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1822/2227

第1822話、わたくし、『ユーフ○』アニメ版では省略する可能性の高い『最後のオーディション』は、こんな感じになると思いますの⁉【前編】

「──それでは次に、このオーディションの最終選考結果にして最重要の、きたる全国大会の本番における、『ソリ』の担当者の発表に移りたいかと思います。まずコントラバス、三年生、川○緑輝サファイアさん!」




「………」




「あ、あれ、川○さん?」


「………」


「返事はどうしたのですか?」


「………『みどり』、ですう」


「は、はい?」




「みどりは、『サファイア』なんかでは無く、『みどり』ですう」




「はあ? それはあくまでも『自称』や『通り名』であって、本名はあくまでも、サファイ──」




「──タ○先生、いい加減にしてください!」




「──うおっ⁉…………な、何です、二年生の月永も○む君、いきなり大声を出したりして?」




「みどり先輩はみどり先輩に、決まっているでは無いですか⁉ 最初に出会った自己紹介の時から、ずっと『みどり』先輩でしたよ⁉ それなのにいきなり『サファイア』とか言い出して、人を馬鹿にしているのですか⁉」




「えっ、何ソノ認識、他の部員の皆様は、どうなの⁉」




「……タ○先生、一体どうしたのかしら?」


「みどりちゃんのことを、『サファイア』なんて呼んだりして」


「このところ大変お疲れのようだったので、錯乱したとか?」


「それにしても、『サファイア』はえよな」


「そんな『DQNネーム』を我が子に付ける親なんて、今どきいるかよ」




 ……えー。


「そ、そうだ、黄前さんや高坂さんは、どうなのです! いくら何でもあなたたちなら、川○さんの本名が『みどり』では無く『緑輝サファイア』であることを、ちゃんと覚えておられますよね⁉」


「アハハハハ、何言っているんですか先生、みどりちゃんは最初からみどりちゃんじゃ無いですかあ?」


「……先生、私は先生のどのようなご意見でも、無条件で賛同するつもりでおりますが、」


「──それはそれで、どうなの⁉」




「ただしこの件に関しては、どうしても異議を唱えさせていただきます。川○さんも私にとっては大切な親友の一人、それをおおやけの席で『サファイア』なんてふざけた名前で呼ばれたら、黙ってはおられませんよ」




 ──なっ⁉


「あ、あのドラムメジャーが、絶対的崇拝対象のタ○先生に向かって、反旗を翻しただと⁉」


「そんな、有り得ない!」


「明日は雪でも降るの⁉(※全国大会目前の現時点は秋です)」


「それどころか、今すぐ天変地異が起こるのでは⁉」


「……でも、その気持ちもわかるよな」


「別に男装もしていない年頃の女の子に対して、いきなり『サファイア』とか呼び出すなんて、あまりにもデリカシーに欠けていて、百年の恋もいっぺんで冷めてしまうってもんだよ」


「──せめて『姫』を付けろよ、ツルツルデコ助野郎!」




 いつもの大人しさは。どこへやら。


 平然と、顧問の私へと食ってかかってくる、吹奏楽部の部員たち。




 ………これは一体、どういうことなのだ?




 言うまでも無く、川○さんの本名は、『みどり』では無く、『緑輝サファイア』だ。


 学校公式の生徒名簿にそう記されており、もしこれが誤りなら、入学早々に訂正されているはずであった。


 ……それなのに、いつの間に、この吹奏楽部において──否。


 下手すると、彼女の所属するクラスを始めとする、学校中において、


 川○『みどり』が、あたかも『本名』であるかのように、定着してしまったのだ?




 思わずといった感じで、彼女のほうに視線を向ければ、それに気がついたかのようにして、こちらへと見つめ返してきた。




 ……にやりと笑み歪む、鮮血のごとき深紅の唇。




 ──ッ、間違いない、彼女は『確信犯』で、すべては目論み通りだったんだッ!




 かつて存在した独裁的軍事大国の宣伝相の言葉に、『嘘も百回言えば真実となる』と言うのが有るが、彼女はそれを実践して見せたのだ。


 本作品においては常々お約束的に、『サファイア』と呼ばれるごとに、『みどりはサファイアでは無くみどりですう!』と、いかにもギャグっぽく返していたが、


 あれってまさしく、(かつてナ○ス政権が得意とした)『反復繰り返し効果』による、『洗脳マインドコントロール』そのものだったのだッ!




