第245話、わたくし、自衛隊は専守防衛だからこそ、理想的な軍隊だと思いますの。【後編】
ちょい悪令嬢「ふえ〜、左遷部隊でありながら、元はといえばアイゼンハワーの麾下だったエリート部隊を相手に、そこまで健闘するなんて、大したものよねえ」
メリーさん太「まあ、そもそも左遷部隊といっても、最新鋭のジェット偵察機が配備されていたとかいったふうに、大戦末期のドイツ軍ならではの質的優位性があったり、連合軍は連合軍のほうで、権力闘争によって足の引っ張り合いをしていたりというのも、大きく貢献してくれたんだけど、やはり当時のドイツ軍が地の利を生かして、『専守防衛』に徹したことこそが、一番の理由だと思うの」
ちょい悪令嬢「あの完全に劣勢だったドイツ軍が、そこまでやれるということは、やはり『専守防衛』って、戦略的にも戦術的にも、すごいんだ?」
メリーさん太「まさに『守るに易く、攻めるに難し』を地で行く、あの南北に細長く山岳地帯が多いイタリアだったからこそ、防衛側としては戦線が組みやすかったというところもあるけど、それについては島国である日本のほうが、遙かにメリットが大きいの」
ちょい悪令嬢「ああ、なるほど、周りを海に取り囲まれているということは、敵方としては、大規模な陸上部隊を、直接送り込むことができないわけか」
メリーさん太「そういうこと。欧州西部戦線開幕当時、間違いなく世界最強の陸軍を擁していたのは、ドイツのほうだったけど、海に取り囲まれているイギリスのほうは、ただでさえ海軍が精強であるというのに、ドイツ空軍機を上回る超高性能機のスピットファイアを始めとして、質的には優位性を誇る航空兵力と、新開発のレーダーシステムを併用した、鉄壁の防衛体制を構築して、それまではまさしく破竹の勢いだったドイツの侵攻を、辛うじて押しとどめることに成功したの」
ちょい悪令嬢「……確かに部分的に見れば、『バトル・オブ・ブリテン』当時のイギリス軍は、理想的な『専守防衛』を実現していると、言えるかもね」
メリーさん太「それは、現代の島国日本も、御同様なの。たとえ極東地域や東アジア地域の某超二大国が侵攻しようと思ったところで、ご自慢の陸上兵力を直接送り込むことはできず、さりとて海戦や航空戦に持ち込もうと思っても、歴史的に最強クラスの海軍国家であり、現在においても世界レベルの造船技術を誇り、航空兵力についても、金に飽かして米国製の最新鋭戦闘機を多数所有し、レーダーシステムも迎撃ミサイルも、専守防衛一点に絞って構築されている、現在の日本を早期に屈服させるのはほぼ不可能と思われ、それでもしつこく侵略行為を続行しようとすれば、在日基地及び太平洋上の各基地に展開しているアメリカ軍が黙ってはおらず、日本が防衛に徹している限りは、自衛隊はユーラシア大陸東部の列強諸国と十分に互角に戦える、世界有数の軍隊と称することができるの」
ちょい悪令嬢「そうか、日本て島国である地の利からも、『専守防衛』こそが、軍隊として正しい在り方なんだ」
メリーさん太「逆に、広大なアジア大陸に攻め込むなんて、さっきも言った『補給線』の問題からも、自殺行為以外の何物でも無いの」
ちょい悪令嬢「……ちょっと待って、まさしくそれをやって大敗を喫したのが、旧日本軍てことじゃないの?」
メリーさん太「実は当時も『専守防衛』案はあって、太平洋戦争開戦時において、むしろアメリカ海軍機動部隊を日本の本土ギリギリまでおびき寄せて、全兵力をもって叩き潰すといった作戦も、考案されてはいたの。一見本国に甚大な被害が及びそうな、いかにも『背水の陣』的な戦法だけど、実は開戦時においては、海上兵力も航空兵力も、何と日本のほうが質量共にアメリカを上回っていたことと、この段階ではさすがにアメリカ側も大規模爆撃兵力は本格的に実用化しておらず、そもそも当時の日本近海には、空母には搭載不可能な大型爆撃機用の、陸上(つまり島上)の空軍基地も存在せず、たとえ爆撃可能だったとしても、初っぱなから大都市への無差別攻撃を行うほど、当時のアメリカにはなりふり構わぬ非人道性は無かったので、日本の防空システムさえしっかりしていれば、戦争末期のような壊滅的な大規模空襲を食らうことは無く、むしろ航続性能において遙かに勝っていた海上航空兵力をもって、アメリカ艦隊を袋だたきにすることすらも余裕で可能で、専守防衛に徹していれば、このようないかにも危なげな『水際作戦』でありながらも、十分勝機はあったと思うの」
