第1981話、わたくし、作者の父親が緊急入院して非常事態ですの★
「……ちょい悪令嬢さんですね、当院救命センターの担当医です。本日緊急入院された、メリーさん太さんの症状について、ご説明させていただきます」
「あ、はい………………どうですか先生、やはりかなり『悪い』のですか?」
「正直、『悪い』ですね」
「──ッ」
「メリーさん太さんは、ずっと昔から心臓に疾患を抱えられていたみたいですが、それを全然治療せずに放置していたようですね?」
「うッ⁉」
「今回、救急車での搬送中の簡単な検査だけでも、『不整脈』の症状が顕れています。突然の高熱で昏倒なされたのも、それが原因である可能性が高いでしょう」
「えっ、『不整脈』ですか⁉ そんな私でも知っている重篤な疾患を抱えていて、大丈夫なんですか⁉」
「ですから、現状においては、『悪い』と言わざるを得ないのですよ」
「そ、それって──」
「場合によって、治療の過程において、心臓が止まる可能性すら有ります」
「──なッ⁉」
「……それで、現在において『都市伝説』のメリーさん太さんの、唯一の『身寄り』であられると言う、ちょい悪令嬢さんに、確認しておきたいことがあります」
「はい?」
「あくまでも仮定の話ですが、もしも処置中や、その後の救命センター内の病室での観察入院中に、心臓が停止した場合は、すぐさまスタッフが心臓マッサージ等を行って、原則的に蘇生する可能性が高いことには間違いありません」
「そ、そうですよね⁉ ここは病院だから、もしもの時には、最も適切な処置を、迅速に行ってもらえますよね⁉」
「『本来なら』、ですね。──しかし、メリーさん太さんは外見上は幼いものの、『都市伝説』であられるからには、実際には相当な年齢と推察されるところであり、たとえ心臓マッサージ等で生き返られても、大きな障害が残るか、そうで無くても、それから後はずっと機械に繋がれた生活をしなければならず、延命処置を行うことはむしろ、弊害が多いとも言えるのです」
「え」
「そこでご提案です、もしも心臓に重篤な異変が見られた場合は、何も処置を講じずにいて、『後の時間』については、ご親族等身近な方々をお呼びして、穏やかな『別れ』を行っていただくのは、どうでしょうか?」
「──‼」
「メリーさん太さんは『都市伝説』として、これまでの数十年間、立派に役割を果たし、人々を恐怖のどん底に陥れつつも、御自身においても孤独感に苛まれていたところ、あなたと言う『ご友人』を得ることができて、十分に悔いの無い人生を歩まれたことと思われます。もはや無理な『延命処置』を施すことで、辛いだけの余命を過ごされることなぞ無く、現在でき得るだけの治療を受けつつ安らかな日々を送られるほうが、余程望ましいのでは無いでしょうか?」
「…………」
「もちろん、今すぐご返事を頂くつもりは無く、事が事ゆえに十分お考えください。──ただし、猶予の時間はそれ程無いことは、承知なさっていてください」
☀ ◑ ☀ ◑ ☀ ◑
メリーさん太「──おいおいおい、何だよこれは、不謹慎な⁉ 何であたしが心臓の持病で、生死の狭間をさまよっていることになっているんだ⁉」
ちょい悪令嬢「……実はこれはすべて、『実話』なのですよ」
メリーさん太「はあ?」
ちょい悪令嬢「一昨日の明け方に、本作の作者の父親が突然倒れ、隣町の病院の救命センターに担ぎ込まれた際に、担当なされた医療スタッフの方から、実際に本作の作者が言われたことを、一文一句ほぼ完璧に再現したものなのです」
メリーさん太「──そ、それって⁉」
ちょい悪令嬢「そう、元々心臓に疾患を抱えていた父親にとっては、非常にやばい状況だったのですよ」
メリーさん太「そんなに悪かったのかよ⁉」
ちょい悪令嬢「その後、正確な症状を確認するために、各種検査が行われたのですが、待合室に一人残された作者は、ガチで嗚咽まじりに泣き続けたそうですよ?」