 ……なんて、恐ろしい子!




 幼く可愛らしい外見に、すっかり騙されていた。


 彼女こそは、かつての田中あ○か嬢に匹敵する『傑物』で、この吹奏楽部の『真のドン』だったのだ!


 ……うん、触らぬ神に祟り無しだ。


 彼女はもう、正式名称的にも、『みどり』君でいいや。




「……ええと、気を取り直しまして、次はトランペットのソリ担当者に行きたいと思います」







「──はい」







 ざわっ⁉







 えっ、何、高坂さん、まだ名前を呼んでもいないのに、返事したりして⁉


 ……いやまあ、今回も当然、彼女に決まりなんだけどねッ。


「そ、それでは改めまして、トランペットのソリ担当は、三年生の、高さk──




 ──落ちろッ!




 へ?




 ──落ちろッ!


 ──落ちろッ!


 ──落ちろッ!


 ──落ちろッ!


 ──落ちろッ!




 落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!落ちろ!







 ──堕ちろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!! 







 ……な、何だ、このガチで怨念じみた、『思念波』は⁉


 一体、誰が?


 ──いや、違う⁉


 全員だ!




 今まさにここに集まっている、吹奏楽部員のほぼ全員の『思念』が、物理的言葉そのままに、ソリの結果発表を行っているこの私に、ぶつけられているのだ⁉




 でもどうして、『落ちろ』だなんて……。




 ──ああ、それも当然か。




 高坂麗○、彼女はあまりにも、『敵』をつくり過ぎたのだ。




 別に彼女が悪いわけでも、間違っているわけでも、無かった。




 むしろ彼女は、『正し過ぎた』のだ。




 常に完璧であろうと努力し続けている彼女は、他人も当然努力し、その者なりの『完璧』を目指すべきであり、それをしないでいるのは、単なる『怠惰』であり、『間違っている』と決めつけているのだ。


 もちろん、誰もが完璧であることなぞ、不可能だ。


 ある程度、自分の才能その他と折り合いをつけて、それなりの成果を上げれば良しとするのが、(この私をも含めた)通常の人間としての在り方であろう。


 だがしかし、自分自身を真に完璧に高めることを成し遂げ続けている、努力家であるとともに天才である彼女には、我々凡人の気持ちなぞわかるわけが無いだろう。


 事実、彼女の真の友人であり、同じ幹部である黄前久○子嬢ですら、彼女がソリから落選するのを、心の底では望んでおり、他の部員同様に、私に『落ちろ!』と言う、邪悪なる思念をぶつけているでは無いか?


 …………いやまあ、彼女については、当然と言えば当然かw


 自分がソリから外された時、散々上から目線で諭されたんだしなww


 むしろ自分と同じ立場に『堕ちる』ことを、誰よりも願っていたりしてwww


 ──だったら、高坂さんと同じく、自他共に認める『天才』である、川○『みどり』嬢はどうであろうか?


 そう疑問をいだいた私は、本当なら二度と見たくない邪悪なる笑みを浮かべた彼女のほうへと視線を移せば、案の定彼女はこれまで以上の邪悪なる笑みをたたえながら、




『死刑執行』のハンドサインを、こちらへと向けていたのであった。




 ──えっ、みどりちゃんも『落ちろ派』なの⁉




 ……いかん、あまりに驚愕したために、つい加藤(葉○)さんのようなセリフが飛び出てしまった。


 そうか、そういうことか!


 自身が天才であると同時に、同じ天才である月永も○む君を、更に大幅に成長させた『名伯楽』である彼女は、高坂さんに対しても、更なる成長を期待しているわけかッ⁉




『挫折』と言うものを知らない天才に対する、最大の『カンフル剤』、




 それは言うまでも無く、『挫折をさせる』ことなのだッ!




 ……うん、正直言うと私自身としても、100%自分が指名されると信じ切っている高坂さんが、もしも指名されなかった時どんな顔をするか、見てみたい気もしますからねッ!(ド鬼畜メガネ)」




「今回のトランペットのソリについては、二年生の、小日向ゆm──」




「──やめてください!!!」




 今まさに、この吹奏楽部において、トップトランペッターである高坂麗○嬢に次ぐ実力者に、白羽の矢を立ててその名を呼ぼうとしたその時、当の『実力者』その人が、時ならぬ大声を上げたのであった。







(※次回に続きます)

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