロレベルの量子同様に『目覚めた後に無数に存在し得る真の現実世界の自分』と『重ね合わせ状態』にあることになり、晴れて集合的無意識とアクセスすることになるわけで、すなわち他者を集合的無意識に強制的にアクセスさせることができる『なろうの女神』のような存在は、それぞれの世界における『夢の主体』の代行者みたいなものなのよ」
ちょい悪令嬢「代行者って、『夢の主体』そのものではないわけですの？」
夢魔ですの〜と「『夢の主体』はこの世界を夢見ていることになっているのだから、この世界の中にいたらおかしいでしょう？ よってそれぞれの世界の中で他者に『異世界転生』や『死に戻り』をさせることのできるのは、『夢の主体』そのものではなく、その代行者なのである──ってわけなのよ」
ちょい悪令嬢「はあ」
夢魔ですの〜と「はあって、本当にわかっているの？」
ちょい悪令嬢「……ええと、その、半分くらいは」
夢魔ですの〜と「まあ、半分もわかっていれば、十分か。──それで、『死に戻り』の『異世界転生』との違いの、更に顕著な例には、『記憶や知識の相互フィードバックシステム』ってのもあるの」
夢魔ですの〜と以外の全員「「「（うわあ、なんか、ますますわけのわからないことを言い出しやがったよ）」」」
夢魔ですの〜と「こらこら、いかにも『うわあ、なんか、ますますわけのわからないことを言い出しやがったよ』といった顔をしない。実はこれは何と、みんな大好き『ＳＡ○』で有名な、『ＶＲＭＭＯ』の実現にも繋がる理論なんだから」
ちょい悪令嬢「ＶＲＭＭＯって、ゲームの世界の中に入っていく、アレのことですか？」
夢魔ですの〜と「厳密に言えば、『ゲームの世界にダイブすることを仮想的に体験する』ことなんだけど、Ｗｅｂ小説やラノベ的には、ほとんど同じものだと思っていいわ。前回あたりから何度も、集合的無意識を介して『ゲンダイニッポン人の記憶や知識』を、この世界の人間の脳みそにインストールする』と言っているけど、実は一度にすべての『記憶や知識』をインストールしてそれっきりというわけではなくて、むしろ『集合的無意識とのアクセス経路が常に開いている状態にある』と言ったほうが正しくて、『異世界転生』状態においては、この世界の人物に無作為に『ゲンダイニッポン人の記憶や知識』が適宜もたらされることになるけど、『死に戻り』の場合は、『なろうの女神』が常に開きっぱなしの集合的無意識とのアクセス経路を介して、この世界の人物と『ゲンダイニッポン人』との間で『記憶や知識』をリアルタイムに相互にフィードバックさせることによって、あたかも『ゲンダイニッポン人』がこの世界の人物を自分のアバターにして、現実の異世界を舞台にＶＲＭＭＯをやっているかのように演出することができるって次第なのよ」
かませ犬「な、何だそりゃ？ それじゃまるでこの世界そのものが、『ゲンダイニッポン人』にとっては、単なるゲームに過ぎないみたいじゃないか⁉」
ちょい悪令嬢「……つまりそれこそが、この前の『カミカゼアタック』に繋がるわけですね？」
かませ犬「何だと⁉」
夢魔ですの〜と「御名答、その通りよ。何せ自分は『ゲンダイニッポン』に居ながらにして、まさしくリアルに異世界を体験できて、しかもたとえ死んでしまおうが、それはあくまでも『本物の異世界という名のゲーム』の中の話でしかなく、死体になるのもあくまでも『本物の異世界人という名のアバター』でしかなく、自分はピンピンしたままで何度も何度もスリル満点な『本物の死』を体験できるんだから、もはや『死に戻り』様々でしょうよ」
メイ道「……それで彼ら『ゲンダイニッポン人』の代わりに、この世界の人たちが次々と殺されていくわけなのですね」
かませ犬「ふざけやがって！」
夢魔ですの〜と「そう、これこそがＷｅｂ小説やラノベでお馴染みの、『異世界転生』や『死に戻り』や『ＶＲＭＭＯ』における、『真実』なのです。あなたたち『ゲンダイニッポン人』は、単に小説やゲームの中の『登場人物の死』だと軽く捉えていることでしょうが、私たちのようにまさしく当の異世界やゲームの中で生きている者にとっては、異世界やゲームこそが『唯一絶対の現実世界』なのであって、当然ここでの死は本物の死なのです。──さて、あなたは、この『真実』を知ってもなお、何も考えずにさも軽々しく『異世界における生と死』を扱った、そこら辺にありふれた十把一絡げのＷｅｂ小説やゲームを、単なる創作物として楽しむことができますか？」
