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拝啓、どこか遠くに居る両親と弟へ。
一家の長子ことおねーちゃんは今現在、
「gjかlを@]jtl;.gh]p!!」
「をpついwtkm:あ;lm?」
追われています。
遡ること五日前。その日も吹奏楽部のキッツい練習を終え、フルート片手に家路へと急いでた時の事。
「来年はあたし達も受験か就職か。どっちか、なんて就職一択ですけどね」
「え?コンは進学組なんじゃないの?」
「家の財政的に進学は無理だろうねぇ。部活も我儘言ってやらせてもらってるし、これと言って目指してる職業もないから弟の学費の為にも働いた方が良いかなぁと」
貧しくはない、けれども決して裕福とも言えない我が家。あたしと違ってドコソコ大学に進学してナンチャラ社に就職するんだ!と意気込んでいる弟の為にも早めにお金を稼ぐに越したことはない。
「偉いね」
「偉かねーよ?ほら、自分の自由にできるお金が増えればそれだけゲームとか漫画とかも買えるし」
「そっちが本音か」
「バレた」
そんな他愛ない話をしつつ友人と二股道で別れる。
<先日行方不明となった………、依然として行方が……………>
道路沿いの店から聞こえてくるニュースを右から左に受け流しながら、もうすぐ家だと曲がり角を曲がった瞬間―――
あたしは、落ちた。
そこから先は地獄とまではいかないものの、最悪の連続だった。
「んbせ@あいr@あz」
「bんzrqrてょこはsがへyjh」
「をうtんbslkんbs、」
浮遊感、そして落下する感覚。「あれま、マンホールにでも落ちゃったか」なんて考えてた自分を殴りたい。
ばっしゃんっと大きな水しぶきの音に驚いて目を開ければ、薄暗い石造りの狭っ苦しい部屋に成人男性の大群。あたしはそんな部屋の中央で何故だかびしょ濡れになって尻もちついた状態。
「え……なに?ここ、どこっ!」
そんなあたしの問いかけを無視して顔を見合わせ何事か会話をする成人男性達。よくよく観察してみると黒髪は勿論、金髪や茶髪。赤かったり…緑?え、なにコス会場?
とにかく、地味目から派手な色まで文字通り色々な髪の人達であった。
「あの、すみません!」
「hヵhjうぇp」
「なっなに!?」
金髪のゆったりとした服…よくロールプレイングゲームに出てくる神官のような恰好をした男の人が近づいてきて、あたしの腕を掴み無理矢理立たせる。
おいちょっと待って力強すぎ!神官(仮)ってもっとこう、力弱いんじゃないの?後衛キャラでしょ!?
「bんくぁ9」
「kじょ」
ぐいぐい引っ張られて部屋を出た先には女の人が二人。
神官(仮)が二人に何か言い、言われた二人はこくりと頷いた。と思ったら今度は両腕を二人に掴まれてまた歩かされる。気分はさながらあの有名な写真の宇宙人だ。
「あのー」
「……………」
「ここ、どこですか」
「……………」
「Where is this?」
「……………」
英語でも駄目か。
見た目外人っぽいから英語かなと思ったけど。そもそも話してる言葉がもう英語っぽくなかったもんね、うん知ってた。けど英語って万国共通語的な所もあるし、もしかしたらなんて。
そんな風に意思の疎通が図れずがっかりしている間に着いた場所はどうやらお風呂場。
いい加減ぐっしょりな制服にうんざりしていたし、お風呂に入れるなら万々歳だ。
さて、ここで一つ疑問に思うであろう。
帰宅途中に言葉も分からない見知らぬ土地に来た。普通だったら夢だろうとか、あの浮遊感と落下の感覚は交通事故か何かに遭って、自分は現在進行形で所謂臨死体験をしているんだと思うのではないかと。
確かに、最初はそう思った。
けれどこの、服の張り付く嫌な感覚。神官(仮)に掴まれた腕の痛さ。そして何より、肌からひしひしと伝わる周りの不穏な空気。
いくらあたしがゲームや漫画に夢中な夢見がち女子高生であって、最近異世界トリップものばかり読んでるからといって―――この感じが自分の空想だとはとても思えない。
「うっ、わあ!!!!」
身ぐるみ剥がされて湯船に突き飛ばされる。
おいおいちょっと待てよ。
ごぼごぼと溺れかけながら、これがもし夢や臨死体験で見るものだとしたら現実のあたしはどんな状態なのか、考えようとして止めた。




