第2316話、わたくし、今回は『魔法少女の裏の顔』をお教えしますの♡
大陸随一の魔導大国ホワンロン王国王都内の、セレルーナ筆頭公爵家本邸。
──時刻は、草木も眠る丑三つ時。
「……ホント、相変わらず、余計なことばかりしてくれますよね」
私こと、公爵様の一人娘であられるアルテミス=ツクヨミ=セレルーナお嬢様の、専属メイドのメイ=アカシャ=ドーマンが、他に誰もいない鏡の間で、一際大きな姿見を見ながら、一人でずっと話しかけていた。
とはいえ、別にナルシスト的な中二病でも、白雪姫の意地悪な母親にあこがれているわけでも無かった。
──なぜなら、目の前の鏡には、私とはまったくの別人の姿が映し出されていたのだから。
光の加減では虹色にも見える、白銀色の長い髪の毛と吊り目気味の瞳に、
一見一桁の年頃に見える、小柄で華奢な体つきであるが、
その恐ろしく整った端整なる小顔にたたえられた笑みには、あたかも全知全能のごとき知性を感じさせた。
それもそのはず彼女こそは、すべての異世界転生と転移を司る、『なろうの女神』その人であったのだ。
『……やれやれ、私に言われても困るわ。この作品──「わたくし、悪役令嬢ですの!」を書いているのは、「現代日本」におけるあなた自身の「異世界同位体」である、上無祐記少年執事君なのだから、文句はそっちに言ってちょうだい』
「──くッ」
……『この世界を小説として生み出している作者』──つまりは、『外なる神』理論か。
元々10歳前後に設定していたアルテミスお嬢様を、いきなり十代半ばの年頃に引き上げたかと思えば、続け様に魔法少女化なんかさせて、しかも年齢を10歳前後に戻すなんて、いかにも回りくどいことをして。
……この作品も既に連載を始めて七、八年も経つと言うのに、まったく進展を見せていないからな。原作者としては焦っているのだろう。
しかし、主人公兼メインヒロインの、年齢設定をいきなり変えるなんて、『迷走』するにも程が有るんじゃ無いのか?
そもそも、あいつの『真の狙い』自体が、いまだに良くわからなかった。
──自分が仕えていた双子のお嬢様のうち、死んでしまった姉のほうを甦らせたいのか、それとも、『出来損ない』として生を受けた妹のほうの、『願い』を叶えてやりたいのか。
何せ、まさにその『お嬢様』のこちらの世界での『異世界同位体』である、我がアルテミスお嬢様の容姿が、元々双子の姉のほうである銀髪金目だったのが、今回の『魔法少女化』によって、妹のほうの『黒髪黒目』へと変化してしまったしな。
……ホント、一体何がやりたいのやら、皆目見当がつかなかった。
──だからこそ、『第三者』の介入が、疑われるのだ。
「……確かに上無祐記は、この世界にとっては『作者』だけど、『現代日本』においては、単なる人間に過ぎないよね? ──そんな彼の心を隙間を突くように、あれこれ焚きつけたやつがいるんじゃ無いの?」
『まさか、それが私の仕業だと? 確かにこの世界では「女神」であるけど、この身はあくまでも「わたくし、悪役令嬢ですの!」と言う作品の、「一登場人物」に過ぎないと言うのに、むしろ自分にとっての「作者」様に、意見なぞできようも無いでしょうが?』
「よく言うよ、すべての世界の理から超越した本物の『アウター』である、『なろうの女神』のくせして。むしろ世界と呼べるものすべてが、あんたにとっては、『小説』みたいなものでしょうが?」
『そう言うあなたこそ、上無祐記と彼の世界全体にとっての「作者」なんだから、すべてを自分の思い通りにさせて、彼が書いているこの世界そのものを、自分の理想通りにすればいいじゃ無い?』
「……たとえ『作者』とはいえ、世界と言うものが『量子力学』に基づいている限りは、『無限の可能性』が有り得るのだから、すべてを思い通りにすることなんて不可能なことは、『女神』であるあなた自身がよく知っているくせに。──それに、私が気にくわないのは、アルテミスお嬢様を成長させたことでも魔法少女にしたことでも、無いのよ!」
『ほう、だったら何だと言うの?』
「お嬢様に、『前世』である現代日本の──すなわち、『明石月詠』としての記憶を甦らせたことよ! これは二つの『作品』間における『隠し設定』のはずであり、それを表に出したのでは、作品の世界観自体が、根底から大変動してしまうじゃ無いの⁉」
