第2081話、わたくし、女性にとっては名字がアイデンティティだそうだから、旦那さんやお子さんは家庭内においても、『旧姓』で呼んであげるべきだと思いますのw
「──鈴木さん、晩ご飯まだ?」
「──鈴木さん、今日の授業で使った体操着、洗っておいてよ?」
「──鈴木さん、クリーニングに出していた、私の制服はどこにあるの?」
「……鈴木君、言いたくは無いが、最近君、家事をおろそかにし過ぎじゃ無いのかね? ちゃんとそれなりの報酬は与えているのだから、もっと身を入れてやってくれよ?」
夕刻を過ぎ、我が斉藤家に子供たちや主人が帰宅した途端、専業主婦である私への、一方的な要望や不満の雨あられとなってしまった。
「──ちょっと、何よ⁉ あなたたちの妻であり母親である私に向かっての、『名字(しかも旧姓)呼び』は⁉ 確かに私は旦那の給料で生活しているから、ある意味報酬をもらって家事をしているようなものだけど、これじゃまるで『家政婦』か何かみたいじゃ無いの⁉」
そんな私の至極当然な訴えの叫びに対して、旦那や子供たちはむしろ怪訝な表情を浮かべるばかりであった。
「え、だって、母さんは超過激な、『フェミニスト』の急先鋒なんでしょ?」
「ええ、もちろんよ!」
「………認めるんだ」
「つまり私がこの平穏な日本を大混乱に陥れようとしているフェミニストだから、家族のあなたたちまで差別するつもりなの⁉」
「そこまで自覚しているんだ…………いやいや、僕たちは別に、差別するつもりなんて無いよ。だってこれは母さんが、自分で望んでいたことじゃ無いか?」
「望んでいたって、自分が家族から、『家政婦扱い』されることがか⁉」
「違うよ、だって『夫婦別姓』をゴリ押ししているフェミニストの人たちって、『姓こそがその人間のアイデンティティであり、夫婦別姓を否定する者は、女性の人格を否定しているも同然だ!』とか、『事実』とはそぐわない頭の狂ったことをわめき散らして、ちょっとでも反論しようものなら、それこそ相手の人格を否定する勢いで『言論弾圧』しようとするじゃ無いか?」
「──誰が『頭が狂っている』のよ⁉ それに『姓』を自分のアイデンティティとすることの、どこが『事実』にそぐわないと言うの⁉」
「いや、人のアイデンティティは、『姓名』のうち、『姓』よりも『名』に、基づくものだろうが?」
「──なッ⁉」
「凄えわかりやすい例えを挙げると、我が家において全員を区別するのは『何』かね? フェミニストが言うように、全員が全員を『名字呼び』したら、全員が『斉藤さん』になってしまって、まったく区別がつかないじゃないか? これを『姓』では無く『名』で呼び合うだけで、全員の区別が明確につくんだから、人間のアイデンティティと言うものは、『名』のほうに基づいており、けして『姓』では無いんだよ」
「──うぐぅッ⁉」
「と言うわけで、我々父子は別に『夫婦別姓派』でも無いから、『名前呼び』あるいは、『父さん』とか『息子よ』とか『娘よ』とか『兄さん』とか『妹よ』とか、『属性呼び』してお互いを区別し認識するけど、『夫婦別姓派』の君にはその意思を尊重し、これからは『旧姓呼び』するね。──あ、もちろんさっきまで使用していた、『母さん』呼びもやめるよ。何せ君たち『過激派フェミ』は、『おふくろ食堂』とか言った、何の問題も有り得ない呼称に対しても、『女性に役割を押しつけるなよ⁉』とか、わけのわからないいちゃもんを突きつけてきて、言論や表現の自由を『弾圧』しようとするからな」
「「「そう言うわけで、鈴木さん、さっさとご飯を作って体操服を洗って制服を用意して家事をちゃんとやってね!!!」」」
「そ、そんなあ、つまり『夫婦別姓』が実現したら、私のように家庭内で一人だけ別姓を主張する『急進派フェミ』の女は、一生家族の中で自分だけ、家政婦同然の『名字呼ばわり』されるのかよ〜(泣)」
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メリーさん太「……何だよ、これって?」
ちょい悪令嬢「ふと『嘘ばかりの夫婦別姓』と言う『新コーナー』を思いついたので、【試作版】の第1回目として創ってみました☆」
メリーさん太「『夫婦別姓』が『嘘』ばかりだと? それに『第1回目』と言うことは、続きが有るのか?」
ちょい悪令嬢「もはや言うまでも無い、『明治以前は夫婦別姓だった』と言うやつとかですね。正確には『明治以前には庶民には名字が無かった』であり、『夫婦別姓』とはまったく話が違うんですよ」
メリーさん太「あいつらそんな大嘘をついて、歴史そのものを改竄しようとしているのかよ⁉」
ちょい悪令嬢「他には、『「選択的夫婦別姓」だから、嫌ならやらなくていいので問題無い』と言う反論に対して、『でもそれって「強制的親子別姓」でしょ?』と、至極当然に指摘した途端、『──違う! むしろ「夫婦同姓」の現在こそ、子供たちを強制的に「親子同姓」にしていて間違いなんだ! しかもそのくせ女の子のほとんどが、結婚時に強制的に改姓させられるので、子供に対して人生のほとんどで自由意志に反して「強制」させてばかりいるのは、「夫婦同姓」のほうなのだ!』とか、わけのわからないことを怒鳴り散らすばかりなのですよ」
