第2325話、【こ○すば4期】わたくし、『邪神』が『ヤンデレ』なのは当然ですの★
「──行けっ、ちょむ○け!」
『ガウッ!』
俺の命令一下、巨大な魔物へと飛びかかる、子猫くらいの大きさの『使い魔』。
しかし『彼女』は、俺の魔力を供給することによって、虎や豹並みの大きさとなり、その鋭い牙で、魔物の喉笛を掻き切った。
あっけなくその場に倒れ込み、塵のように消滅し始める魔物。
「おっといけない、『エナジードレイン』で、魔力を吸収しなくちゃ」
慌てて魔物の死骸に触れると、肉体自体が完全に消え去る前に、結構な量の魔力を補給できた。
……これで次の戦いの時、またちょむ○けを変身させられるし、俺自身もいろいろなスキルを使うことができるぞ。
そうなのである。
数年前、黒猫の子供が魔物たちから襲われていたので、気まぐれに助けてやったところ、小さいけどどうやらそいつも魔物みたいで、しかも俺の魔力を与えることで、巨大な猫型の魔物に一時的に変身できて、二人で協力すれば、どんな魔物でも狩れるようになると言う、願っても無い『戦力』になってくれたのだ。
ただし、いわゆる『戦闘モード』になれるのは、俺が魔力を供給してやった時の短時間だけで、普段はずっと子猫サイズのままでいて、それはそれで俺にとっては、日常的な『癒やし』となってくれていた。
そんな、公私共々『理想的な相棒』とともにギルドへと、『クエスト達成』の報告に帰還しようとしたその時、
──ちょむ○けが、いまだ真剣な表情をして、森の奥を凝視していることに気づいたのである。
「……おい、まさかまだ、魔物でもいるのか?」
思わず表情を引き締めて、再び戦闘態勢となる俺。
しかし、草むらをかき分けて姿を現したのは、あまりにも場違いな存在であった。
「──ああ、やっと見つけたわ、私の『半身』♡」
十代後半の華奢で小柄な肢体を包み込む、クラシカルなドレスを始めとして、烏の濡れ羽色の長い黒髪に縁取られた端整なる小顔の中で暗めいている、黒曜石の瞳に至るまで、全身黒一色に統一された、絶世の美少女さんの、いかにも唐突なるご登場であった。
「……あんたは、一体」
「まあ、あなたがこの子を保護してくださっていたのですか? それはどうもありがとうございます。『女神』である私から、心からの感謝の念を捧げますわ」
は?
「──この世界には、ア○アやエ○ス様以外にも、女神がいたのか⁉」
「──失礼な、『マイナー』とはいえ、私もれっきとした『神様』なんですよ⁉」
『マイナー』って。
いや、それを自分で言うのかよ?
「……ええと、そんな女神様が、うちの相棒のちょむ○けを、『半身』とか呼んでいるのは、どうしてなんですか?」
「──『ちょむ○け』って、何ですか⁉」
「す、すみません、うちの頭のおかしい『紅○族』の娘が、こいつに勝手に名付けたんですよ」
「実は数年前にいろいろ有って、神様としての力が弱体化した際に、『敵』の手によって封印されそうになったので、私の『神としての力』の一部を分離して『子猫』の姿にして、こっそりと逃がしたのです」
「ええっ、神様のくせに、封印なんてされたのですか⁉」
「……それだけ敵の勢力が、強大だったのですよ」
一体どんな勢力なんだ? やっぱり『魔王軍』とかだろうか?
