第2227話、わたくし、今期秋アニメファーストインプレッションですの☆(その6)
「──これは一体どういうことなんだ、『悪食○嬢』殿⁉」
その時の俺は、目の前の光景をまざまざと見つめながら、絶叫するしか無かった。
王国北部一帯を治めている、マーシャルレ○ド伯爵領。
そこで密かに『魔物の兵器化』などと言った、神をも恐れぬ研究がなされていると言う噂が有り、我がラングデ○アス王国の国王自らの勅命を受けて調査に赴いたのであるが、最大の容疑者である『悪食○嬢』こと、メルフ○エラ=マーシャルレ○ド伯爵令嬢に連れられて足を踏み入れた、『魔物食研究棟』で目にしたのは、あまりにもおぞましい光景であった。
伯爵家の屋敷から隔離された森の中にひっそりと建てられた、研究棟内に秘密裏に設けられた広大なる地下室には、所狭しと巨大な『培養槽』が並べ立てられており、そしてその中でもがくようにうごめいていたのは──
「……こんなもの、見たこと無いぞ、新種の魔物か?」
──いや、まさか⁉
「……………これってひょっとして、『人間』じゃ、無いのか?」
慌てて伯爵令嬢のほうへと振り向けば、彼女はいかにも酷薄そうな笑みを浮かべながら、唇を動かした。
──G・O・M・E・I・T・O・U。
「貴様あ⁉ 禁忌の『魔物食』だけでは無く、領民を使ってこんな非人道的研究なぞしおって、即刻タイトルを、『魔物を喰べたい、ひとでなし』に改題しろ!」
「………何をほざいているんだ、このクソ元王子風情が。すべてはおまえら『王族』の失策のせいだろうが?」
は?
「この北方一帯を見舞った『飢饉』のことを、忘れたとは言わさんぞ? 元々穀物等の育ちにくい極寒の地において、王都における馬鹿げた王侯貴族の権力争いの最中に、折悪く深刻な天候不順が重なって、王国中が飢饉に見舞われ、特に北方領土においては最も被害が多く、万単位の餓死者を出してしまったよな?」
──うッ⁉
「そこで我が母上は、禁忌の『魔物食』に手を出して、騎士団を使って大規模な魔物狩りを行い、その死骸の肉を領民に分け与えて、どうにか存亡の危機を乗り越えたってわけだ。──それに引き換え、権力争いに明け暮れていた王族の皆様は、何かしてくれましたっけ?」
──ううッ⁉
「しかしやむを得なかったとはいえ、『魔物』などと言う異常なる食材を口にして、無事で済むわけが無く、特に魔物の身の内に秘められていた、大量の『魔力』に耐性の無い者たちには、深刻な『魔力汚染』が発症し、身体の大部分が『魔物化』していったのです」
──うううッ⁉
「だが心配御無用! 何せそのためにこそ、この研究棟が有るのですからね☆」
え。
「──あ、そうか! 領主の娘であるあなたは、いまだ領民を人間に戻すことを諦めずに、日夜研究に勤しんでいるわけだな⁉」
「は? あなたどこまで馬鹿なんですか? ここまで『魔力汚染』が進行していて、人間に戻れるわけは無いでしょうが?」
「……で、でも、『ズ○リー』なら」
「『ズベ○ー』禁止」
「だったらここで、一体何の研究をやっていると言うんだよ⁉」
「──違うでしょ? あなたが今聞くべきなのは、このように見るからに『魔物の肉の影響が有った』者では無く、一見『影響の無かった』私たちには、何か『問題』が無かったかどうかでしょうが?」
「えっ、あなたを始めとして、『魔力耐性』の有る者は、皆さん全員、無事だったんだろう?」
「おい、その胴体の上に乗っかっているのは、お飾りか? もうちょっと頭を使ってから、口を開けよ?」
「……一応私めは、現国王の実弟にして、公爵家当主なんですけど?」
「元々私たち『貴族』や『騎士』等の上流階級の者は、身の内に比較的大量の『魔力』を秘めて生まれているから、新たに魔物の魔力を摂取しても、『悪影響』は無かったものの、ある意味『プラスの影響』は有ったわけよ」
「な、何だよ、魔物の魔力による、『プラスの影響』って?」
「だから何で、馬鹿でもわかることがわからないのかよ、この能無し公爵? 『プラス』と言っているんだから、文字通り『増える』んだよ」
あ。
「そう、私たち貴族は、魔物の肉を食べれば食べるほど、元から有った魔力が増えていき、今や『魔物』どころか、その上位種の『魔族』レベルの魔力を有しているのですよ」
──‼
「……『魔族』レベルって、もうそれ、『人間じゃ無い』だろう⁉」
「そうよ、こんなこと王都の上層部に知られたら、即刻お家お取り潰しになり、私たち北部地方の生き残りは、全員『処分』されるでしょうね」
「──ちょっと待て! まさにその『王都の上層部』の代表格である、王弟で公爵家当主の俺に、そんなことを明かして、どうするつもりなんだ⁉」
「そんなこと、決まっているでしょう?」
こ、こいつやっぱり、『人間食』にも興味が有って、俺のことを食べるつもりか?