メリーさん太「えっ、えっ、ガチでまったくわけがわからないんですけど? 『子供に姓を強制している』って、一体どういうこと? 『夫婦別姓派』のやつらは、生まれたばかりの子供たちに、自分たちの姓を自分たちで決めさせるべきだとでも言いたいわけ?」
ちょい悪令嬢「いやもう、『夫婦同姓派』の意見をとにかく『言論弾圧』して、何が何でも『夫婦別姓』をゴリ押ししようとするあまり、自分で自分が何を言っているのか、わからなくなっているんじゃないですかあ?」
メリーさん太「あ、有り得る………」
ちょい悪令嬢「それで今回のテーマである、『人のアイデンティティは、『姓と名』のうちどちらに基づいているのか?』についてですが、もはや言うまでも無く、【突発短編】の中で述べたように、社会の最小単位である家庭の中でも、『姓』では無く『名』では無いと、個人を区別すらできないわけなのですよ」
メリーさん太「でもそれは、家庭内と言う特殊な事例に過ぎず、職場等の社会生活の中では、お互いに名字で呼び合い区別し合うってのが普通なんじゃ無いのか?」
ちょい悪令嬢「何で馬鹿でも反論できるのを例に挙げるんですか? それこそ社会においては、同じ名字の人なんて、ごまんといるではありませんか? あえて他人と区別をつけるためでしたら、『姓』だけでも『名』だけでも無く、『姓名』一括りで区別をつけるべきでしょう。──て言うか、社会生活においては、『姓』どころか『名』すらも、『個人のアイデンティティ』と言う意味では、あまり重要では無いのです。何せ日本人全人口の一億数千万人のうちには、同姓同名の他人がまったくいないわけではありませんしね」
メリーさん太「……それってつまり、社会生活においては、個人の『名前』自体が、意味をなさないと言うのか? そんな馬鹿な⁉」
ちょい悪令嬢「……いや、馬鹿でもわかる例を挙げましょうか? 『石○茂』と言う個人名と、『内閣総理大臣』と言う役職名との、どちらが重要で、より広く国民に知れ渡っていると思いますか?」
メリーさん太「あ」
ちょい悪令嬢「これは一般的な企業の末端サラリーマンでも同様で、特に他社に所属しているの社員の個人情報なんていちいち関知していない、取引相手の企業側の者にとっては、『山田太郎』なんて言う個人名よりも、『営業部第一課の第一係長』と言う役職名こそが重要となるのです」
メリーさん太「はい、納得しました。男女を問わずキャリアを磨いている『意識高い系』の目的は、何と言っても『出世』したり、より重要な仕事を任されたりと言った、『ポスト』であり、それに付随する『役職名』だからな。『夫婦別姓派』が言うように、キャリア志向の女性が、己の『姓』に固執する必要性なんて、むしろ皆無だよな」
ちょい悪令嬢「これはやはり『別姓派』の『錦の旗』である、『国際的な学界の場での論文発表』についても同様で、ここでも重要なのは個人名では無く、どこの大学や研究機関の、准教授か主任研究員かであって、『個人名』なんてさほど問題にされないのですよ」
メリーさん太「──言われてみれば、まったくその通りじゃ無いか⁉」
ちょい悪令嬢「まあこれで、『夫婦別姓派』の主張が『嘘だらけ』であることが、はっきりしたのですが、実は問題はそれだけでは無いのです」
メリーさん太「と言うと?」
ちょい悪令嬢「先程から何度も言っているのですが、とにかく『別姓派』のやつらときたら、『同姓派』の至極真っ当な意見に対してまったく聞く耳を持たず、あろうことか一方的に『誹謗中傷』を繰り返して、『同姓派』に悪評を立てて世論を誘導しようとしているのですよ」
メリーさん太「『誹謗中傷』、って?」
ちょい悪令嬢「某自称社会学者の先生がつい最近ほざいたことには、『夫婦別姓を否定している人は仕事ができない』だとよ。これって悪質な『ヘイト発言』以外の何物でも無く、ネット上の彼の発言は今すぐすべて削除すべきじゃ無いのですか?」
メリーさん太「──何ソノ、むしろ発言者のほうが馬鹿丸出しな、『幼稚園レベルの悪口』は⁉ 本当に学者なのかよ、そいつ!」
ちょい悪令嬢「結局あいつら『夫婦別姓派』は、何もわかっちゃいないのですよ。本気で『夫婦別姓』を成立させようとしたら、『夫婦同姓派』を無闇に攻撃することはもちろん、現在の『夫婦同姓』のシステムの欠点を、いちいちあげつらっても意味が無いのです。何度も何度も申しておりますが、一番の問題は、『同姓派』と『別姓派』の主張が完全に『平行線状態』になっており、このままでは双方が納得いく解決は不可能であり、無理に『夫婦別姓』を強行したら、国民の間に深刻な断絶を生むだけなのです。──それに対して、この最重要課題を見事に解決して、『夫婦同姓』と『夫婦別姓』を共に両立させるのを可能にしたのが、本作の作者独自の『選択的一夫多妻制度』であって、まさに『神の視点』を持ち、下々の者たちの『醜い争い』を唯一解決できる本作の作者こそが、現在の無能極まる政府与党なんかよりも、この国のリーダーにふさわしいと断言できるでしょう☆」
メリーさん太「──また最後の最後に、とんでもない『自画自賛』をぶっ込んできたな⁉」