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魔王様の溜息  作者: 黒筆猫
第6章 人間との交渉
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「つまり、昔帰した人間の内の誰かが、ここには魔晶石が沢山あると言ったってこと?」


「どうも、そうらしいです」


 こっそり監視のため付けて置いた、魔族の報告によるとそういう話らしいです。『知らない』と言うのは嘘だったようですね。


 まあ、情報源を簡単に教えるはずも無いですね。そう考えると、あの特使のおじさんは思ったより有能だったみたいです。


「そう言えば、口止めとかしてなかったもんね」


「隠す必要があるとも、思っていませんでしたから・・・申し訳ありません」


 シャーナンも、人間の世界で魔晶石がどれだけ価値のある物か、よく知らなかったので対策をしなかった事を、いまさらですが反省しているようです。


「私も考えてなかったし、仕方ないでしょう。アヴァが上手く上限を決めてくれて、本当に助かったわ」


 魔晶石は年100個を売ることに決まりました。


「そうですね。このままミナ様が人間の国と交易等の交流を深めていくのなら、あの者は重要になって来ますでしょう。始めは補佐官などと言われて必要なのかと思っていましたが、これもミナ様の先見の明と言った所でしょうか?」


 そんな、シャーナンの言い方に、『ほめ殺しだよ』なんて、内心照れてしまいました。


 そうそう、特使のおじさんは交渉相手が人間のアヴァだと知って、現金なもので翌日には体調も戻り交渉を開始しました。


 こんな美幼女を見れるなんて、幸せじゃないのか? そんなに魔王が怖いのかっ!


 ・・・ゴホン


 交渉ばかりでは息も詰まるので、チーズの加工風景とかも見学してもらいました。


 牛乳が原料だと知って驚いていたそうです。元々牛乳を飲む文化も無かったので、抵抗があるかと思ったのですが、食品としてバターやチーズが出回っていたせいか、意外にすんなりと受け入れたようです。


 牛乳に入れているレンネットの正体を知りたがっていましたが、それを教えてしまうと売り物が減ってしまうので、秘密にしておきました。まさか子牛の胃液とは思わないでしょう。


 交渉の方は、やっぱり留学受け入れについてが問題になりました。人間だけなら問題無いそうですが、魔族の受け入れは中々承諾し難いと言うことです。


 クリームチーズも交易品に加えれば、何とか本国に持ち帰って承諾させると言うことになったのですが、日持ちしないのにどうするのか聞いた所。シーリン国には特殊な輸送箱があり、それに入れている間は食品の腐敗が極端に遅くなるそうです。


 海洋輸送の発展の為に、国を挙げて開発したそうです。


 お金が絡むと凄いのは、この世界でも同じみたいですね。


 そんなこんなで、もうすぐ特使のみなさんは帰ることになりました。









 と言うことで、最後の謁見です。


「・・・このように過分のご配慮、誠にありがとうございます」


 お土産に、バターとチーズ、それに魔晶石を10個ほど上げたんです。


「魔王陛下のご要望につきましては、必ず伝え、ご希望に沿うよう尽力いたします」


 留学受け入れの事です。


 それにしても特使のおじさんはどんなスイッチが入ると、あの噛みまくりになるのか不思議ですね。


 おっといけません、一声くらいは掛けないといけませんね。


「期待してるわ」


「ひゃ、ひゃ、ひゃいっ、おまかしぇくだしゃい」


 え?


 また噛みましたよ。まさか私が声を掛けたからとか?


 まさか・・・ねえ?


「帰路の無事を願っています」


「お、お、おきぢゅかい、みゃ、みゃことに、ありゅがとうごじゃいましゅぅぅぅ」


 やっぱりそうなのかな?


「ひゅぅぅぅぅ・・・」


 あ・・・・・・気絶した。


 従者の2人が運んで退場していきました。


 謁見の間全体に微妙な空気が流れています。どうしようこれ。


「エスメンタ特使殿は連日の交渉で、少々お疲れだったようです。帰路に着けば体調も戻ると思われます。誠に失礼しました」


 ナイスフォロー! アルフレッドさんっ!


「そうね、特使殿にもよろしく言っておいて」


「はっ! ありがとうございます」


 そのまま退場していくのを見守りました。


 う~ん、やっぱり私のせいなのかな?


「あの特使のおじさん、大丈夫なのかな?」


 不安になって、ついこぼしてしまいました。


「交渉の席では、中々のお方でした。おそらく大丈夫でしょう」


 アヴァが、にこやかに答えてくれました。そういうなら、多分大丈夫なんでしょう。


「おそらくですが、ミナ様の魔力に過敏に反応しているのかもしれません」


 イルがそんなことを言ってきました。どう言う事なんでしょう?


「ミナ様は抑えていても、発言する時など微弱ではありますが、魔力がもれてしまっています。人間の中には放出された魔力に過敏に反応し、体調を崩してしまう者もおりますので、あの者もその類ではないかと思われます」


 さすが淫魔です。人間にそう言う事には詳しいですね。


「護衛の者の対応も慣れているようでしたから、似たようなことが何度かあったのかもしれませんね」


 サーナがそう付け加えました。


 アルフレッドさんの対応は、そう言われれば慣れた感じでしたね。


 それはそれとして、こちらも色々とやって置く事があります。


「こちらも、港と街道の整備を準備しないとね」


 交渉による条件の一つです。魔王城から、今回船が来た海岸までを馬車が通れるように整備して、そこに港を作ることになりました。


 留学受け入れを、承諾するかどうか次第ですが、準備だけはして置く事にします。


 街道に面した地域に住む魔族に話を通して、港にする場所と海域に住む魔族には、環境の変化に対応できない場合、別の場所に移動してもらわないといけません。


 住み慣れた土地や海域から移動させないといけないと思うと気が重いです。


「はぁ」

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