ちょい悪令嬢「ということは、現在においては余分な海外の領土(=植民地)を持たず、まさしく完全なる島国であり、質的には世界最高レベルの兵力を有する自衛隊は、専守防衛であり続ける限りは、よその国から侵略を受けることは、ほぼ皆無と断言できるわけね」
メリーさん太「そうなの、専守防衛と言っても、別に『消極』的でも『平和』的でも無く、むしろ余計な兵力を必要とせず、武器や兵員の質に極限までこだわった、真に理想的な『強い軍隊』とも言えるの。──そしてこれは、現代物理学の中核を担う量子論に則っても、非常に正しい在り方なの」
ちょい悪令嬢「ああ、つまり『専守防衛』とは、将棋における『受け将棋』みたいなものだという、本作の作者お得意の(トンデモ)理論なわけね」
メリーさん太「たとえ理論的に真に理想的な量子コンピュータが実現できて、真に完璧な未来予測を為し得たとしても、『絶対に勝てる方法』を算出できるわけでは無いの。完璧な未来予測とは、量子論的にはあくまでも、『すべての可能性を算出する』という意味に他ならず、けして『たった一つの勝つ可能性』を弾き出すわけでも無いし、実は何とその『勝つ可能性』にも『負ける可能性』が潜んでいるからして、コンピュータの言う通りにしたところで、絶対に勝てるわけでは無いの。よってむしろ逆に、『負ける可能性』こそをすべて算出して、それを基に作戦を立てて、あらゆる負けパターンに対策を練って、『けして負けない』ようにすれば、必然的に『勝てる』ことになるの。つまり『専守防衛』に徹するのであれば、他国を侵略して何かを得ると言った『勝利』は望めないけれど、敵の侵略から国土を守り切り、何かを失うといった『敗北』だけは、辛うじて防ぐことができるのであり、これは事実上、『専守防衛』と『世界的に高レベルの兵力』との合わせ技によって、真に理想的な、すべての武人や支配者の夢である、『不敗の軍隊』を実現しているようなものなの」
ちょい悪令嬢「なっ、自衛隊が、不敗の軍隊ですってえ⁉」
メリーさん太「そもそも第9条を中心とした、現行の平和憲法を守っている限りは──すなわち、自ら戦争をするといった馬鹿なことをしなければ、当然戦争に負けることなぞあり得ないの」
ちょい悪令嬢「そりゃあ、そもそも戦争しなければ、負けることは無いよな⁉」
メリーさん太「これは何も、皮肉でもとんちでも禅問答でも無いの、絶対に自分からは戦争を起こさず、専守防衛に徹している自衛隊は、日本国のみならず、もはや全人類にとっても、真に理想的な軍隊であり、日本人は自衛隊が日本の軍隊であることを、もっと誇りに思うべきなの」
ちょい悪令嬢「自衛隊が、全人類にとって、最も誇るべき理想的な軍隊ですって?」
メリーさん太「それなのに、いかにも考え足らずのWeb作家たちが、わざわざ自衛隊を異世界なんかに派遣して、それが侵略行為かどうかはともかく、自ら率先して攻撃行動をとらせるといった、旧日本軍の二の舞的な、『自衛隊サイコー! 弱っちい異世界の軍隊なんて、ひとひねりだあ〜い☆』などといった、幼稚な『なろう系』ならではの、『自衛隊無双』路線ばかりを展開しているものだから、『それはむしろ自衛隊の存在意義の否定だろうが?』と、本作の作者の各作品内において苦言を呈しているだけの話なの」
ちょい悪令嬢「うん、確かに自衛隊系のWeb小説って、不必要に異世界側をsageることによって、むやみやたらと自衛隊側をageようとしているだけだし、何よりも完璧に日本国外である異世界を舞台にすることで、自衛隊の最大の優位点である専守防衛を放棄するなんて、本末転倒もいいところだよね」
メリーさん太「自衛隊の兵力が、質的に世界最高レベルと評されているのは、あくまでも専守防衛に徹した場合の話であって、それこそ世界最高レベルの陸軍を有する、ユーラシア大陸東部の某二大国家の国土に侵攻したりしたら、ひとひねりで壊滅してしまうという事実を、自衛隊系Web作家の皆様は、もっとちゃんと認識すべきだと思うの。──それができない限りは、日本人は結局『失敗から何も学べない』、愚かな劣等民族でしかなく、何度も旧日本軍と同じ轍を踏み続ける道化者として、世界中から物笑いの種にされるだけの話なの」




