第七話:瑠璃色の笑顔
「絶望があなたたちのゴールよ」
いかにもな悪漢たちの前に割り込み、わたしは告げた。
彼らは突然の乱入者に一瞬面食らっていたようだったが、目の前にいきなり少女が現れ自分たちに何か言っているようだと分かると大声で笑い出した。
「あっはっはっは! 何を言っているんだこのお嬢ちゃんは!」
長身長髪の男が言った。
よく見ると全身至るところに、蜥蜴の尻尾を散りばめたような刺青が施されていた。
「おーおー、よく見りゃ随分な別嬪じゃねえか。楽しみが増えたねぇ」
男はニヤニヤしながらわたしを舐めまわすような視線を這わせた。
「いいかい小娘、中途半端な正義感で突っ込むと痛い目見るぞ」
今度は一番後ろにいたスキンヘッドの筋肉ダルマが舌なめずりしながら言った。あまりの気色悪さに鳥肌が立った。
そこに別の男がいやいや違うとスキンヘッドに声をかけた。
「アニキィ、痛い目なんか見せたら可哀そうでしょ。ねぇ君、大丈夫だよー。痛くなんかしないから。むしろ気持ち良いくらいだよ、天国行き決定さァ!」
そう言って大声で下衆な笑い声を出した。
それにつられて、周りの悪漢たちも大声を響かせた。その姿はまるでウシガエルの大合唱のようであった。
ちらと後ろに視線をやると、メイド服の少女身体を縮めて震えていた。
それも仕方ない、こんな悪意にさらされながら今まで逃げていたのだ。わたしは拳を強く握った。
わたしは男たちを無視して振り返った。
「大丈夫。わたしが守るから」
そう言って笑いかけた。
「……はいっ」
微かに、それでも確かに笑って肯くのが分かった。
肩にかかった瑠璃色の髪が揺れた。
とても透き通っていて綺麗な笑みだった。
そこにはさきほどまであったはずの恐怖が無くなっていた。
わたしを信じてくれているのだ。
たった一人の、それも細腕の女の助けなんてあてになるかもわからない、普通はそう考えるはずなのになのに彼女は信じてくれている。
胸の奥が熱くなるのを感じた。
うん、わたしにはそれだけで十分よ。
わたしは彼女を守る。
気が付くと、さっきまで自分を満たしていた怒りも落ち着いたようだ。
再び悪漢たちの方を向きなおして告げる。
「さっきから好き勝手色々言ってくれてるけど、残念ながらあなたたちは地獄行き決定よ」
「できるもんならやってみろってんだ。こっちは5人でそっちは細身の女2人。しかも唯一戦えそうなお前は駆け出し冒険者みたいな貧弱装備じゃねぇかよ」
タトゥーの男は下品な表情で言った。
「だって仕方ないじゃない。こちとら冒険者歴10分よ」
再び下衆な合唱。
完全にこちらを舐めているのがわかる。いいわ、せいぜい吠えてなさい。
わたしはビシッと男たちに指を差し言った。
「最初に言っておくわ! わたしはかーなーり強いわよ?」
そしてミリア・エーデルムントの冒険者として最初の戦闘が幕を開けた。