第2075話、わたくし、憲法を堅持しつつ、現政府を打倒し、『情報革命』を起こすべきだと宣言しますの!【前編】
ちょい悪令嬢「……まあた、うちの作者が、『天啓』を受けやがりましたよ」
メリーさん太「──またかよ⁉ 今度は一体どんな『電波』なことを言い出すつもりなんだ⁉」
ちょい悪令嬢「去る『憲法記念日』を踏まえて、『日本国憲法の改正』の是非と、既に始まっている『世界戦争』と、暴力を行使しない形での現『政府の打倒』と、一人一人の日本人による『革命』についてです!」
メリーさん太「……『憲法の改正』って、うちの作者は『憲法絶対護持』派じゃ無かったのか?」
ちょい悪令嬢「そうですよ? だからこそ、現政府を打倒すると言っても、『非暴力』であり、『革命』と言っても、国民一人一人の『意識革命』を目指しているのですよ」
メリーさん太「『意識革命』だと?………………いや、それよりも、『世界戦争が既に始まっている』って、どういうことだ⁉」
ちょい悪令嬢「もはや現在の戦争は、正式に『宣戦布告』をして、直接軍隊を他国に侵攻させて、物理的な『武力行使』をする時代では無いのですよ。──例えば、まさに最近の日本における、この『新たなる戦争』の被害として、『主食である米不足』に、『ETCの不具合』に、ネット上の『株式口座の乗っ取り』等々と、無視できぬ相当なものが挙げられるでしょう」
メリーさん太「──『戦争』と言っても、『情報戦争』のことか⁉」
ちょい悪令嬢「そうですよ、もはや陳腐化した言葉ではありますが、大量の人員と大量の物量と大量の時間を必要とする『物理的な戦争』よりも、ずっとお手軽でありながらも、より『致命的な打撃』を他国に与えることができるのです。──もしも、つい先日のスペインとポルトガルの国家規模の停電を、某国が軍事力による侵攻とともに、全ヨーロッパ規模で行ったら、ほんの数週間で勝敗が決してしまうでしょう」
メリーさん太「何か西側諸国は舐め腐っているけど、今やロシアや北朝鮮や中国の『公営』ハッカー集団は、世界最高水準の技術力を誇っているしな」
ちょい悪令嬢「まあ、そのことはうちの作者ごときに言われなくても、欧米各国や、北朝鮮のメインターゲットである韓国や、中国のメインターゲットである、台湾やインドやフィリピンやベトナム等々でも、わかりきったことであり、敵の情報攻勢に対する防御態勢はもちろん、自分から攻勢に転じるべきハッキング技術の向上に勤しんでいるものと思われるところですが、問題なのはまさしく、我らが日本国なのです」
メリーさん太「え、何で?」
ちょい悪令嬢「他ならぬ『日本国憲法』と、それによる『平和ボケ』こそが、今や『泣き所』となっているのですよ」
メリーさん太「はあ?」
ちょい悪令嬢「本作では常々、絶対の平和を謳う『日本国憲法』と、実際に大戦後80年間一切の武力を放棄してきた日本国と日本人の、気高さと自制心を誇らしく讃えて、憲法の絶対的護持と、現在の平和の絶対的維持とを、全力で訴えてきました。──しかし、最近それが『誤り』では無いかと、思い始めたのです」
メリーさん太「──うおおおおおおおおおおおいッ⁉ ついに本性を現しやがったか! あんだけ『ミリオタ』で『保守的思想』の強い本作の作者が、憲法を護持する平和主義者であるはずが無かったんだ! おそらく今回のエピソードで、『再軍備宣言』でもカマして、読者の皆様を扇動するつもりだろ⁉」
ちょい悪令嬢「落ち着いてください! 確かに戦争こそは、科学技術を発展させ、軍需景気により経済力を爆上げすると言った、多大なるメリットをもたらす可能性が有りますが、そのような既に使い古された陳腐なことを言いたいわけでは無く、もっと『お手軽に戦争を始めて』、より『莫大なる成果をもたらせる』と言っているのです!」
メリーさん太「なッ⁉」
ちょい悪令嬢「とにもかくにもどんな形であれ、新たに戦争を始めようとしたところで、戦後80年も平和が続いたせいで、完全に腑抜けてしまっている日本人ですが、実は過去にも似たような時代が、その三倍の期間にわたって続いたことが有るのです」
メリーさん太「──そ、それって⁉」
