ログインと初戦闘(もんすたー)
「ということで明日から本サービスが始まりますから。公式サイトやWikiでスキル調べておいてくださいね。それに・・・」
説明を美波に求めたら、なんとネットに丸投げである。この妹大丈夫なのか?でも美波が後衛型だから前衛の方が良いか。基本的に前中後の全てをこなせるぐらい訓練はした。なんせ錬金・槍・剣・弓と全属性魔法。というありとあらゆるものを使った。それでも一也には負け越した。俺が全物を操る錬金術だとすると一也は一点突破と〇距離からの砲撃。数で攻め立てる戦法の俺とは違い一也は一撃を重視する。故に互いを刺激して成長した。
そう考えるとテンスの際に一也いたのはかなり助かった。なんせ他のテンスはいろいろと
面倒というかある程度脳筋しかいなかった。
という回想は長くなるから止めよう。美波に言われた事をしておこう。Wikiや攻略サイトを巡りいろいろと調べた。最後に告げられた事を踏まえそして初期スキルを決めた。さぁ明日から楽しもう。
「いよいよですね。ACO開始まで。」
「だからと言って朝の五時から起こす必要はないだろ」
翌日朝五時に文字どうり美波に叩き起こされた。いつもは6時に起き、そこからランニングや洗濯などをするのだがそれが大幅に狂った。前倒しだから悪い訳じゃないし朝の木漏れ日の中洗濯物を干すのはなかなか気持ちよかった。あれ?何で家事を兄妹でしているの?と聞かれると義両親は海外に赴任しているからだ。俺も仕事の事を考えるとNYにいる方が良いが都合が良いのだが・・・基本的に無理である。場所の管理が在り此処を離れる訳にはいかない。
「・・・・・」
「何か言えよ」
「・・・・それよりも先にフレンド登録しておきましょう。向こうで会うのも簡単ですし。」
「ゲーム内じゃないと出来ないんじゃないか普通。」
「ACOだからとしか言いようがありません。」
「それは説明になるのか?」
「α・βのテスター全員そう言うと思いますよ。」
「そうか・・・」
なんか釈然としない。ゲームした事無いのに。
「分かりますよ。その気持ち。私もβの時に似た感情を抱きましたから。」
「世間話も良いがそろそろサービス開始だぞ。」
開始は12:00。今は11:50.昼食は済ませている。
「そうですね。あっ!そう言えば向こうで一緒にプレイしませんか?」
「逆にそれはこっちが望む所なんだけど良いの?」
「良いですよそのぐらい。でも女の子3人ですけど」
「そんぐらいなら(基本的にその事は気にしない)。じゃあ行きますか。」
「はい。」
部屋に戻りベットに寝転ぶ。そしてACOを起動する。既に本人登録を済ませていたので其処ら辺の説明を流し読みPVを見て次に移る。直後何処かで感じた意識を引っ張られる形で失う。
気付くと無機質な黒い空間に腰を掛けていた。目の前には椅子に腰かけた女の子が居た。金髪に何処かハッとさせるほどの美しさを持つ双眸。
この子はチュートリアルなどを担当する管理AIで名前はルチル。なんでもβ時代に管理AI人気ランキング2位らしい。
それはともかく
『ようこそADVENTURE CONTINENT ONLINEへ。ここではアバターの製作・初期武器とスキル・チュートリアルを行うよ。分からない事があったらその都度聞いて良いから。じゃあまず君のACOの世界での姿アバターを作って貰うよ』
すると目の前にいつもの自分と寸分違わない姿があった。
『ちなみに姿は有る程度変えていた方が良いよ。リアルでの責任は負えないから。』
確かにストーカーとか出そう。まあ姿は異世界に居た時に偽装した姿にするのであまり考えていい。蒼髪に赤と黒のオッドアイ。それ以外には手を加えない。
あまり変えすぎると現実に戻った時に感覚が狂うらしいから。これでOKと。
『次は武器とスキルかな。これが初期スキル一覧ね。初期スキルは7つまで。ここで選ば無かったスキルはゲーム内でスキルオーブで習得できるよ』
そう差し出されたのは国語辞典くらいの大きさの本。目次がありあるスキル例えば剣だと剣の説明と映像がある。俺は目次を見てスキルを決めた。
剣・魔力・付加・錬金・鷹の目・発見・鍛冶。
魔力は基本的にアーツと呼ばれる技や魔法(俺のスキル構成の場合付加がそれに当たる)を使用する時などに使用する。
『武器スキルは剣か・・・・なら木剣だね。それと一般配布アイテムを送るね。』
インベントリの中に木剣・安物の服と靴・初心者用ポーション×3が送られた。
『じゃあ次はチュートリアルだね。』
ルチルが指パッチンをすると辺りが平原になった。
『ほいっと、そこにいる?案山子に自由に攻撃していいよ。』
その後適度にスキルの使い方や戦い方などを教わりチュートリアルをこなし終了する。
『いよいよだね。君はいろいろと面白かったよ。そしてようこそACOに。万物の勇者 リョー 僕たち世界の管理者は君の来訪を歓迎する。』
え!?