「それが何で、今は自由に動けているのですか?」
魔王を倒した勇者とかに助けられているとしたら、こんな魔物が出るような深い森の中で、一人でうろついたりしているわけが無いしな。
「──それもすべては、あなたのお陰なのです!」
「うわっ、ちょっと⁉ 近い! 近い!」
突然俺に迫ってくるや、両手を握りしめて、意味不明なことを言い出す、自称『女神様』。
「実は私本体は封印されたとはいえ、半身であるその子とは『魔力のパス』が繋がっており、あなた様がその子に魔力を与えるごとに、私自身の神としての力も増幅されて、ついに封印を破ることができたのです!」
ええっ、俺のちょむ○けへの魔力供給に、そんな『副作用』が有ったわけ⁉
「そう言うわけで、これも何かのご縁ですので、あなたには是非とも、復活して女神として再出発したこの私の、『信者第一号』になっていただきたいのです!」
──はあああああああああああ⁉
「何で俺が、そんなものにならなければならないんだよ⁉」
「復活したとはいえ、まだ『女神』としては万全な状態では無く、今後ともその子を通じてあなた様の魔力を分けていただかなければならないのですが、それだけでは完全復活はままならず、何と言っても『女神にとっての正当なる糧』が必要なのです!」
「な、何だよ、『女神にとっての正当なる糧』って?」
「もちろん、私に対する『信仰心』です! これこそが何よりも、神である私の力となるのです!」
「──結局、俺があんたに、与えるばかりじゃねえか⁉」
「何言っているんですか、私はあなたに、『女神としての力』を前貸ししているようなものであり、その貸しを返していただくだけなのですよ?」
「……あんたの力を、前貸ししているって?」
「確かにあなたの魔力供給が有ってのこととはいえ、その子の助力が無ければ、先ほどのような屈強な魔物を狩ることなんてできなかったでしょう。あなたのこれまでの冒険者として十分過ぎる『収入』は、少なからず私の分身である、その子の協力が有ってのことだと思いますけど?」
た、確かに……。
「それにこれはあなたにとっても、けして悪い話では無いのですよ?」
「何だと?」
「一応は女神本体が復活したのだから、これからはあなたの魔物退治においても、更に強力に協力できて、あなたの冒険者としての地位も名誉も収入も、格段にアップするのは間違いないし、更には人に仇なす討伐困難な魔物たちを屠ることによって、人々の女神としての私への信仰も高まり、更に力が強まり、あなたへの手助けも更に万全になると言う、言うなれば『プラスの永久機関』ともなり得るのです!」
「……なるほど、最初はたった一人の信者だか協力者だかの、俺ばかりに負担がかかるけど、我慢していればそのうちあんたの力が増大し、他の信者たちも倍々ゲームで増えていって、俺自身は楽して儲けられるようになるって寸法か?」
「何せ信者一号ってことは、言うなれば『教祖様』なのですからね。まさしく『坊主丸儲け』ですよ!」
……何か、宗教は宗教でも、『カルト』臭くなってきたのは、気のせいか?
「まあ、場合によっては入信してやってもいいけど、その前にあんたの名前を教えてくれ。いくら何でも名前も知らないのに、信仰したりはできないからな」
「あ、すみません、申し遅れました。私『ウ○ルバク』と申します」
「──この世界において、最も悪名の高い、『邪神』じゃねえか⁉(※『この素晴らしい世界○祝福を!』原作第9巻を参照)」
「むっ、邪神とは失礼な。私は間違いなく、『怠惰と暴虐を司る女神』ですよ」
「──司っているのが、いかにも邪神ぽいじゃん⁉」
「ふむ、おそらくは私と敵対していた女神である、ア○アやエ○スの信者どもが流布した、根も葉もない『流言飛語』なのでしょう。古から、自分たちの敵を一方的に『邪悪なる者』と決めつけるのは、常套手段ですからね」
「……ああ、それは言える。現役の冒険者の俺が言うのも何だけど、そもそも『魔王』と言う名称も、敵対している国家の元首を『悪者』に仕立て上げるために生まれたそうだからな」
「このような『風評被害』も、私が女神として信仰を取り戻せば、万事解決です! そのためにも、是非あなた様の協力が必要なのです!」
「──やだよ! 少なくとも現在においては、世間一般的にあんたは『邪神』なんだから、その信者第一号だか教祖だかになって堪るか⁉」
場合によってはちょむ○けとのコンビも解消することになって、大幅に戦力ダウンになりかねないけど、背に腹は代えられぬ!
「……そんな、酷い! あれだけ尽くさせて、私のことをもてあそんできたくせにッ!」
「──何ソノ特大の『風評被害』は⁉ いつ俺が、女神だか邪神だかを、もてあそんだって言うんだよ⁉」
「あら、言ったでしょ? 私は封印されている間も、その子とは『魔力のパス』が繋がっていたって」
「……それが、どうした?」
「それってつまり、封印されてすべての感覚が閉ざされていた私にとっては、その子の五感でのみ外界の刺激を受けることができたわけで、あなたがその子にやっていたこと──つまり、文字通り『子猫』に対して行っていた、日常的なスキンシップも、毎晩のごとき添い寝も、身体の隅々まで洗ってくれた入浴も、女神である私自身に行っていたも同然なのですよ♡」
──なッ⁉
「……お陰で、もはや私は、あなた無しでは生きていけない身体となってしまったのです。どうか責任をとってくださいませ♡♡♡」
「ちょっ⁉ さっきから聞いていれば、人聞きの悪いことばかり言うのは、やめてくださいませんか⁉」
「自称『女神』にして他称『邪神』であるこの私に、これだけ惚れさせてしまったのです。よもやこの世界において、逃れられる場所が有るとは思わないでしょうねえ?」
──まあた、このパターンかよ⁉
どうして俺が関わった女神たちは、どいつもこいつも『ヤンデレ化』してしまうんだ!
「まあ、大きな猫が一匹増えたとでも思し召されて、これまで通りに接してくださればいいのですよ♫ もちろん、あなたの冒険者稼業についても、これまで以上に役立って見せますわ☆」
──いやだから、女神様だか邪神だかを、猫扱いできるかってえの⁉
(※次回の解説編に続きます)




