第2311話、わたくし、『魔王』様が『魔法少女』になっても構わないと思いますの⁉
『──フハハハハハハハ! 魔法少女ごときが束になってかかろうが、地獄の番犬であるこの我、「ケルベロス」に敵うとでも思ったか⁉』
巨大な三つ首の犬のモンスターが、魔導大陸の山岳部の岩山の頂上て、勝ち誇るように吠え立てた。
それに対して、既に満身創痍となっている、私こと『セイレーンムーン』を始めとする、総勢四名の魔法少女たちは、もはや言い返す気力すら残っていなかった。
「……くそう、まさかあっしの超特大『爆裂魔法』が、効かないなんて」
さも悔しそうにうめくのは、『戦闘狂』な魔法少女の『セイレーンマーズ』ちゃん。
「……だから、宗教の何たるかもわからない犬っころは、嫌いなのよ」
さも憎々しげに吐き捨てるのは、『大量虐殺者』な魔法少女の『セイレーンサターン』ちゃん。
「………」
そんな中で、みんなと同じくらい深手を負いながらも、最初からずっと沈黙を守り続けているのは、今回初めて私たちと行動を共にしている、ピッカピカの新参者の魔法少女だった。
「……『セイレーンヴィーナス』ちゃん、ごめんね。最初の『魔物討伐』が、よりによってケルベロスなんかになっちゃうなんて。ここは私たち先輩魔法少女三人で食い止めるから、ヴィーナスちゃんだけは逃げてちょうだい!」
「おうっ! あっしが最後の力を振り絞れば、十分くらいは、時間を稼げるぜ!」
「……我らの体内の魔力回路を暴走させて自爆すれば、ケルベロスと相討ちも可能だろう。──もっとも、この魔導大陸の半分は消滅してしまうがな★」
「「──駄目じゃん⁉」」
この絶体絶命の状況においても、相も変わらず姦しい三人娘の馬鹿騒ぎを見ていて、とうとうあきれ果てたのか、ヴィーナスちゃんが初めて桃花の蕾のような唇を開いた。
「……仕方ありません、奥の手を使いましょう。──召喚」
「──お呼びですか、我が主」
「「「なッ⁉」」」
突然ヴィーナスちゃんの目の前の虚空に現れる、全身黒ずくめの青年。
恐ろしいまでに整った顔に、痩せぎすの長身と言う、思わず目を奪われる見目麗しさだが、
──全身から漏れいずる魔力の禍々しさは、地獄の番犬すらも遙かに凌駕していた。
『……き、貴様は、「四天王」きっての魔導剣士、「風将」! どうしてこんなところに⁉ 我ら「地獄の軍団」と、貴様らとは、「中立協定」を結んでいたはずッ!』
「実は我が主が『新しい遊戯』に夢中でして、そのためには申し訳ございませんが、『協定』を破棄させていただきます」
『「遊戯」だと? そんなことのために、千年続いた「血の盟約」を、破棄するとでも言うのか⁉』
「……『そんなこと』? 貴様、我が主がなされることは、例え『遊戯』であろうとも、この世で最も尊重されるべきであり、それを批判すると言うことは、『大罪』以外の何物でも無いわ! ──あの世で後悔しろ! この痴れ者めがッ!」
『──グギャアアアアアアアアアアアア!!!』
他称『風将』の裂帛の怒声とともに抜き放たれた、大剣からほとばしった『斬撃』が、ケルベロスの首を三つとも切り飛ばして、あっけなく勝負がついたのであった。
……何、この人、『剣聖』とか『チート勇者』とかなの?
