第1977話、わたくし、日本の政治家はいっそ全員『宦官』にすべきだと思いますの★
衆議院の解散総選挙の結果、紆余曲折は有ったものの、自○党と公○党による連立政権が継続することが決定しての、初の(臨時)国会。
当然神聖なる議場は、荒れに荒れていた。
「──国民に範を示すべき国会議員ともあろう者が、国民に信を問う選挙が終わったばかりの今この時に、『不倫騒動』を起こすなんて、言語道断では⁉」
「しかも、相手がアラフォーの元グラドルって、自ら『週刊誌ネタ』にしてくれって言わんばかりじゃ無いか?」
「……もう呆れ果てて、怒る気も起こらぬわ」
「私だったら、即時に議員を辞めて、裏切った奥さんとも離婚して、そのまま出家して、二度と俗世間に戻らないけどな」
「──いやそもそも、すべては『世襲議員』こそ、諸悪の根源なのだ!」
「左様、与党自○党を中心に巣くう『おまえら』こそ、日本の国会議員の質を落とし、国民の政治への信頼をどん底にまで貶め続けているのだ」
「おまえらは、父親や祖父の地盤をただ受け継ぐだけでいいから、国民の信頼を獲得する必要も無いしな」
「そりゃあ、不倫もし放題だし、裏金パーティだって、日常茶飯事だろうよ」
「……情けない、これが日本の最高権威を民意に問うた、結果か」
「アメリカの大統領選挙とは、雲泥の差だな」
「何から何まで、文字通り『スケール感』が違う!」
「これじゃ、戦争に勝てっこないわ」
「ただし、いかにも『政治ショウ』であり過ぎる、きらいは有るがな」
「いえいえ、有権者に『夢を見せる』のも、政治家としては立派な使命ですぞ!」
「むしろ、我が国の政界に致命的に足りないのは、そこでは無かろうか」
「私だって、世襲議員や不倫議員ばかりだったら、投票する気が無くなるしな」
「アメリカみたいに、ショウ形式の『イメージ戦略』をぶちかますどころか、イメージを損なうばかりなのは、どんなに悪評が立とうが、(親の七光りで)当選する自信が有るからなのか?」
「……やっぱ、世襲議員は無いわ〜。まさしく『諸悪の根源』だわ〜」
「「「──とはいえ、国会議員の後継ぎの被選挙権を禁じることなぞ、憲法上不可能だし、下手に権力を握ったクソ雄に『不倫をするな』と言ったところで、『生物的本能の否定』レベルの無理難題だしで、打つ手が皆無なのも事実なんだけどな!!!」」」
「いえいえ、『打つ手』はちゃんと、ございますわよ?」
「「「え」」」
突然議場内に響き渡る、この場にいかにも不似合いな『幼い声音』。
すべてのオッサン(&元アイドルのオバハン)議員が振り返ったその先には、新設された『オブサーバー席』にてふんぞり返っている、漆黒のゴスロリドレスに身を包んだ、年の頃10歳ほどの絶世の美少女がいた。
月の雫のごとき銀白色の長い髪に、満月のごとき黄金色の瞳。
それはまさしく、天使か妖精そのものの、人並み外れた妖しい艶やかさであった。
「……『聖レーン転生教団』から派遣された、異世界の姫君アルテミス=ツクヨミ=セレルーナ嬢か」
「貴殿はあくまでオブザーバーの身、余計な口出しは慎んでもらおう!」
「あら、そういうわけには参りませんわ。──何せ我々『異世界』の民は、この世界でお亡くなりになった方の『受け皿』のようなものなので、この国の政局の動向いかんが、そのまま我が世界に対しても(間接的に)、大いに影響を及ぼしかねませんからね」
「──うぐぅッ⁉」
「た、確かに……」
「異世界に転生した『現代的政治センス』の持ち主が、民衆を苦しめる王制を打倒した後で『民主主義』を確立しながら、新たに指導者となった自分自身を始めとして、『世襲』や『不倫』ばかりを蔓延らせたりしたら、何のために(世襲がデフォルトの)王侯貴族社会を終わらせたのか、わかりませんからな」
「……いやそれ、日本と言うよりも、某『キタの国』なのでは?」