『そうよね、ある意味これまでそれぞれ独立していた、二つの「作品」の垣根が取っ払われて、それぞれのヒロインが一人に融合してしまうようなものですからね』
「──知っていて、どうして上無祐記を止めなかったの⁉ あなたならできたでしょ⁉」
『まあ、やってやれないことは無いけど、それぞれの作品の作者の邪魔をするのは、原則的に御法度であることは、あなたもご存じでしょう? それにそろそろ作品自体も、本格的に動かすべきじゃ無いの?』
「まだ早いッ!」
『……七年以上も、連載を続けているのに?』
「連載期間の話では無く、うちのお嬢様はもちろん、明石月詠のほうも、まだ『すべてを受け容れる』態勢が整っていないって言っているのよ⁉ それなのに明石月詠の記憶をアルテミスお嬢様に覚醒させるなんて、言語道断もいいところだわッ!」
『そこら辺は大丈夫よ、上無祐記としてはあくまでも、「試行錯誤」のつもりじゃ無いの? 今回あえてアルテミスちゃんの年齢を上げたのも、後でやり直すための「布石」だったりしてね』
「……『ループ』とか、最悪『夢オチ』とかで、『無かったこと』にするつもりとか? 『創作者』としては、最低ね」
『だからそれだけ切羽詰まっているってことよ。あなたのほうこそ、もっと余裕を持ったら? こんな「魔法少女イベント」なんて、遊びみたいなものじゃない? せいぜい楽しみましょうよ♫」
「……………………………そういえば、あんた、あえてツッコまなかったけど、その全身オレンジ色の、フリフリドレスは一体何なの?」
『うふふふふ、可愛いでしょう? 女神っ子魔法少女の「セイレーンウラヌス」ちゃんデース☆』
「──あんたまで、今回の【魔法少女編】に、参加するつもりなのかよ⁉」
『私はあなたとは違って、お祭りには積極的に参加する方針だし』
「現在既にカオス状態だと言うのに、『女神』までも加わったんじゃ、収拾がつかなくなるじゃないの⁉」
『あら、最近の本作の作者の「エ○ス様推し」を鑑みると、遅かれ早かれ「女神キャラの魔法少女化」は避けられないんじゃ無いの?』
「──いきなりあんたみたいな『ラスボス』が、魔法少女なんかになって、しれっと本編に登場するなと言っているのよ! ストーリー展開がむちゃくちゃになるだろうが⁉」
『でも、女神様が魔法少女になるのって、結構イケると思うのよ。「ま○マギ」のま○かちゃんも、最後には女神みたいなものになったわけだし』
「──あんたはどっちかと言うと、『キュ○べえ』的な立ち位置のキャラだろうが⁉ ちゃんと『すべての黒幕』らしく、出しゃばらずに陰から見守っていろよ⁉」
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ちょい悪令嬢「──と言うわけで、最近『女神様』に凝っている本作の作者が、現在展開中の【魔法少女編】の裏設定を、ほんの少しだけ公開いたしました!」
メリーさん太「……確かに、この作品の主役であるあんた自身が『転生者』だったなんて、非常に重要な事実の判明だよな」
ちょい悪令嬢「まあ、『なろう系のお約束』としてなら、まさに『悪役令嬢が前世の記憶を取り戻した』と言った展開ですが、厳密にはちょっと違うんですけどね」
メリーさん太「と、言うと?」
ちょい悪令嬢「これについては、前々から何度も触れているように、私ことアルテミス=ツクヨミ=セレルーナと、現代日本の明石月詠と言うキャラとは、どっちが前世とか転生体とかでは無く、『異世界同位体』──言うなれば、『裏表』の関係にあるのですよ」
メリーさん太「ああそういえば、明石月詠嬢のほうは、別に死んでしまったわけじゃ無いしな」
ちょい悪令嬢「『同位体』と言う強い繋がりが有るからこそ、毎度お馴染みの『集合的無意識』を介して、お互いの『記憶と知識』を共有できたりするのです」
メリーさん太「なるほど、あんたは完全に詠嬢に乗っ取られたわけでは無く、一時的に憑依されているようなものなわけか」
ちょい悪令嬢「これでも一応『巫女姫』ですからね、『何者か』の憑坐になるのも、別に珍しくは無いのですよ☆」




