第2292話、わたくし、むしろ中国が香港に乗っ取られていると思いますの★
「──本日はお集まりいただき、誠にありがとうございます」
「いえいえ、こちらこそ。まさか九条列島以外で、神聖皇国旭光の魔女様にお目にかかれるなんて、思いも寄りませんでしたわ」
タイヴァーン国、首都テッペイ市の某所。
現在この秘密の会員制高級クラブには、タイヴァーン軍の航空魔法少女隊隊長と、神聖皇国旭光のサンカク諸島守備隊長に、
そして何と、ホワンロン王国の特別自治都市、『ホングコング』の五大マフィアの内、最大派閥の現当主の少女が集っていた。
「でも本当に、魔女様は『九条の結界』の外に出ることができるし、そもそもタイヴァーンにも、魔女様や魔法少女様がおられたのですね」
「……生粋の旭光の魔女である私がここにいられるのも、所属している『サンカク諸島』を、タイヴァーン政府も領有権を主張しているからであり、タイヴァーンの勢力圏であれば、このように行動することができるのですよ」
「私たちタイヴァーン航空魔法少女隊の隊員は皆、第二次世界大戦後に『賠償艦』として、旭光からタイヴァーンへと譲渡された、海底の魔女『セイレーン』の末裔であり、当然のことながら、九条の結界なぞにかかわらず、世界中で行動できるのです」
「うふふふふ、あれ程魔女の皆様の脅威に世界中が恐れおののいて、どうにか九条の結界の中に閉じ込めたと言うのに、こんな『抜け穴』が有ったなんて、皮肉なお話ですわね」
「……皮肉と言えば、まさしく『人類の敵』とも呼ばれた我々が、現在はこうして、封建主義的な大国の脅威から、タイヴァーンと言う弱小国の民主主義を守ろうとしていることだろうね」
「──単刀直入に申しましょう、本日ここへあなた様にご足労いただいたのは、ホワンロン王国内の最後の『民主勢力の牙城』たる、ホングコングの陰の支配者であられる、あなた様方『黒社会』に、民主運動を指導していただきたいのですよ」
「ほう? 我ら反社組織に国内テロを起こさせて、ホワンロン王国を内側から弱体化させろと?」
「単なるテロ行為では無く、王国の方々に一人でも多く、民主主義に目覚めていただきたいのです」
「そもそもホングコングは、以前のエゲレスの統治時代においては、民主制だったわけであり、その当時から裏社会を支配していたあなた方にとっては、今の封建的王政よりも、『商売』がやりやすいのでは無いでしょうか?」
「そうですね、エゲレスから返還された際に取り決められた、『一国二制度』についても、すっかり形骸化してしまったことですし、下手するとホングコングの独自性が損なわれるかも知れませんね」
「だったら──」
「ああ、ご心配なく、我々黒社会にとっては、別に民主制など取り戻す必要無く、『生きやすい世界』なぞ、いくらでも創れますから」
「「え」」
「……何か皆さん誤解なされているようですけど、別にホワンロン王国に返還される前のホングコングって、みんな自由で民主的で平等だった──わけでは無く、むしろまったく種族が違うエゲレス人に支配されていて、自由や民主主義には程遠く、ホングコング人は『二等市民』として扱われていたのですよ? それがなぜかホワンロン王国への返還が決まってから突如として、『ホングコングの自由と民主主義を守れ!』とか騒ぎだしたわけなんだから、『歴史修正主義』って、本当に恐いですわよねwww」
「「──どうした、本作の作者⁉ ある意味『中○側の立場』に立った意見を語り始めたぞ⁉」」
「国自体の主義主張なんて、どうでもいいのですよ。たとえ王政だろうが民主主義だろうが共産主義だろうが、我々のような黒社会や華僑は、『金儲け』さえできればいいのです。よって、民主制から王政や共産主義に変わろうとも、権力者を金で買収したり、弱みを握って脅したりして、自分たちの言うことをきかせて、国政そのものを掌握し、王国の臣民や共産党の人民を、マフィアや華僑の『兵隊』として大量に使役して、敵国である旭光の国内において、『留学生』等の名目で大勢侵入させて、転売や特殊詐欺や闇バイトや押し込み強盗や誘拐や臓器売買をやらせて、たんまりと金儲けをすると言った寸法なのです♫」
「「──考えてみれば、転売や特殊詐欺や闇バイトや押し込み強盗や誘拐や臓器売買って、大昔からホングコングご自慢の、黒社会の手口だったっけ⁉ と言うことは、つまり」」
「そうです、実は、ホワンロン王国がホングコングを乗っ取ったのでは無く、ホングコングがホワンロン王国を乗っ取ったのですよ★」
「「──‼」」
「と言うわけで、今回のお誘いは残念ながら、お断りさせていただきますね。──ああ、ご安心ください。別にあなた方のことは、王国に密告したりはしませんから。なぜなら私どもは少なくとも、あなた方の『敵』ではありませんので」
「「……何だと?」」
「ですから、もしもあなた方が勝利して、ホングコングを含むホワンロン王国が、タイヴァーン政権のものになり、民主制の国家になろうとも、我々黒社会は以前同様、裏社会を支配するだけですよ」
「「──なッ⁉」」
「いや、むしろあなた方に伺いたいんですけど、もしもホワンロン王国を、旭光の魔女様たちの圧倒的な軍事力で屈服できたとして、その後の『支配体制』はどうするおつもりなのです? まさか、われわれ裏社会の協力無しに、本当に平穏に統治できるとお思いですの? ──もしも我々の利益を損なうような真似をなさるのなら、それこそ王国の残党に武器や資金を横流しして、大規模テロを起こさせたりもできるのですが?」
「……逆に言うと、君たち裏社会と手を組むと、これまで敵国であったホワンロンも、統治がしやすくなるってわけか?」
「ご明察、そこは『持ちつ持たれつ』で、戦後処理を速やかかつ円滑に行えることを、保障いたしますわ」
「それはもちろん、王国側が勝利して、このタイヴァーンを統治する際も、御同様ってことだよな?」
「もちろんですわ。何度も申しますように、我々や華僑は、イデオロギーなぞ関係無く、金儲けさえできればいいのですから、戦乱の世であろうと、戦後の混乱期であろうと、平穏な時代であろうと、最も利益が出るように、立ち回らせていただくだけです」
「つまり、現段階において、君たちを完全に味方にできないとしても、敵に回すのは得策では無いってことか?」
「ええ、今回のタイヴァーン防衛戦で、何か御用の向きがございましたら、資金でも武器でも傭兵でも、いくらでもご用立てさせていただきますわ」
「それはホワンロン王国に対しても、同様ってわけか?」
「何せどちらが勝つかはわかりませんので、『保険』はいくら有っても困らないのですよ」
「……何か、むしろ『真の敵』は、君たちであるかのように思えてきたよ」
「あながちその御見識で間違っていないかと思いますけど、我々のような『必要悪』は、いくら潰そうとしても、けして無くなりませんからね。──論より証拠に、タイヴァーンにも、『黒社会』は存在しておりますもの」
「「──ッ」」
「まあ確かに、お堅い王政や共産主義なんかよりも、退廃的な衆愚的民主制のほうが、私たち黒社会の者は商売しやすいので、今回お誘いいただいたこと自体は、大変光栄に思っております。皆様の武運長久を心からお祈りいたしておりますので、見事ホワンロン王国を討ち滅ぼした暁には、是非御贔屓を賜れることを願っておりますわ♡」




