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魔王様の溜息  作者: 黒筆猫
第4章 魔王様の食事情
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 やって来ました、初人間の国。


 案内役にアヴァンドを、護衛と人目に付かない魔法の為にガリアを伴ってやって来たのは、大陸の北にある建築と鍛冶の国、アルミナ王国の田舎領主のお膝元の町です。今回ここで、御領主様の嫡男の成人祝いの為に例のクルー・ウィックが雇われたと言う情報の元、スカウトに来たんですよ。


 宿泊場所は、領主の館の一室らしいですが、魔大公の魔法にかかれば進入など容易い事なのです。しかも私が一緒なので、ガリアのやる気は倍増のさらに倍!!


 祝いの最終日の夜、厨房の明かりが消えるまで待ちます。アヴァンドの言うには、黒髪や黒い瞳は、忌み色として人間の国では迫害を受けるそうなので、目立たないようにする為だそうです。代々の魔王が黒髪で黒い瞳だからだそうです。う~ん、魔王は嫌われ者ですね。


 寝静まった頃、アヴァンドの先導で館の中をのんびり歩いていきます。


 ガリアはどちらかと言うと、戦闘に関する魔法の方が得意で、こういう隠密めいた事はイルやシャーナンの方が得意なんですが、さすがは魔大公と言う所でしょうか? 貴族の館ともなれば、お抱えの魔法使いが1人はいるはずという話なのですが、まったく気づかれません。


 一つのドアの前でアヴァンドが立ち止まりました。ここがクルー・ウィックの部屋という事なんでしょうか?


「ここ?」


「はい、こちらです」


 やっぱりここのようです。使用人の部屋らしく、内側に簡単なかんぬきが有るだけ(ドアに小さな板見たいなのがあってそれを倒すようなやつです)らしいので、ガリアに開けて貰います。


 中に入り、ガリアが部屋に結界を張ったようです。これは、人払いと遮音の結界かな?


 私は、まだまだ魔法を使うのは苦手ですが、人がどんな魔法を使っているのかは、一度見たものなら判る様になって来ました。


 さて、クルー・ウィックは寝ています。どうやって起こしましょう?


「簡単に起こす方法ってないかな?」


「お任せを・・・」


 ガリアが答えながら、クルー・ウィックの方に手を伸ばして、何か魔法を使っているようです。これは精神に働きかける魔法でしょうか? 始めてみるので詳しいことは判りませんでしたが、まあ危険な物ではないようです。


「う・・・」


 クルー・ウィックが起きようとしています。部屋が暗いままだったので、蝋燭に魔法で火を点けます。これくらいは出来る様になったんですよ。エヘンッ


 クルー・ウィックは、強制的に起こされたせいか、まだボーっとしているみたいです。


 私は、ガリアに降ろしてもらって、クルー・ウィックの寝台のそばまで行き、スカートの中間辺りを両手でつまんで、軽く持ち上げながら少し腰を下げて、頭を傾けて挨拶をします。


「始めまして、クルー・ウィック。私は魔王のミナフィリスと言います」


 まだ目が覚めていないのでしょうか? クルー・ウィックは寝台で上体を起こしたまま身じろぎもしません。


「クルー・ウィックさん、起きてますか?」


 反応がないので、もう一度声を掛けて見ました。


「えーっと、魔王?」


 クルー・ウィックさんは、確かめるように私を指差しながら聞いてきました。


「はい、魔王のミナフィリスです」


「後ろのあんちゃんじゃなくて?」


 あんちゃんとはガリアの事でしょうか?


「いえ、私が魔王です」


 やっぱり、こんな幼女が魔王だとは思えないみたいです。


 まだ目覚めきっていないのでしょうか? 私を指差したまま『魔王?』と、何度も言っています。


「魔王だってっ!!」


 ひときわ大きな声でそう言って、寝台の隅の壁に張り付いてしまいました。


「おっ、俺っ、俺なんて食っても美味くないぞ! そっ、それに、俺にはまだまだ美味い飯を作るための研究だってあるんだっ!!」


「いえ食べませんよ」


「嘘だっ! そうやってだまして連れて行こうとしてるんだろっ!?」


 魔王の悪名は凄いですね。落ち着いてもらえないと話も出来ません、どうしましょう?


「ふん、貴様のような魔力の少ない人間など、陛下がわざわざいらして連れて行く価値などない」


 落ち着かないクルー・ウィックにイラついちゃったのか、ガリアが脅すような事を言う。


 クルー・ウィックは、私とガリアを交互に見ている。


「じゃあ、何だってんだ?」


 あれ? 逆にお落ち着いた?


「あなた、新しい料理が作りたいんでしょ?」


「それが、なんだってんだ?」


「魔王領の食材や、人間の国だと考え付かない方法って興味ない?」


「魔王領の食材か・・・」


 意外と好感触?


「興味がないとは言わねえが、そうだったら何だってんだ?」


 これは、チャンス!


「研究ついでに、私の料理長にならない?」


「俺は、どんなもん出すか判んねえぞ?」


 ここです! 乳製品はバリエーションが広いですからね。上手く誘導すれば大丈夫なはずです。


「始めに私の指定した食材を使ってくれれば、多少は我慢するわ」


「その食材ってなんだ?」


「引き受けてくれれば、現地で説明するわ」


 クルー・ウィックは顎に手をあて、考え込んでいるみたい。


 いきなりOKが貰えるとも思っていないので、今日はこれくらいでいいかな?


「考えておいて頂戴、そのうちまた来るわ」


 そう言って、ガリアに抱き上げて貰おうと、振り返って腕を上げた時。


「待ってくれ」


 何だろう? 質問でもあるのかな?


「もし・・・もし承諾したとしてだ・・・時々は実家に帰ったり、手紙を出したりは出来るのか?」


「別に、魔族の事を喋らなければかまわないわ」


「じゃあ、給金はどれくらいだ?」


 実は料理人の給金なんて、よく知らないのだけど、どうしようかな? とりあえずごまかすしかないかな。


「実際の能力と交渉次第かしら?」


「そうか・・・」


 クルー・ウィックは、また、顎に手を当てて考え込んでしまいました。


「認めれば、金貨2枚でも出すか?」


 金貨2枚ですか・・・私の食べたい物が作れるなら、出してもいいかもしれません。


「そうね、私が食べたい物を作る事ができたら、出してもいいわ」


「秘密の食材ってやつか?」


「ええ、普通の人間だと多分無理なのよ」


「そうか・・・はっはっはっ・・・そうかっ! おもしれえなぁ。魔王様の料理長か。世界が広いったって、そんなのは早々いねえよなぁ」


 なんでしょう、急にテンションが変わりました。この人は大丈夫なんでしょうか?


「よっしゃ!連れっててくれ!」


 は?


「えーと、準備とかいいの?」


「俺の仕事道具ならここにあらぁ」


「いきなりここから消えて大丈夫なの?」


「こんな、つまんねぇ仕事なんざぁどうでもいいんだよっ!」


 唖然としてしまいましたが、来ると言っているのなら文句もありません。ガリアに、クルー・ウィックがいきなり消えても、不振がられない洋に出来るか聞いてみたら、出来るそうなので、その魔法を掛けてもらってから、城に帰る事にしました。


 これで、美味しいデザートが食べられそうです。


 ブイッ

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