「──わが主、『処理』が終了しました」
「うむ、大義であった。後ほど帰城の折には、改めて褒めてつかわす」
「ハッ、ありがたき幸せ」
そう言うや、虚空に溶け込むように姿を消す、黒ずくめの男性。
……いや、『帰城』って。ヴィーナスちゃんってもしかして、お城に住んでいるの⁉
そのように、呆気にとられるばかりの我ら先輩魔法少女三人衆であったが、その時目の前の金髪金目の美少女が、初めてその無表情な小顔に、笑みらしきものを浮かべた。
「──今日は楽しかった。また『遊び』に誘って欲しい」
そう言い残すや、箒に跨がって大空へと飛び去っていく、『宵の明星』ちゃん。
……嘘、あのケルベロスとの激闘も、彼女にとってはマジで、『遊び』でしか無かったのかよ⁉
て言うか──
「いや、もう帰ってしまうの⁉ 『四天王』とか『風将』とか『我が主』とか、一体何がどうなっているのか、ちゃんと説明してちょうだいよ⁉」
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──所変わって、ここは魔王城の最深部にある、『玉座の間』。
最奥の背の高い椅子に、いかにも気だるそうに身を預けているのは、扇情的な漆黒のドレスを二十歳絡みの妙齢の肢体にまとった、黒髪黒目の絶世の美女であった。
「──魔王様、ただ今帰還いたしました」
「おお、『風将』か、先ほどはご苦労であった」
「あれしきのことなぞ、お安い御用でございます」
「して、地獄のモンスター軍団のほうは、どうだった?」
「もちろん、ケルベロスの件で激怒いたしておりましたが、十数匹ほどひねり潰すと大人しくなったので、こちらの要求を強引に承諾させました」
「何から何まで、面倒をかけたな」
「いえいえ、これで魔王様があの『遊戯』をなさる時には、モンスターどもが魔法少女に襲いかかる手はずとなっておりますので、後はいかようにもお楽しみください」
「うむ、大義であった。褒めて使わす、近う寄れ。頭を撫でて進ぜよう」
「ぎょ、御意♡」
ひとしきり頭を撫でてやると満足したのか、風将は上機嫌でこの場を立ち去って行った。
……ああ、何と理想的な生活なんでしょう!
現代日本から転生してきて、『魔王』の後継ぎとして生まれ変わった時には、心底絶望したものだが、実際に王位を継承してみれば、人類等の他の勢力とも『休戦協定』が確立しており、無駄な争いごとなぞほとんど起こらず、領地経営のみに専念すれば良く、しかもそれも優秀な部下たちに任せれば事足りるので、暇と膨大な魔力を持て余したところ、何と風の便りによれば、現在魔導大陸の極東地域においては、『魔法少女』なる者たちが活躍していると言うでは無いか。
普通に考えて、基本的に剣と魔法のファンタジーワールドである、『なろう系』の世界観設定的には、『魔法少女』はミスマッチであり、きっと自分と同じような『転生者』の仕業であろうと見当をつけて、だったら『魔王』である自分だって魔法少女になっても構わないだろうと思い立ち、あえて似ても似つかぬ『金髪金目のロリ娘』に変化して、現代日本当時からの夢である、魔法少女と相成ったわけである。
そしたら何と、各勢力に潜入させている部下たちの調査によれば、他の魔法少女たちもその正体は、『悪役令嬢』に『百合系完璧お嬢様』に『聖女』と言う、『魔王』にも劣らぬとんでもないキャラたちばかりだったのだ。
……これって多分、こいつらも『転生者』に違い無かろう。
だったら私も遠慮なく、魔王としての魔力や権力を、魔法少女としての活動に利用してもいいよね?
私の固有スキルを『召喚能力』と言うことにすれば、『四天王』を始めとする、魔王軍の凄腕の魔族や魔物をいつでも呼び出して、自分の代わりに無双させ放題だしね♫
これってある意味、『魔法少女』のみならず、なろう系の『チート転生者』としては、『最強』と言っても差し支えないのでは?
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メリーさん太「……確かにこの前、いろいろな『なろう系』のファンタジーキャラを、『魔法少女』にする予定だと言っていたけど、まさか『魔王』様までセレクトするとはな」
ちょい悪令嬢「普通『魔王』とか言うと、『魔法少女』にとっては『討伐対象』になるところを、『逆張り』してみました☆」
メリーさん太「しかも、実は『現代日本からの転生者』でもあるってところが、凝っているよな?」
ちょい悪令嬢「『何で魔王が魔法少女なんかになりたがるんだ?』と言う理由づけにおいて、元々『現代日本のオタク』だったからってことにすると、スムーズに理解できますからね」
メリーさん太「他の『なろう系キャラ』たちとも、シンパシーを感じやすいしな」
ちょい悪令嬢「ある意味『異世界かるて○と』あたりと、似たパターンですかね」
メリーさん太「ああ、あれも、いろいろな作品の曲者的なキャラたちが、お互いに『転生者』であることを知った途端、一気に仲良くなったからな」
ちょい悪令嬢「──しかも言うまでも無く、『魔王』と言うキャラは、いろいろと『使い途』が多いので、これからの展開にも大いに期待してくださいませ♡」




