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はい、美奈です。
死んだと思ったら魔王になったようです。
今私は、オオカミさんの背中に乗ってお城に向かっています。
あっ、オオカミではなくて、魔狼族のゲルフさんという名前だそうです。
シーツを羽織っているだけなので、片手で抑えて、片手で毛をつかんでいるので、ちょっと申し訳ないです。
「痛くない?」
「大丈夫です。陛下に心配していただけて光栄です」
大丈夫だそうです。でもちょっとだけ注意して持つようにします。
私が目を覚ました所は、ゲルフさんの群れのテリトリーだそうで、私の放出した魔力を感知して迎えに来たそうです。
どうして私が魔王なのか聞いたら、魔王の魔力は特殊で魔族なら間違えることはありえないそうです。
でもいきなり魔王といわれたのに、何故私は納得したのでしょうか?
あの時、びっくりはしましたが、すぐに納得してしまったのです。普通ならありえませんよね?
やっぱり私は、あの時死んでしまって、前世の記憶を持ったまま転生でもしたのでしょうか?
不思議ですね?
でもちょっと、わくわくしています。私は病気のせいで本ばかり読んでいました。特に好きだったのはライトノベルの異世界ファンタジーです。こんな私でも異世界に召喚されて、勇者として活躍してみたいとか思ったものです。
魔王なのでちょっと違いますけどね。
でも、魔王なのです。よく考えていました。勇者が成長する前に、魔王が出て行って戦えば絶対勝てるのになあって。
それとか、別に魔界で平和に暮らしていけるなら、それでもいいですよね?
色々と想像していたら、お城が見えてきました。
綺麗です。すっごく綺麗です。
黒い半透明の宝石のようなお城です。遠くなのでよくわかりませんが、お城の周りの城壁見たいな物は半分くらい奥が見えています。でもお城本体は中が見えないみたいです。
どうなっているんでしょう。不思議ですね?
そんなことを考えていたら、もうお城が目の前です。自動車より早いような気がします。
あまり揺れなかったので、そんなに早くないと思っていたんですけどね。
やっぱり、魔力というからには、何か魔法のようなもので移動したんでしょうかね。
よくイメージする、謁見の間みたいな所に着きました。
奥の中央に黒曜石見たいな物で出来た、王様が座るような凝った彫刻がされた大きな椅子があります。その椅子の正面に4人、膝を付いて頭を下げています。
あ、隅の方に別のオオカミさん・・・じゃなくて魔狼さんがいます。連絡をすると言って先に行った人だと思います。
黒曜石の椅子の所まで着ました。
「どうぞお座りください」
オオカミさんが言います。(もう魔狼とか言いにくいからオオカミさんでいいよね?)
すわ・・・んしょ
座り・・・んしょ
大きすぎて届きません。
「座れない」
困りました。
「失礼いたします」
4人のうちの女の人が手伝ってくれました。
「ありがとう」
お礼はきちんと言いましたよ?
それにしてもこの椅子、座面が広すぎて上手く座れません。仕方がないので、座面の上で横座りをしました。
上手く座るまで待っていたのでしょう。
私から見ると右側にいた、さっき座るのを手伝ってくれた、女の人がしゃべり始めました。
「長らく空位でありました魔王陛下のご生誕、誠におめでとうございます。」
かしこまった言い方をされて、ちょっとむずがゆい感じです。
「続きまして、自己紹介させていただきます。四魔大公筆頭を勤めております。水魔大公
シャーナン・スルネイトでございます」
すぐに右から二番目のほっそりとした男の人が続いて言い始めた。
「次席を務めております。人魔大公、イルファータ・キュバスです。よろしくお願いします」
「私は三席の鳥魔大公サーナリア・ランフェルスともうします」
「末席を勤めています。獣魔大公ガリアス・ガンドルフです。よろしくおねがいします」
次々に紹介されて、ちょっと混乱気味です。覚えられるかな?
「えっと、シャーナン、イル、サーナ、ガリアって呼んでいいかな?」
覚えにくいから、呼びやすいように言ってみた。
「陛下の呼びやすい様、ご自由になさってください」
シャーナンが答えてくれた。うん、よかった。自己紹介してくれたんだから、こっちの名前だって教えてあげないとね。
「私は、ミナフィリスです。これからよろしくね」
え?いやいや!
私は『波野美奈』って言おうとしましたよ?『みなふぃりす』って何ですか?
指摘をいただきましたので誤字修正しました