何故その名を!
気が付くと背後に教会が在り噴水がある広場に居た。噴水の淵に腰を掛け続々と出現するプレイヤーの中から俺はミィーナ(美波)を待っていた。取り敢えず此処に居れば良いと言われたからだ。暇なのでメニューを確認する。メニューにはステータス・マップ・インベントリ・スキル・フレンド・お知らせメールなどがある。ステータスをチェックする。
PN リョー LV.1
武器
初心者用 木剣
装備
駆け出しの服(上下)
駆け出しの靴
アクセサリー
なし
装備スキル7/7
剣の心得 付加の心得 魔力 鷹の目 発見 鍛冶 錬金
空きスキル 7/7
どうもSTRやVITなどの異世界に居た時のステータス表示は無いらしい。ただ公式のホームページにはステータスのパラメータの分類訳がされていた。
STR【ストレングス】(筋力)
物理攻撃力などに影響する。
VIT【バイタリティ】(耐久力)
物理防御力などに影響する。
INT【インテリジェンス】(知力)
魔法攻撃力などに影響する。
MIND【マインド】(精神力)
魔法防御力、回復魔法力などに影響する。
AGI【アジリティ】(敏捷度)
素早さ、物理攻撃回避率に影響する。
DEX【デクステリティ】(器用度)
命中率、生産成功確率などに影響する。
LUK【ラック】(幸運度)
全ての確率、主にクリティカルヒット、アイテムドロップ率に影響する。
ピロン。
メールが届いたらしい。確認すると運営からでよくある挨拶文だった。最後に何らかのスキルを予備の枠にセットしたから見ておけと言ううのに従い再び確認すると
PN リョー LV.1
武器
初心者用 木剣
装備
駆け出しの服(上下)
駆け出しの靴
アクセサリー
なし
装備スキル7/7
剣の心得 付加の心得 魔力 鷹の目 発見 鍛冶 錬金魔術
予備スキル 1/10
弓の心得
?新規スキルは一つのはずだが二つ選んでいないモノがある。
錬金魔術と弓。弓は分からなくもない。ただ錬金魔術はなんだ?俺が異世界で使っていた奴か?どうも錬金の進化ぽいけど。などと考えていると一人の小女が駆けてくる。あの姿は・・・・
「リョーさん。済みません、送れました。」
先程まで一緒にくつろいでいた美波いやこの世界ではミィーナと呼ぶべきか髪は水色目は紫という奇抜なセンスだがそれ以外は見間違いなく美波だった。
「別にいいんだが。」
「じゃあ行きますか?」
「・・・・何処に?」
「取り敢えず私の仲間が居る所に。」
「分かった」
案内されたのは弧洒落た喫茶店でミィーナの姿を見た二人の美少女が手を振ってきたのでミィーナがそれに応じて手を振る。
「初めましてリョーさん。私はアイと申します。得物は今は槍ですがβテストでは薙刀を使用しておりました。これからお願いします。」
何とも堅い挨拶だな。この子は本当にミィーナと同い年なのか?全然違うのだけど雰囲気とか立ち振る舞いとか。
「私はティア。全属性をメインに魔法使いを務めています。」
今度は簡素に必要最低限な情報しか告げなかった。商人の家の子かな?取引と言うのはいかに自分の手札を明かさないかが重要だし。
「俺はリョー。武器は剣と魔法は付加のスキルを選択した」
俺はこの二人と(ミィーナを含めれば3人)はどのくらい長く組むかは分からなかったからあまり多くは話さなかったが二人の興味は別のところにあるらしい。
「リョーさん。初ログインボーナススキルは何でしたか?」
とティアが聞いてきた。君たちのは?と聞くとβテスターは自分のスキルを引き継ぐかボーナスかを選べるらしく皆引き継ぎを選んだらしい。
「錬金魔術と弓。」
「二つもですか・・・・。」
「錬金魔術て無かったよね?」
「ええ有りませんでした。にして不遇の弓だから適当に新スキルでもやるかという感じですね。」
うん?今聞き捨てならん事が聞こえたんだが。
