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第一章 プロローグ

「ウオオオオオォォォォーーーーッ!」


 騒然たる声が辺りに残響する。

 攻撃的に吼える声は漆黒の全身鎧をしている主の口から発せられていた。声の主は全身が狂戦士のようなフィルムであり、禍々しい両手を広げて異様さを際立たせている。

 複数のビルのあちこちが崩れ落ち、アスファルトの地面も至る所が埋没しているこの景色は日常とはかけ離れた程に破壊に満ちていた。


「これは打つ手なしか……」


 諦めにも似た声が若い男性から漏れる。

 男性の服は所々破れており、わずかに血で染められている。


「ちょっと、何諦めてんのよ! 私たちが諦めたら救えるものも救えないわ!」


 男性の声に、横にいる若い女性が自らを鼓舞するかのように反応する。

 女性も男性同様に身体のあちこちに傷を負っている。


「しっかし、止める手段がないのが現実じゃね?」

「悲観的なことは言わないでよ。そもそも彼を巻き込んだのはこっちなんだから、このままにしておけないわ!」

「……まあ、そうだな。責任持たなきゃな」

「とにかく時間を稼ぐしかないわ。ほら、司令も言ってたでしょ? 武装攻殻は持ち主の体力次第だって。あの状態もそう長くは持たないはずよ」


 女性は咆哮している目の前の対象を見つめながら呟く。


「その通りだ。最早、今の我々に出来ることは時間を稼ぐことだけだ」


 突如、横から聞こえてきた低い声に男性と女性が振り向く。


りきさん!」

「良かった、無事だったんですね」


 二人が男性の姿を見て安堵の声を出す。

 安堵といってもこちらの中年の男性も二人以上に傷付いており、額からは血が垂れている。


「ああ。――それより、現状彼は見境が無くなっている。被疑者をここから移送した今、下手にこちらから刺激を与えずに様子を観察し、暴れそうになったら注意を引き付けるのがベストだろう」

「…………」


 その言葉にわずかに暗い表情をする女性。

 女性の顔をちらりと見た後、若い男性が答える。


「しかし、力さん。俺達は対処時の武器がないです。銃じゃあ話しになりませんし」

「これを」


 二人にそれぞれ手榴弾を手渡す力。


「もし、こちらに向かってきたらそれを使ってくれ。その後に私は再びこれを使用する」


 そう言って力は自分の手元を見る。手元には発射式捕獲機はっしゃしきほかくきがある。


 発射式捕獲機――黒い砲身で照準器が付いており、トリガーを引くと砲弾が発射される仕組みになっている。そして、砲弾が対象に命中すると砲弾の中から強固の化学繊維で出来た網が絡み付くように出来ている。


「先程は通用しなかったが無いよりはマシだろう。残り一発だけだが……」

「――っ、力さん!」


 男性の声に力は視線を移す。

 そこにはぶらんと力なく両腕を下ろした対象がこちらを捕捉していた。

 三人は言葉を発することを封じられ、全員がある種の気配を脳裏に抱いた。


 すなわち、――「死」。


「カハァ」


 黒光りする口から一声が発せられた直後、一足飛びに三人の方へと向かってくる。


「ちぃっ! 今――」

 

 力が即座に二人に指示出しをしようとした時、信じられない光景が目に映った。

 

 こちらに向かってきていた狂戦士が空中に吹き飛んだのである。

 まるで何かに叩き上げられたように。


 そして、狂戦士が空中に上げられた衝撃で舞っている砂煙の中に狂戦士と似た姿をした灰色の強化外骨格を纏ったモノがそこにはいた。


 この目の前の出来事に、すぐには誰も反応することが出来なかった。


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