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第1623話、わたくし、某アニメスタッフどもに、「おまえら1985年における最も大切なことを忘れていないか?」と、怒鳴りつけたいですの⁉【その1】

「──一体防衛省は、何をやっているのだ⁉」




 深夜の首相官邸において轟き渡る、裂帛の一喝。




 その途端一斉に肩をすくめ縮こまる、防衛大臣を始めとする防衛省の幹部たち。




 それも無理は無かった。




 現在の岸和田総理の有り様は、いつもの温厚なる『メガネ宰相』の仮面を脱ぎ捨てて、伝説の赤帽を被った残虐なる小鬼ゴブリン族の怪物モンスター、『レッドキャップ』そのままに、烈火のごとく激怒していたのだから。




「──アメリカや韓国が、すでに『キタ』の衛星打ち上げが成功し、地球周回軌道上に移行していることを公式発表アナウンスしていると言うのに、関係国において我が国だけがいまだ確証を得ていないとは、全世界的に『恥さらし』では無いか⁉」


「そ、それが、念には念を入れておりまして」


「──他の国の分析結果がすでに公表されているのに、これ以上何をする必要が有ると言うのだ⁉」


「それにホラ、これ見よがしに日本の分析力の優秀さを得意がって公表したら、敵に手の内を晒すことになり、いろいろとマズいでしょ?」


「──まずその肝心な、『公表すべき優秀さ』が有ればの話だがな⁉」


「それについてはお任せあれ! 我が防衛省分析班は、精鋭揃いでございます! 現在もとある『疑問点』に気づいて、その確認作業に追われているだけなのです!」


「……『疑問点』だと? すでに成功が確認されている衛星打ち上げに、何の疑問が有ると言うのだ?」


「今回の打ち上げの、そもそもの『理由』です!」


「『理由』って、『キタ』のことだから、『軍事目的』に決まって──」




「──遅くなって申し訳ございません! 分析結果が出ました!」




 まさにその刹那、会議室へと飛び込んでくる、防衛省の技官。


 それを受けて一斉に色めき立つ、省の重鎮の皆様。


「──おお!」


「待ちかねたぞ!」


「して、分析の結果は⁉」







「──タイガ○スです! すべては阪○タイガ○スの、38年ぶりの優勝こそが、発端でした!!!」







「「「…………は、はい?」」」







「ですから、ロケットの打ち上げ自体が、阪○タイガ○スの優勝に対する『祝砲』であり、偵察衛星の地球周回も、主に甲○園球場や道頓堀等々、タイガ○スの試合の経過や、熱狂的ファンの皆様の動向等々を、監視するためのものだったのです!」







 そんな、もはや『世迷い言』としか思えない、技官の報告に、呆気のとられ言葉を失う一同であったが、


 なぜか、『一人の人物』を除いて、他の全員の表情に、次第に『理解の色』が浮かんできたのであった。




 もちろんその例外の『一人』──すなわち、岸和田総理におかれては、あまりにも意味不明な報告に、更に怒りのボルテージを上げるばかりであった。




「──ふざけるな! どうして『キタ』が、阪○の優勝に祝砲を放ったり、球団やファンの動向を監視するために、軍事衛星を打ち上げたりするんだよ⁉」


「……え、総理はご存じないのですか?」


「知らないって、何をだよ⁉」







「現在の『キタ』の国王陛下の御母堂様が、我が国のタイガ○スの聖地である、大阪ご出身の『在日半島人』であられたことを」







「へ?」


 あまりにも予想外な台詞の登場に、一瞬言葉に詰まる首相閣下であったが、すぐさま再び烈火のごとく怒鳴り始めるのであった。




「──母親が大阪生まれであるだけで、それも()()()阪○タイガ○スの優勝()()()のために、世界中の反対を押し切って、人工衛星を打ち上げる国家元首なぞいるものか!」




 それは本来なら、いかにも御もっとな意見であった。


 しかし残念ながらこの場においては、絶対言ってはならない、『致命的な失言』であったのだ!




