第1979話、わたくし、『選択的』夫婦別姓と言うのなら、国会議員の不倫相手やその子供にも、『同姓を選択』する権利を与えるべきだと思いますの★
「──このたびついに通算四度目の、国連の『男女差別撤廃委員会』による勧告が出されたことですし、本国会において『選択的夫婦別姓』の正式な法制化を決定すべきかと思われます! そもそも『選択的』なのだから、『夫婦同姓』にしたい方はこれまで通り何も変わりませんので、反対する理由なぞ無いではありませんか!」
無事に新総理も決定し、臨時国会において今後の日本の進路を決めんと、福祉や税制や防衛等々、国家の基幹的重要課題に関して、与野党を問わず喧々がくがくの論争を繰り広げていた真っ最中に、まったく空気を読まない野党急進派のリベラリスト(つうかフェミニスト)が、優先度の非常に低い議題を突然提起してきて、議員のほぼ全員がうんざりとした表情となった。
「いや、『立憲ポリコレ党』の自演田君、君の熱意もわかるけど、今大切な議題について討論しているのだから、そう言う優先度の低いのは、後回しにしてくれないかな」
「そ、そうだ! 早く『世襲』と『不倫』の、両議題を解決しなければ!」
「……そうしないと、『国会の宦官制の導入』とか言った、むちゃくちゃな案が採用されかねないからなッ!」
「──優先度が低いって、どういうことですか! 酷い! あんたらオジサン議員たちこそ、『宦官制』が導入されて、みんな○○○を、ちょん切られてしまえばいいのにッ!」
「「「酷いのは、どっちだよッ⁉」」」
「……わからない、わからないわ! どうしてそんなに、『選択制夫婦別姓』に反対するの? 別に夫婦や親子で姓を変えたって、肉親の絆が弱まったりするわけ無いじゃない! この現代日本の平和な日常系の中で、姓が変わったくらいで家族が崩壊すると言うのなら、もし仮に異世界に転生して別々の種族になったりしたら、後は『元家族同士』で、異能バトルを繰り広げるしか無いじゃない!………………わからない、わからない、わからない、『選択的夫婦別姓』に頑なに反対している人たちの気持ちが、全然わからないわ!」
「「「──この作者、『最新トレンド』を自作に取り込むのが、早過ぎるだろ⁉」」」
「あ、私の『CV』は、早○沙織さんでお願いします☆」
「「「──おい、ヤメロ!」」」
「言っときますけど、本作の作者は昔から、望○太先生の、大ファンですからね!」
「「「それが、どうした⁉」」」
「『うちのク○スの頼りないラスボス』とか、『最強喰いのダークヒー○ー』とか、『異世界○ニス無双』とか、今でも大好きです!」
「「「全部どマイナーな作品ばかりじゃねえか⁉ ガチで大ファンだったのかよ⁉………………後、『異世界○ニス無双』の話はよせ! 某『プリンス様』作品の過激派ファンたちから、袋だたきに遭うぞ⁉」」」
「とにかく、いい加減、『選択的夫婦別姓』を認めましょうよ! 『強制的夫婦同姓』なんて言う時代遅れの制度に固執しているのは、今や日本だけなのですよ⁉ このままでは世界中の笑い物になってしまいますよ! さあ、日本の国権の最高機関として、今こそ決断いたしましょう!」
「……まったく、でかい口を叩くわね。そういったことはまず、この国に『完全なる夫婦同姓』を実現してからにしてちょうだい」
「「「「はあ?」」」」
その時突然響き渡る、神聖なる国会の場には不似合い過ぎる、幼き声音───については、もう二度目だからそれ程驚きはしなかったが、
問題は、そのセリフの意味するところであった。
「……今国会から新たに設けられたオブザーバーにして、異界の姫君アルテミス=ツクヨミ=セレルーナ嬢ですか? 今おっしゃった、『完全なる夫婦同姓』、って、むしろそれこそがもはや黴の生えた『現体制』であり、今や『選択的夫婦別姓』を導入すべき時代となっているのですよ?」
「だ・か・ら、あなたの言うその『選択的』ってのには、夫婦や親子が『同姓』になれる『選択肢』は、含まれているのかって、聞いているのよ?」
「──いやいや、何おっしゃっているのですか⁉ 現在においては、夫婦や親子が『同姓』なのは、至極当然のことであって、『選択』する必要なんて無いでしょうが⁉」
「だったら、現参議院議員のあなたの旦那さんの愛人さんや、そのお子さんは、あなたや旦那さんと『同じ姓』を、なぜ使えないんでしょうねえ?」
一瞬何を言われたかわからず、言葉を失うポリコレ女議員。
しかしそれは文字通りに『一瞬』のことに過ぎず、すぐさま我に返り、全力でまくし立てていった!
「──ちょっ、私の旦那の愛人とかその子供とか、一体何のことよ⁉」
「あら、知らなかったの? それは申し訳ない。てっきり『国会議員は不倫するもの』と言うのが、既に常識になっていて、あなたも先刻御承知かと思っていたんですけどねw」
「えっ、えっ、うちの旦那に、愛人がいるだけで無く、子供までいるの⁉」
「そう、あなたのお子さんにとっては、『実の兄弟』ってことになるわけ」
「…………くそう、あのクズ夫、帰ったら締め上げてやるッ!」
「その『実の兄弟』が、あなたのお子さんみたいに、実の父親と同じ姓を名乗ることができないでいるんだけど、どう思う?」
「どうもこうもないでしょ⁉ 愛人やその子供が、私の旦那の姓を名乗れないのは、当然じゃ無い! 所詮は日陰者なんだから!」
「……何が、『当然』で、『日陰者』よ、この薄汚い『差別主義者』がッ!」
「──なっ⁉」
「『ポリコレ』だの『ジェンダー』だのほざくやつに限って、平気で他者を差別する、『選民主義者』ばかりなのよね。あ〜あ、早くも化けの皮がはげちゃった」
「ちょっと、私のどこが、『差別主義者』だと言うのよ⁉」
「いやたった今、むちゃくちゃナチュラルに、自分と同等の存在である、旦那の愛人やその子供たちに対して、『日陰者』とか言ったじゃ無い?」
「──うッ⁉」
「それに、父親と『同姓』になれないことは、『当然』の一言で片づけて良いものじゃ無いわ! 愛人の子供だからこそ、どんなに父親の姓を名乗りたいものか! それなのにさも当たり前のようにして、自分の旦那の姓を名乗ることができるくせに、贅沢にもそれを不服として、『夫婦別姓』などと言う世迷い言をほざくなんて、あんたは自分がどんなに恵まれた状況にいるのか、わかっていないの?」
「──ううッ⁉」
「役所や金融機関で手続きをするのが面倒とか、会社員や学者としてのキャリアを損ねてしまうとか、みみっちいことで『被害者面』しているけど、あんたの言う『日陰者』である愛人やその子供たちこそ、真の『被害者』であって、『夫婦別姓』なんて、どうでもいい制度を導入する前に、このような不幸な人たちにも、『夫や父親と同姓になることを選択できる』制度を、今すぐにでも実現すべきでしょうが!」
「──うううッ⁉」
「……まさか、ここにいる『不倫大好き』で、無数の日陰者の母親やその子供たちを量産している、国会議員のオッサンたちが、反対したりはしないわよね? ──さあ今すぐ、『完全なる夫婦同姓制度』を成立させて、夫や父親と同じ姓を名乗りたくても名乗れない、不幸な母親や子供たちに、救いの手を差し伸べましょう!」




