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魔王様の溜息  作者: 黒筆猫
第6章 人間との交渉
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 ちょっとしたアクシデントも合った謁見が終わって、これから書状の内容に付いて会議をします。


 その前に、魔晶石について詳しく説明しましょう。魔王領以外でも魔晶石が取れる所は少ないですが有りました。


 精霊の多くいる土地では、その放出される魔力によって、魔力溜りと呼ばれる所が出来る事があります。その近くに、水晶が有ると吸収されて魔晶石になるそうです。


 昔は比較的に、そういう所が多く発生して、魔晶石が取れていたそうですが、最近では掘り尽くしたのか、ほとんど見つからないそうです。


 そんな感じで、魔晶石は少しづつ値上がりしていたそうです。と言う事をアヴァが説明してくれました。


 「んーと、つまり、どこからか魔王領では魔晶石が沢山手に入ることを聞きつけて取引のために来たってことかな?」


「そう言う事でしょうな」


 ガリアが答えてくれましたが、魔大公の中で一番、人間に係っていないからか、どうでもいいと思っているのが判る態度です。


「人間が欲しいというなら、売ってやればいいのではないですか?」


 買出しの送迎の手配とよくしているせいか、サーナは売ってお金が手に入るならそれでいいと思っているみたいです。


「売るといっても、先代陛下の物は既に無いのだぞ。わざわざ人間の国に売ってやるためだけに、ミナ様のお手を煩わせるのか?」


 イルは売ることより、私の手間が気にかかるって事かな。


 この辺りで、私の意見も言っておきましょう。


「私は、売ることで問題が起きないなら売ってもいいと思ってるかな」


 多分、私が売るといえば魔大公のみんなは賛成してくれると思う。あとはアヴァが何か問題点を見つけて何か言うくらいかな?


 そんなことを考えながら、みんなの事を見回してみた。


「ミナ様、少々問題があります」


 シャーナンが険しい顔つきで言ってきました。


「どういうこと?」


「魔晶石の人間達の用途に問題があります」


 ん?


 人間たちの用途ってなんだったかな?


「魔力の補給と魔法具に使ったり・・・あとなんだっけ?」


 サーナが何かに気づいて声を上げました。


「魔力の増幅の事かっ?!」


 シャーナンが頷いて、それを肯定します。


「そうです。今のように、必要分だけ売る程度ならいいかもしれませんが、人間との戦争になった場合、魔晶石が相手の手元に多量にあれば、こちらの被害が増えることになります。今回の交渉がその為だとは考えられませんが、その辺りの事も考慮に入れるべきではないでしょうか?」


 魔力の増幅ですか・・・もちろん私が人間に戦争をしかける事は有り得ませんが、もし、もしですよ、人間から攻撃されれば住処を守るために戦うしかありません。その時、人間に大量の魔晶石があれば、弱い魔族は倒されてしまいます。いえ、強い者だって犠牲が増えてしまいます。


 取引の交渉が来て、考えていた計画があったんですが、諦めるしか無いみたいですね。


「ミナ様は、売りたがっていた様に見えますが、何か目的があったのでしょうか?」


 アヴァが、私が悩んでいるのをみて、聞いてきました。


「あー・・・うん、ちょっとね」


 そうは言っても、売れないんじゃ交渉にもならないもんね。


「その目的を、伺ってもよろしいでしょうか?」


 わざわざ聞いてどうするのかな?


 まあ、秘密にする様な事でもないからいっか。


「販売する代わりに、シーリン国の学校へ、留学受け入れをしてもらおうと思ったのよ」


「またっ人間のためですかっ!」


 ガリアがちょっと怒っています。人間があまり好きじゃないですからね。


「人間だけじゃなくて、魔族でも行けたらと思ってたんだけどね」


「人間の国の学校へ魔族がですかっ?!」


 イルが驚いてますね。


 ちがった、声に出してないけど、みんなが驚いているみたいです。


「人間を学校へ行かせるのはかまいませんが、何故、わざわざ、我ら魔族の者まで人間の学校などへ、行かねばならんのです?」


 従弟に人間の奥さんがいるからかな?


 サーナは人間を学校に行かせる事は賛成みたいですね。


「私はするつもりも無いけど、前までの魔王って、何代も続けて人間に攻撃をしてきたわけじゃない?」


 このことは常識なので、みんなが頷く。


「しかも、私が生まれるまでは、人間を食料として誘拐とかもしてて、魔族は人間の敵って言うのが常識になっちゃってる。私はね、それをどうにかして変えたいの。だから、人間の学校に行ってもらって、魔族だってそんなに怖くないって言うのを、知ってもらいたいの。ここで生活してる人間たちだって、始めは行く所がないからとどまったけど、今ならお金だって貯まってるし結婚だってしてるんだから、出て行こうと思えば出来るのにしないのは、魔族はそんなに怖くないって事を判ったからじゃない?」


 みんな私の話に、耳を傾けて考えているみたい。


「私の魔晶石は今の所7年分くらい有って、このまま行けば100年でも200年でも、魔王がいなくても困らない分は貯まっていく。ようするに、次の魔王が産まれるまで、人間を誘拐したり、魔族同士で争ったりしなくても生活できると思ってる。だから後は、私が寿命で死んじゃうまでに、魔族とは戦争しなくてもいいって理解してもらえれば、万々歳ってことなのよ」


 後は、みんなが私の考えを理解する時間を取るために、ゆっくりとお茶を飲みます。


「ミナ様!! そんなにも我等の事を考えてくださっていたのですねっ!!」


「わきゃっ」


 ガリアが泣きながら、私に抱きついてきた。いきなりだったので、飲んでいたお茶が手から離れてしまった。


 あ、ガリアにかかっちゃった。


 気にならないみたいだからいいのかな?


それがしはっ! 某はそんなミナ様のお考えも知らずにっ!!」


「ちょっとガリア、判ったっ、判ったから!」


 うわっ、せっかくファサナが用意してくれた服が、ガリアの涙で凄いことになっちゃってます。


「まてガリア!そんなうらやま怪しからん事を、いつまで続けるっ!」


「そうだ、日ごろ我慢しているのに、抜け駆けするとは何事だっ!」


「絶対わざとであろう?」


 残りの魔大公達が引き剥がすまで、大変な目にあいました。その時の台詞は聞かなかった事にしておきましょう。


 真面目に聞くと、私の方が疲れることになりそうですからね。


「はぁ」

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