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おーかみさんとあたし  作者: あさかわ
2:ログハウスと新生活
13/15

-13-

 

「じゃじゃーん!今日のお昼は特製サンドイッチでーす。あ、おーかみさんはこっちの干し肉ね」


 生まれて初めて生物を解体した日からもうすぐ一週間。

 慣れというものは恐ろしいもので、最初はあんなに解体に戸惑い悪戦苦闘していたあたしだけれど、いつの間か狼のサポート無しでもサクサク解体できるようになり。更には豚のようなアレだけではなく鳥のようなヤツや馬のようなヤツ、森に来てから見たやけに後ろ足の長い兎のようなヤツ等の解体もそつなくこなせるようになっていた。

 流石に狩りは出来なくて、狼が仕留めてきたヤツをなんだけれど。


「ずっと肉類だけじゃあ飽きちゃうから魚介類もたまには欲しいんだけれど、ここら辺にそれらしい水辺ってある?」


 釣りならなんとかなるんじゃないかと干し肉を頬張る狼に尋ねてみる。すると肉は口に銜えたまま尻尾を一振り。

 ここで暮らし始めて二日ぐらい経った頃だったか。あたしの質問に対して尻尾一振りは肯定、二振りは否定を示しているのだと気が付いたのは。これだけ意思疎通が出来ているのに、直球でその事について尋ねると必ず無視される。無視する理由は分からないけど、なんか腹が立つ。


「ここから遠い?―――そんなでもないのか。ご飯食べ終わったら案内してくれる?うん、ありがとう。ところでおーかみさん、意思疎通出来てるよね」


 安定の無視である。


「なんでソコだけ無視するかなぁ……。まぁいいや、食べ終わったら声掛けてね。あたしちょっと準備があるから」


 手早くサンドイッチを完食し物置に向かう。最初こそログハウスの持ち主に遠慮して道具を使うにしろ何にしろ小さな罪悪感が湧いたものだけれど……だから慣れって恐ろしい。最近だと何かあったら狼の所為にしてしまおうとか、生きる為に仕方なくだとか考えている自分がいる。

 家主が帰ってくる前に森から出ようと考えた事もあった。狼は森の地理について詳しい様だし、頼んで町の近くかあるいは街道まで案内してもらおうと。しかしその頼みの綱であった狼が、あたしが森から出ることを拒んでいる。


「おーかみさん、あたし森から出たいんだけど外まで案内してくれないかな」

「!」


 声は出さなかったものの、両目が、完治した左目も大きく見開かれた。


「え。何その反応――――――ちょっとまっ、いたいいたい!!甘噛みだからってその歯で噛まれたら足首痛いからちょっとやめてって!」


 がふがふと噛まれた痛みがその時のことを思い返すと一緒に復活してくるような気になる。

 よくよく考えてみれば狼があたしを森の外に出したくない理由も浮かんでくるものだった。この森には動物が、この世界で言うところの怪物が暮らしている。あたしが外に出ることによってこの森の事が人間にバレる、又はあたしがバラす可能性があるのだ。それなら狼があたしの世話をしている意味も見えてくる。

 つまり、あたしは狼に監視されているのだ。その証拠に森から出たいと言ったその日から狼は基本的にあたしの傍を離れない。


「おっコレなんか良さそうだね」


 物置を物色しているとお目当てのものが目に入った。ロープと針金である。


「あとは適当にそこら辺で良い感じの木の棒を入手すれば」


 手製釣竿の完成だ。


「オフッ」

「食べ終わった?こっちも準備できたから行こうか」


 ロープと針金とそれからパンの切れ端を籠に入れ、狼と一緒に家を出た。

 

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