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湯船に突き飛ばされあっぷあっぷしている間に、ここまで連れてきた女の人二人が容赦なくあたしの身体を布でごしごし擦ってくれる。
いやいやそれくらい自分でやりますよ、というか力強すぎて痛いです!あたしの玉の肌が真っ赤に!
そんなあたしの抗議も言葉が通じなければ無意味。抵抗虚しくごしごしされ続け、満身創痍になって床でぜーはー息を吐いてるとぼふんと何かを叩きつけられた。
「制服と下着…何時の間に乾いて……えっと、これを着ろってこと?」
「b、ぴおprt」
言葉が通じないんじゃ敬語もタメ語も分からんだろうと敬う気ゼロで控えていた女の人の片方に尋ねれば、やっぱり通じない言語を返された。
「他に服っぽいものも用意されてないし……流石に全裸ってワケにもいかんよね」
もぞもぞと着替え始めながら横目で女の人二人を見る。
今更ながらによく観察してみると一人はスラリと背が高く、長い金髪をきゅっと頭の高い位置で束ねる―――所謂ポニーテール。目鼻立ちははっきりしていて仕事のデキる女って感じ。
対してもう一人の方は茶髪のショートカット、背丈はあたしより少し大きいぐらいだから百六十五前後かな?目がパッチリしていて活動的な印象がある。こっちの人はあたしの服装に興味があるのかチラチラ視線を向けてくるんだけど、まぁ無視。
「着替え終わったんですけど」
「b、wぽいt;:」
「あっと、逃げないんで腕掴むの止めてもらえないっすかね?痛いんですよ」
「……いt@」
ジェスチャーで伝わったのか腕を掴まれることは無くなったけど前に茶髪、後ろに金髪。真ん中にあたしの一列で歩く隊列に。確かにこれなら逃げられないかね。
そんな感じでどこぞのロールプレイングゲームの移動みたく歩き続けて着いた場所は大きい豪華な装飾のしてある扉の前。予想はある程度していたけれど、やっぱりこの先って「謁見の間」とか「王の執務室」みたいな要人が集まっちゃう場所?
「ymぉq;、んvx」
「をつq2」
「お、おじゃましまー」
部屋に入ると両脇の壁にズラリと甲冑を着た「いかにも兵隊ですよ」っていう人たちがズラリ。一番奥にはこれまた豪華な装飾をされている大きな椅子に座る、立派な髭を蓄えた初老の男性。その両脇には青年が二人。この二人は甲冑をつけてはいないけれど、両方とも帯剣はしている。座ってる人が王様で、脇の二人が王子かな?
「bm、xz」
「どうも初めまして」
王様がぼそぼそっとよく分からない言葉を発したので一応挨拶をして最敬礼。言葉は分からずとも態度に気分を良くしたのか、それまで引き締まっていた表情が少しだけ柔らかくなった気がした。流石王様、今まで無視とかしてた奴らとは違って好感度上がるわ。
続けて二、三何か言ってくるんだけれどやっぱり分からない。だから申し訳ない顔をして首を傾けていると、一番王様に近い甲冑の兵士が何やら本を差し出してきた。
「qぴ@・。。、m」
読め、と言っているらしい。
「言葉も通じないんだから文字も読めないと思うんだけど」
表紙を捲って目に飛び込んできたのは、絵だった。
どうやら子供向けの絵本なんだろう。確かにこれなら字が読めなくても絵だけで何とか内容が伝わってくる気がしなくもない。
「どれどれ」
一頁目は見たこともない記号……多分この世界の文字だろう、それとその下に剣を掲げた人間の絵。タイトルと主人公かな。
次の頁は逃げ惑う人々とそれを追う大きな…なんだこれ、怪物?
怪物が次々と村や人間を襲う描写が数頁に渡って続く。いい加減主人公出てこいよと頁をめくると所変わって石造りの部屋の真ん中に噴水が描かれ、その噴水の中に仁王立ちする人が一人。一頁目に描いてあった人と似てるところを見ると、いよいよ主人公のお出ましか。
その後の流れはあたし達の世界でもよくあるお話と同じ。主人公が王様と出会い、怪物退治を頼まれる。旅の途中に知り合った仲間たちと力を合わせ、最後は怪物の親玉を倒して平和な世界で幸せに暮らしましたとさ、とっぴんぱらりのぷう。