メリーさん太「──ええっ、あいつにそんな、『人間らしい心』が残っていたのか⁉」
ちょい悪令嬢「前回の入院中に『要介護5』だと判定されながらも、どうにかこうにか帰宅にこぎ着けて、本格的な『介護生活』を始めてから一ヶ月、何度も本作においても述べましたが、とにかく大変で、自分のために使える時間なぞ無くなってしまいましたが、やっとのことで軌道に乗ってきたと思った矢先に、いきなり危機的状況が訪れて、唯一の肉親と言っても過言では無い、父親との別れを突きつけられてしまうなんて、本人としては堪ったものじゃ無く、そりゃあ泣きたくもなるでしょう」
メリーさん太「……それはまあ、そうだよな」
ちょい悪令嬢「作者にとっては、これまでの介護の日々は、『……こんなキツいこと、一体いつまで続ければいいんだ?』って感じでしたが、このように急に状況が変化してしまうなんて、想像だにできなかったでしょうしね」
メリーさん太「……それこそが、『高齢者介護』と言うものかもな。まさしく『一寸先は闇』だし、文字通り『ちょっとした油断が命取り』になってしまうんだよな」
ちょい悪令嬢「うちの作者自身も、重々承知したつもりでしたが、やはりどこか甘く考えているところがあり、このところ慣れてきたことも有って、つい油断してしまったのでしょう」
メリーさん太「……うわあ、これで本当に父親が亡くなったら、悔やんでも悔やみきれないだろうな」
ちょい悪令嬢「──まさに、そのように作者が絶望のどん底に陥っている際に、『検査結果』が判明したのですが、何と『心臓疾患』では無く、『肺炎』が原因でした!」
メリーさん太「──ええっ、心臓病の悪化じゃ無かったの⁉」
ちょい悪令嬢「もちろん、高齢者にとって『肺炎は禁物』ですから、まだまだ油断はできませんが、先ほど申し渡されたように、『いつ心臓が止まってもおかしく無い』と言う状況では無いことが、判明したわけでございます!」
メリーさん太「つまり、今のところは、一安心てことか⁉ ひとまず良かったな!」
ちょい悪令嬢「はい、それを聞いた瞬間、うちの作者も腰砕けにへたり込んだほどですわ♡」
メリーさん太「……しかし、『肺炎』と言っても、けして馬鹿にはできず、むしろ老人にとっては『大敵』と言っても、過言では無いのでは?」
ちょい悪令嬢「ええ、後は本人の体力次第であり、経過良好であれば帰宅もけして不可能では無いものの、一気に病状が悪化する恐れも否定できないそうです」
メリーさん太「──駄目じゃん⁉ それって、本当に大丈夫なのか⁉」
ちょい悪令嬢「とはいえ、もはや本作の作者にできることなぞ無く、後は病院のスタッフの皆様と、天運に任せるしか有りませんわね。──と言うわけですので、この先本作の連載が滞ることも有るかと思いますが、読者の皆様におかれましては、どうぞ御了承の程、よろしくお願いいたします」
メリーさん太「……今回、異様に字数が少ないんだけど、まあ、しょうが無いか?」
ちょい悪令嬢「このエピソードを作成中の現在においては、既に入院二日目の日曜日であり、入院したての父親のために、いろいろと準備しなければならないものも有るし、現在介護に関わってくれている方々に事情を説明したりしなければなりませんからね、もはや小説をまともに書いている時間は無いのですよ」
メリーさん太「後、(病院から持ち帰った)父親の衣服や、昨日までの介護のために使った『清拭用タオル』の洗濯等も、遅滞なくやっておく必要が有るからな」
ちょい悪令嬢「そうなんですよ、今回の事態を招いたのは、すべて本作の作者の責任であり、本当は朝から布団を被って寝込んで現実逃避したいところですが、そう言うわけにもいかず、この作品を仕上げたら、家事はもちろん、病院やケアマネさんとの連絡等々、やることが山積している次第でございます☆」