「……何やて?」


「もういっぺん言って見ろや、このメガネ小僧が!」


「──ど田舎者の、『赤ヘル』ファンが、大概にせえやあ!」




「なっ⁉ ────いやいや、何で皆さん、急に全員『関西弁』になるの⁉」




 そうなのである。


 単なる偶然か、それとも神のいたずらか。


 現在この会議場に集いしは、広○カ○プファンの首相を除いての全員が、関西地方出身であり、熱狂的な阪○ファンであったのだ!




「ええか、赤ヘル小僧、阪○ファンに、『キタ』も『ミナミ』もあらへん」


「もちろん、日本人とか在日とかの、国籍や人種も関係無い」


「性別、年齢、職業、門地、信条、その他諸々の枠組みを越えて、関西人であれば基本的に全員、阪○ファンなんや!」




「「「そうや、阪○タイガ○スこそは、我ら関西人にとっての、唯一絶対の『宗教』であり、『真理』なんや!!!」」」




「──ひいいいいいいッ、何だこいつら⁉ どうして国家元首である私の前で、そんなにイキり散らすことができるんだ⁉」




「そりゃあ、今年は38年ぶりの、記念すべき『阪○優勝』の年やからな」


「もはや、我々関西人にとっては、怖いもん無しや!」


「何と言っても、1985年以来の快挙やしな!」


「そりゃあ、道頓堀にも、飛び込もうってもんや!」




「……ま、まさか、『道頓堀ダイブ』と同じような理由で、『キタ』がロケットを打ち上げたと?」




「そりゃそうや! 『キタ』の王様の御母堂様といえど、『大阪の女』やからな!」


「阪○が優勝したと聞いて、祝わずにおられるかい!」


「息子にせっついて、『はよう祝砲をぶち上げんか、このボケッ!』と、怒鳴りつけている姿が目に浮かぶわい!」


「当然現在においてもご親族の方が大勢、大阪におられるはずだからな。その方たちからも連絡が行っていると思われるし」


「たぶん文字通りの『大阪のおっちゃん』たちから、『はようおまえん所のドラ息子に祝砲を上げさせんかい!』と言われれば、断る術なんてあらへんからなw」




「……こ、これが、関西の『阪○ファン』と言うものか? もしもこれが本当なら、とんだクレイジーだが、何だかわかる気がしてくるのは、なぜなんだ?」




「そりゃあ、首相も、熱狂的な『赤ヘル』ファンだからじゃ無いのか?」




「──‼」




「さっきは『田舎者』とか、つい酷いことを言ってしまったが、球団の違いは有れど、同じ『野球ファン』や、その心意気に違いはあらへん」


「今回は残念だったが、広○カ○プもそのうち、優勝したらええなあ?」


「……み、皆さん」


「ほら、涙を拭けや」


「首相がいつまでも泣いておったら、おかしいで」




「──そうだ! こうしましょう!」




「おっ、何や、いきなり立ち上がったりして?」


「この次に阪○か広○が優勝した暁には、我が国も記念に衛星を打ち上げようではありませんか⁉」


「──おお、それはええ!」


「つまり、阪○ファンと広○ファンの、永遠の友情の証しでも有るわけやな⁉」


「ええやん! 我々防衛省も全面的に、『JA○A』に協力しようや無いか!」




「それでは、阪○と広○を始めとする、すべての球団とその熱狂的ファンの今後の活躍を期して、万歳三唱で締めましょうや!」




「バンザーイ!」


「バンザーイ!」


「バンザーイ!」




 そしてその夜首相官邸の会議場では、万雷の拍手と歓声が、いつまでもいつまでも響き渡ったのであった!










 ──後日官邸より発表された、あまりにも突拍子も無い『人工衛星打ち上げ計画』は、当然のように国民の怒りを買って、現政権は武力革命により打倒されてしまったのでした☆




 めでたしめでたし♡

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