ちょい悪令嬢「そう、文字通り『太平の世』である『江戸時代』です。200年以上にもわたって『鎖国政策』を続けることで、当然対外戦争なぞ一切行わず、国内においても厳格なる武力弾圧と身分制度によって、大規模な内乱を一度も起こさなかった、この空前絶後の(あくまでも支配者にとっては)真に理想的な国家体制は、それなりの人口増加と、農業や土木工事や小規模な工作技術力の発展と、一部の商人に富の増加をもたらしました。──しかしその結果、庶民一人一人の知識と向上心の進化を、完全に抑え込んでしまい、その総体としての日本の国家レベルそのものが、黒船来航時点では、欧米列強の足元にも及ばない、惨憺たる有り様となってしまったのです」
メリーさん太「──ッ」
ちょい悪令嬢「そして何と、現在まさに江戸時代同様に『太平の世』を謳歌している日本においても、個々の国民レベルで、江戸時代同様の『停滞』が見られ、国家全体の国力そのものが、どんどんと低下しているものと危惧されるのですよ」
メリーさん太「何でだよ⁉ 現在の日本は鎖国なんてしていないし、国際的な人的物的交流はもちろん、インターネット等で情報の交流も盛大に図られているんだし、江戸時代とはまったく状況が異なるだろうが⁉」
ちょい悪令嬢「いえ、日本国憲法における『一国平和主義』とは、ある意味『精神的かつ情報的鎖国』とも言えて、何よりも現在の政治体制や、国民一人一人の『情報』や『国際情勢』に対する意識が、『鎖国時代』以来ほとんど進歩していないのですよ」
メリーさん太「現在の日本が、『鎖国』しているも同然だと⁉」
ちょい悪令嬢「かつて欧州の先進的国家においては、江戸時代に相当する近世や近代でも、一定の教養や財産や権力を持つとはいえ、一応は『庶民レベル』と言える者たちが、歴史を変えるほどの発明や発見をした事例が枚挙に暇がないと言うのに、珍しくもアジアの中では知的レベルの高かった日本においては、そういったことが皆無だったのは、なぜだと思われます?」
メリーさん太「……そういやそうだな? たとえ農民レベルであろうと、林檎の実が落下するのを見て、『万有引力』に気づくやつが、一人くらいいてもおかしく無いよな」
ちょい悪令嬢「これには主に、二つの原因が有るのです」
メリーさん太「『二つ』、とは?」
ちょい悪令嬢「一つは、他ならぬ江戸幕府による、各個人はおろか、各大名の藩レベルでの、『知識』や『思想』や『科学技術』の発展に対する、徹底的な弾圧ですわね」
メリーさん太「はあ? 当時の事実上の中央政府が、国家の発展を阻害していただと? そんな馬鹿な!」
ちょい悪令嬢「メリーさんは、『鎖国制度』における、江戸幕府の『真の目的』は、何だと思いますか?」
メリーさん太「……ああ、『キリスト教』等の海外の宗教によって、日本人が『自由主義』や『民主主義』等に目覚めて、幕府の封建的支配に叛乱を起こさせないため──と言うのは、あくまでも建前で、うちの作者の言うところでは、江戸幕府による、海外の先進的知識や、莫大なる海外貿易の利益の独占だったっけ?」
ちょい悪令嬢「そうなのです、『海外との交易』は、それだけメリットが有るのです。──でもそれを、かつてのキリシタン大名みたいに、『反体制派』の大名なんかに許していたら、どうなります? 知識や経済力を格段に向上させた反抗勢力に結集でもされたのでは、倒幕の危機すら有り得るでしょう」
メリーさん太「なるほど、逆に言えば、琉球を事実上支配下に置き、半ば公然と海外交易を行っていた島津藩が、幕末に反幕府勢力の旗頭となれたのは、当然の帰結だったわけか? そりゃあ幕府も必死に、鎖国政策を行うよな」
ちょい悪令嬢「それは庶民の『知識の向上』に対しても徹底していて、最新の海外の知識──いわゆる『蘭学』に触れられるのは、幕府に認められたごく少数のエリートだけであり、一般庶民には最低限の知識や、幕府に従順になるように『儒学』を刷り込まれる以外には、教養や外国の知識を得られる機会なぞ皆無で、ニュートンやガリレオのように自発的に『自然科学』に目覚めようものなら、『危険思想』の持ち主として、『死罪』にされることすら珍しく無かったのですよ」
メリーさん太「──そのように国家レベルで、個々人の向上心を抑え込んでいたんじゃ、世界から取り残されるのも無理ないよな⁉」
(※次回に続きます)