「──馬鹿! このまま『世襲』や『不倫』で腐り続ければ、我が国もいずれ『キタ』同様の、狂った国になりかねないってことなんだぞ⁉」
「……左様、かの国は『共産主義』的国家体制でありながら、トップが『世襲制』で、何人も夫人がいると言う、『不倫が合法化』した、前時代的な社会体制を体現しているしな」
「うむ、これは早々に、何らかの『抜本的対策』が必要だな」
「……それで、異界の姫君よ、先ほどおっしゃっていた、『打つ手』とは?」
「本当に、我が政界の腐敗の温床たる、『世襲』や『不倫』を解消することなぞ可能なのですかな?」
「簡単よ、これより国会議員に立候補できるのは、未婚の男性だけに限定し、当選と同時に『去勢』する、いわゆる『宦官』制度さえ導入すれば、万事解決よ☆」
「「「は?………………………………って、はあああああああああああ⁉」」」
「おや、そんなに驚くことかしら? これがすべての『難題』を可決する、唯一絶対の良策であり、普通に誰でも考えつきそうなものですけど?」
「──な、何が、『良策』だ⁉」
「『宦官』と言うことはその、『ナニ』をちょん切るわけだろ⁉(※内股になりながら)」
「そんなことをして、人道上許されると思うのか⁉」
「そもそも、政治家志望者が、いなくなってしまうじゃないか⁉」
「何言っているのですか? これまで一部の身体的問題の持ち主や、性転換希望者に対して、性的機能の削除や中絶等々を強制してきた、野蛮極まる劣等国家の政治家の皆様が、『自分の身』に降りかかって始めて、『人道主義』に目覚めるわけで?」
「「「──うッ⁉」」」
「むしろ、たとえ『宦官』になって、それ以降自分の子孫を残すことができなかろうが、国政を担い、この国を真に発展させていこうと言う、不倶戴天の『気概』の持ち主だけが、国会議員になるほうが、余程世のため人のためでありましょう」
「「「──ううッ⁉」」」
「何せ、すべての国会議員が『宦官』になることによって、『不倫』が原則的に不可能になるのはもちろん、子孫を残すことができなくなるので、それ以降『世襲』問題も解決して、いいことだらけではありませんか?」
「「「──うううッ⁉」」」
「しかもこれによって、(少なくとも国会の議席における)『男女問題』すらも解決できるのですよ? 国会議員の要件を『独身の男性』に限ると言うと、一見『女性差別』のようですが、当選した男性は皆『宦官』となるのであって、それはもはや『純粋なる男性』とは言えず、つまりこれからの国会議員は、『男でも女でも無い存在』のみがなる職業となり、『男女差別』と言う概念自体が当てはまらなくなるのです」
「「「──ううううッ⁉」」」」
「このように『宦官』こそは、『政治家の有るべき姿』として、真に理想的と言えるでしょう。さすがは中国五千年の叡知の結晶ですね★ さあ、日本政府は今すぐ、『宦官』制度を導入して、真にクリーンな政治を実現いたしましょう!」
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メリーさん太「……おい、これって」
ちょい悪令嬢「──『内容』については見ての通りですが、実は最も注目していただきたいのは、私が日本の国会にオブザーバーとして参加していると言う、今回新たに設けられた『設定』自体なのです!」
メリーさん太「はあ?」
ちょい悪令嬢「つまりこれによって、毎回架空の国会を舞台にして、様々な政治問題や時事問題をテーマに議論をしつつ、第三者的立場の私が何ら忖度無しに、ツッコミを入れたりすることが可能になったわけですよ☆」
メリーさん太「あ」
ちょい悪令嬢「──と言うわけで、以前お伝えしました通りに、これから【政治談義】については、私を進行役や狂言回しにしつつ、【突発短編】形式で行いたいかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたしますわ♡」