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その時お父さんとお母さんは(本編裏話編)・・・その1

本日二話更新です。

◇ぼくたちの家ぞく◇


「ねえねえユウちゃん、聞いてよ~! ソラったら授業参観で作文読んだんだけど、その時ね……(以下略)……そんな訳で、うちの食料事情を明かされちゃって、もう恥ずかしくって!」


 悠は遅い夕食という名の晩酌を一人しながら、妻である愛の話を聞いていた。


 平日はあまりコミュニケーションが取れない我が子の話を聞くのは楽しい。クルクルと表情を変えながら、一生懸命に話す妻も可愛い。もう小学生の息子が二人もいると云うのに、30を過ぎたばかりの愛。学生時代以来のバイトをこなしながら家事や育児をしているのだから、悠に不平は全くない。それどころか、出張も多く、日々負担をかけているだろう妻には、とても感謝しているのだ。しっかりと支えてくれる家族の有り難みをヒシヒシと感じている中間管理職36歳なのである。


「ここの唐揚げは美味いから良いじゃん」


 カロリーオフの第三のビール片手に、本日の夕飯である唐揚げをモグモグと食べながら悠が呟くが……


「そういう問題じゃないでしょ!」


 手にしていたコーヒーの入ったマグカップをドンと置いた妻に、なにやら怒られたお父さんだった。




◇カガミよカガミ◇


 カイとソラが子供部屋に引き揚げた後も、笑いの余韻が心地好く残っているリビングでは、こんな会話があったらしい。


「なあ、カイもソラもいい子に育ってるよなあ」

「ぐすっ、ぐすっ」

「これも愛のおかげだな!」

「ふぇっ、ふぇっ」

「……どうした? 花粉症か?」




◇雪の朝◇


 ここ関東南部の沿岸部では、雪遊びが出来る程の雪が積もる事は本当に稀である。

 悠の子供時代から今までを振り返っても、数える程しかない。

 だから今日は童心に帰って我が子達と遊べて、とても嬉しかったのだ。

 そういえば小学校の時も、道路に積もった雪で、プチ雪合戦をやったっけ。大雪警報が出たら学校は休みになったし、雪の日ってだけで大喜びしたよなぁ。

 

 ひたすら楽しかった昼間の事や昔の事を思い返し、明日の事を考えない様にしている悠である。


 なぜならば、雪に慣れていない首都圏では、電車のダイヤが乱れるのは必須。下手したら、運休だって有り得る。自家用車にしたって、除雪等されていない道路を走れる様なタイヤを履いている訳でもなく、雪道を運転など殆どしたことないのだ。おまけに凍結した道路はアイスリンク状態。歩いて駅に行くだけでもツルツルと……。


 だがしかし! 大雪だからといって、会社は休みにならないのである。


「明日は始発から待つしかないだろうなぁ」


 ため息と共にこぼした台詞に、しんしんと雪が降り積もっていくかの様だった。




◇クリスマスプレゼント◇


 愛は不器用だ。『目指せ! 悠ちゃんのお嫁さん!』で、家政科に在籍していた時には本当に苦労の連続だった。

 なにせ愛が包丁を持っただけで、学友は顔色を変え、講師は黙ってピーラーを手渡すといった具合。

 無事に剥き終えた人参を見た友人など、拍手喝采したくらいなのだ。

「そこまで酷くないもん!」

 プンプンとした愛だったが、在学中一度も絆創膏が巻き付いていなかった日がないのだから、まるで説得力がない。だから愛だって自分が不器用だと自覚はしているのだ。いや、自覚処ではない。これは絶対に我が子達にも遺伝しているに違いないと、確信さえしているのである。


「カッターくらい、二人とももう使えるだろう?」

「だって~! 私の子供なんだよ?」

「大丈夫。半分は俺の血だから」

「そりゃあ悠ちゃんは器用だけど……でもぉ」

「分かった。今回は俺がやるけど、ちゃんと使い方教えるから」


 後日。器用にダンボールをくり抜く我が子達の姿に驚愕した愛であった。

 

 


◇みかん みかん みかん◇


「さてと。まだ怒ってるのかな?」


 双子達をフォローしに行ったお父さんは、お母さんのご機嫌伺いにこっそりと台所へと足を向けました。すると何やら小さくぶつぶつ言う声が聞こえてきます。


「カイで~す。ソラで~す。カガミよカガミいっきま~す!」


 そこには先程立派なお説教をしたお母さんがみかん星人と化した両手を使ってフンフンと歌いながら踊る姿が……!


「ええっと~愛?」


「!!!!!」


 ゴホッ、ゴホッ。次に聞こえてきたのは苦しそうな音。覗き込んだお父さんが目にしたものは、物凄い早業で剥かれたらしきみかんの皮と、大きく膨れ上がった愛妻のほっぺただったそうな。



その2以降は少し後にお届け予定です。

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