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「じゃあ、基本的な教育はマリシアに任せるわ」
魔力放出で落ち着いたアヴァに言ってみたわけですよ。
「承りました」
「そう言えば役人になれるぐらいの学校って、どれくらいの水準で入れるの?」
「そうですね・・・」
簡単に言えば、読み書きと簡単な計算を教わる『基礎学校』が2年、役所やギルド(冒険者や商人とか色々有るらしいです)で書類が作れてある程度の礼儀を教わる『上等学校』が3年、様々な専門科の(魔法とか商法とか騎士科なんていうのも)有る『大学』が4年、となっているそうです。上等学校は基礎が終っていて学費が払えるなら、いつでも誰でも入れるそうで、大学は、上等の終了と各科の試験に通って、学費が払えれば入れるそうです。アヴァは大学を出たそうで、実は結構いい所のお坊ちゃんだったんじゃないの?
「せめて、上等学校は欲しいかな、何かいい案ない?」
「さすがに無いですね」
「それもそっか」
まずは基礎教育で、それ以上の事は考えに留めて置くしかないかな?
後は託児所を・・・
「託児所は人魚族と人間にやらせようと思うのよ」
「人間だけではなく、人魚族ですか。理由を伺っても?」
「えっとね、私付きの侍女でマーシュアがいるじゃない?」
「はあ、あの方が人魚族で?」
「あれ、知らなかった? まあそうなのよ。それで聞いたことがあるんだけど、人魚族って、よく子守を頼まれるのよ。それでね、人間だけじゃなくって、魔族の子供も一緒に預かって、それぞれ慣れさせたいって思うのよ。始めは人間型の魔族だけでもいいからね」
「さすがに・・・危険ではないのですか?」
やっぱりそう思うますよね。
「その為の人魚族よ」
「その為?」
「人魚族の歌には、鎮静と眠りの効果があるの。それで、子供の魔族なら簡単に抑えられるわ」
「ミナ様意外なら・・・ですか?」
それはまあ、魔王ね。でも、落ち着くからも暴発はしなくなるんですよ。
「始めは、ちょっと強い魔法使い程度の魔族の子供だけにいして、人間の女性もいれば、母親も安心すると思うのよね」
「そうですね、ミナ様は人間の女性に人気が高いですしね」
それ初耳なんですけどっ!?
「人気って、どう言う事?」
「それはですね・・・『あぁ~ん、魔王様みたいな娘が欲しい~』と言う者や、『いつまでも子供なんでしょっ 一生着せ替えが出来るじゃないっ!』と言ったり、『抱き上げてもらう仕草に、もう・・・うっ、はにゃが』等、とても人気なのですよ」
「それって・・・・・・まあいいわ」
どう考えても、着せ替え人形遊びの延長にしか思えないんですが・・・それに、このタイミングでこんな話をするのは、さっき脅した仕返しとしか考えられません。ちょっとへこみますが、こう言う所が気に入ってるので仕方ないですね。
でも、覚えてなさいよ?
「所で、伺いたい事があるのですが、よろしいですか?」
何だろ? 珍しくアヴァが真面目な表情で聞いてきました。
「いいわよ」
「ミナ様は・・その・・」
さらに珍しい。言いよどむなんて初めてかもしれない。しばらく聞こうかどうか悩んだみたいだけど、意を決したのかしゃべり始めました。
「ミナ様は魔王で在るのに、何故人間にここまでしてくださるのですか? しかも教育までして頂ける」
あー、その話ですか。色々と有るんですけどね。まあ、言ってもいいでしょうかね。
「ん~とね、領地に生きる者は全て、私にとっては領民なのよ。それには、魔族とか人間とか関係ないの。それでね、魔族については、私っていう魔王が居て魔力が供給されれば、後は自分で何でも出来るの。だけど、ここに残りたいって言った人間にはね、家や食料が必要だけど・・・元はと言えば誘拐されてきて何も持って無いのに、それを揃える為の力がや道具が有る筈もないでしょ?」
「ええ、そうですね」
ちょっと、ひと息入れたかったので、お茶を飲んでいると、思い出すようにアヴァが返事をした。
「お金で解決って言うのもどうかと思うけど、お詫びとしての魔晶石はあげたわ。でも、それが無くなった後に、無償で何かを貰っているだけじゃ駄目でしょ? 魔族は私が居なかった時でも、この城を管理して、生まれれば迎えに来て、何も言ってないのに侍女を付けて、服を用意してくれた。じゃあ人間はどうしようかなって思って。私の趣味と言うか我がままもあって、美味しいものを食べたかったから、料理をしてもらったり、食料を作ってもらって、お給金をはらってるの。でもね、産まれた子供達は、ここでの生活を自分で選んだってわけじゃない。だから、別に出て行ってもいいと思っていて、その出て行く時の選択肢を出来るだけ増やしてあげたいから、学校が欲しいの」
なんだか、こんな事を言うのは初めてなので、ちょっと恥ずかしいかも。なんて考えていたら、アヴぁ椅子から立ち上がり私の前に来て、片ひざを付き頭を下げていきなり切り出した。
「ここに来たのは状況に流されてでした・・・しかし、ミナフィリス様に仕える事が出来たのは、人生2番目の幸運だと思います。ありがとうございます」
照れて頬がちょっと赤くなったのを隠すために、またお茶を飲んでから答えます。
「1番目は奥さん?」
顔を上げ、微笑みながら言ってくれましたとさ。
「もちろんです」