──有り得る。
何せ今やこいつは、魔物や魔族同様の存在となっているんだからな。
──しかし、その伯爵令嬢が返した答えは、こちらの予想の遙か斜め上を行くものだった。
「アリステ○ード・ロジェ・ド・ガルブレ○ス公爵閣下、私と組まないか?」
「…………………………………………へ?」
「上位の王位継承権を持つあなたと、魔族レベルの魔法力を誇る騎士団や、食材用に確保している多数の魔物を擁する、この私が組めば、3日で王都を陥落できるし、その後あなたを国王に据えれば、この国は我ら二人のものとなろう」
「──どこかの魔王か、ラスボスかよ⁉」
「おおっ、馬鹿だと思ったら、意外に勘がいいな?」
「……何だと?」
「私の野望は、こんなちっぽけな国だけで済むものか。更に研究を重ねて、兵隊も配下の魔物たちも、天然の魔族や魔物よりも精強なる、『戦略魔法兵器』へと育て上げて、大陸中の人類の全生存圏はおろか、魔族領すらも併呑し、この世界そのものを支配下に置くことこそが、最終目標なのだよ☆」
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メリーさん太「──おいッ、何なんだよ、今回の【突発短編】は⁉ うちの作者は『悪食○嬢と狂○公爵』を、一体どうしたいわけなんだ⁉」
ちょい悪令嬢「……だって、アニメ版の第2話は、前回予想した通り、『悪食○嬢』さんてばドラゴンを見ても、全然食指を動かさなかったんですもの」
メリーさん太「──むしろ、伯爵令嬢がドラゴンを見て、食指を動かすほうがおかしいだろが⁉」
ちょい悪令嬢「だったらヒロインに、『魔物食』の属性なんかをつけるなって、話になりますけど?」
メリーさん太「いや実は、彼女にとっても『魔物食』は、それ程重要では無く、『真の目的』を隠すための、『ブラフ』のようなものだそうだぜ?」
ちょい悪令嬢「……何、だと?」
メリーさん太「──知っているくせにとぼけるなよ! 【突発短編】の中でも言及していただろうが⁉」
ちょい悪令嬢「ああ、実は『魔物食』そのものでは無く、それに付随する人体への影響や、関連する『古代魔法』や『魔方陣』の研究をしているとかって話ですよね」
メリーさん太「そう言うわけで、せめて次回の第3話まで見て、視聴を切るかどうかを判断すべきなのでは?」
ちょい悪令嬢「……そうですね、かのアニメ界の金字塔である、『魔法少女ま○か☆マギカ』も、第3話まで見ないと、その真価がわかりませんし」
メリーさん太「あ、この前の日曜から始まった、『ま○マギ』の新テレビヴァージョンは、第2話が最初の山場になるように、改変されているようだぜ?」
ちょい悪令嬢「──はあああああああああああ⁉ 何でそんなことに!(※ホントです)」