「弓が不遇?」
「矢が必要不可欠なうえに命中率が悪いんですよ。」
それで緊急クエストの時に矢を使い果たし木偶の坊と化して他のプレイヤーから不信をかったらしい。
「成程。というかもともと錬金も有ったんだけどな。」
「錬金魔術が錬金の上位スキルだとするとますます謎ですね。」
「どうでも良いけどな。にして案外バランス悪くないか?前衛一と後衛二は。」
「そうでもないですよ。ヘイトを魔法職で奪いあうだけなので。」
「成程。そんな戦い方もあるのか。」
テンスの勇者の場合は遠距離職が敵視認距離ぎりぎりからズドンで混乱している時に前衛職で襲うが基本だったからな。
「お陰でヘイト管理が楽でした。」
とアイが呟く。確かにヘイト・・・敵対心の事だがは基本前衛が集め攻撃を食らう。後衛職はVITやMINDなどの数値が低く簡単にHPを削られてしまうからだ。
「そろそろ行こう。」
ミィーナの言葉に
「「おう」」
と二人が応じる。ここ女の子だけのパーティーだよね。なんでこんな運動部みたいなノリなの?
「ぐぎゃあ。」
モンスターのうめき声が聞こえる。今俺が斬ったモンスターだろう。モンスターを斬る感触は異世界に居た時そのままを忠実に再現しており嫌いな人はかなり酷いだろうなと場違いな考えが浮ぶ。まあ死=現実での死では無いので多少考え事をしても何とかなるのだが。
「ファイヤ」
「ライト」
ティアとミィーナが放つ魔法が狼に襲いかかりポリゴン体になって消える。成程モンスター(以下モブと呼ぶ)を倒すとこういう風になるのか。インベントリを確認すると魔狼の牙や魔狼の皮と言ったドロップアイテムが収納されていた。とアイとティアから不思議そうな視線が注がれていた。
「良いですね。本当にゲーム初心者何ですか?」
多分動きが素人のようでは無かったのだろう。確かにバックステップの取り方や剣の使い方が常人以上になれているのは仕方ない事なんだけど。
「そうだけど。伯父が古流の武道家で一時期教わっていたんだよ」
(剣聖のじぃちゃんは古流だと言ってたし)
「そうですか?何か斬る事に逃避感が無いというか慣れているというか」
「修行していた山にイノシシやヘビが沢山居たんだよ。」
(調教師がテイムした犬に蛇だけどな。)
「それでですか。」
「データはデータと割り切っている事もあるかもしれん」
「いろいろと大物ですね。でも何かこのゲームって肉のつき方とか斬った感じとか妙に現実ぽいし。」
「そうでもないさ。それより来るぞ。」
俺も何か生々しいと思うがアイが槍でちょっと敵を掠らせヘイトを集めモンスターを引き連れてくる。
「サンンダー」
「ポイズン」
魔法職二人がモンスターに向け最初に覚える魔法を発動する。その音にまぎれモンスターに近づく。裏を取ったところで剣を取りだし構える。
「エンチャント STR AGI」
エンチャントは二重でかけるとMPが直に底を尽きる。剣を水平に振りモンスターを横薙ぎに振り払う。ノックバックとかは無いのかその場に留まる。
「MPが回復しました。下がってください。」
「OK。取り敢えず スラッシュ」
剣の心得のアーツ スラッシュを放ち後退する。即座に
「ライト」
「ボム」
「ウィンドブレス」
初級魔法が次々とモンスターの群れに吸い込まれていく。
「ティア ミィーナ避けて。」
とっさにアイが叫んだ。見ると金色のイノシシが「ゴールドボア」なるモンスターが突進している。魔法職二人めがけて。どうも先程の魔法の乱れ撃ちがヘイトを稼いだらしい。今の防御力じゃ耐えれない。そう判断した俺は昨日ミィーナから聞き半信半疑のある賭けに出る。右手を前に出す。
「リョーさん何を?」
イメージOK。発動過程はいつもどうり。
「:フレイミングスピア」
あたりに轟音が響き周囲が燃え盛る。それをティアが魔法で消してくれる。結論から言うと成功みたいだ。