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魔王様の溜息  作者: 黒筆猫
第4章 魔王様の食事情
14/26

 デザートの作れそうな料理人の情報を集める為、食材買出しの時にアヴァンドも付いて行く様になって1ヶ月たちました。


 今日は何人かの候補が見つかったので、資料をまとめて報告を聞くことになっていて、執務室で待っている所です。その中から、私が選んで直接スカウトする事になります。一人では移動できないので、この所かまってもらえないと言って落ち込んでいる。ガリアを連れて行くことにしました。


 シャーナンは宰相のうような感じでいつも傍についていて、サーナは食料の買出しの時のバーフェルドを呼ぶのに頼むし、イルは人間達の管理を任せているので様子を見に行く時に連れて行ってもらっています。


 ガリアだけ仕事が無かったんですよね。


シャーナンが近づいて来てますね。多分アヴァンドも一緒だと思います。


 え?気配とか判るはずじゃないか?


 どうも私は魔力を感じているみたいで、普通の人間くらいの魔力だと、小さすぎて判らないみたいなんですよね。シャーナンの話では、慣れれば小さい魔力でも判る様になるみたいです。


 アヴァンドは物怖じしないし、元役人だし、城に勤めてもらうのも有りかも知れません。それに、魔晶石以外で人間に売れる物がないか、調べる人が欲しいんですよね。何時かは私も死んじゃうし、その後の事を考えるとあまり売りすぎて、足りなくなるかもしれませんからね。


 そんなことを考えていると、ノックの音が聞こえました。


「ミナ様、シャーナンです。アヴァンドを連れて来ました」


「はい、入って」 


「「失礼します」」


 2人が入ってきました。シャーナンは机をグルッとまわって私の横に立ちます。アヴァンドは何故か、頬をほんのり赤く染めながら私の正面に立ちました。


「ミ、ミナ様、報告書を、お、お持ちしました」


 どうしたんでしょう?しゃべり方が、何時ものアヴァンドらしくありません。ここに来るまでに何かあったのでしょうか?気になったので、横にいるシャーナンを見上げます。


 アヴァンドの方を見、男の人ならだれでも赤面しそうな表情をしながら、舌で唇を潤わせるように動かしています。とても艶っぽいです。


 私が見ているのに気が付いて、慌てて表情を戻しながら誤魔化す様に軽く、コホンッと咳をしてしていました。


 視線を正面のアヴァンドに戻すと、緊張が解けたのか長く息を吐いていました。


 それにしても、淫魔のイルは平気なのに、シャーナンで緊張するのは何故なんでしょうか?


 シャーナンがどんな事をしたのか、とても気になりますがデザートの魅力の前にはかないません。手出し無用と言ってありますから命にかかわることはないでしょう。


 ・・・多分




 アヴァンドも落ち着いたようなので、詳しく話を聞きましょう。


「それで、候補は何人くらいいるの?」


「3人です」


 書類を前に出しながら、アヴァンドが答えました。


「多いのか、少ないのか、微妙な数字ね」


「甘い食べ物が得意で、変人などと言われている人物を探しましたからね。3人なら多いと言っていいと思いますよ」


 落ち着いたのかな?いつのも口調が戻ってきました。


 そんなことを思いながら、出された書類に目を通していきます。


 候補の名前と年齢、得意な料理、噂話程度ですが流しになった理由などが書かれていました。その中で少し気になる事があります。乳製品が見当たりません。果物の砂糖煮とか、果汁を使ったシャーベット、マカロンのような物は有りましたが間に挟むのは果肉ペーストやチョコレートみたいです。


「牛のちちは料理に使わないの?」


「人間が家畜の乳をですか?」


 何故そんなものを、飲まなければならないのか判らない。と言う表情をしながら言いました。


 この世界では、牛乳を飲む習慣が無いようです。考えてみれば、牛はいるのに牛乳を使った料理は出ていませんでしたね。そうなると、スカウトする料理人も考えないといけません。


 う~ん


 この人がよさそうです。


 クルー・ウィックという男の人です。流しになった理由が私の計画に合いそうです。美味しい物を作る為に、蛇肉を使ってみたり、トカゲの肉を使ってみたり、ネズミの肉を使ったりした為に解雇されたと書いてあります。この人なら、乳製品の簡単な製法を教えれば、飛び付いて来そうです。


 絞りたての牛乳なら、生クリームは自然に分離したはずですし、生クリームがあればバターは簡単に作れたはずです。チーズは実験して見ないと判りませんけど、何か代わりになるものがあるはずです。前の世界ならレンネットと言う、牛などの偶蹄目の第4胃袋の胃液だったと思います。簡単なクリームチーズなら、レモンの果汁でもいいんですよ。


 そうすれば、チーズケーキやクリームパフェ、それにアイスクリームなんかも食べられます。夢が膨らみます。


 そんな事を想像しているうちに・・・


「あの、ミナ様?」


 シャーナンが心配そうに、私の目の前に出した手を振りながら声をかけてきました。


「え?なに?」


「魔力と魅了の力が漏れています。このままではアヴァンドが危険ですよ」


 妄そ・・・じゃなくて、想像に夢中で魔力を抑えるのを忘れていたらしいです。慌てて魔力を抑えながら、アヴァンドに謝ろうとしたんですが、部屋のどこにも見当たりません。


「アヴァンドならば、部屋から逃がしました」


 魔力が漏れ出した私を見た、シャーナンが上手く逃がしたそうです。


「アヴァンド、もう大丈夫です。入りなさい」


 シャーナンがそう声を掛けると、ドアを小さく開けて顔を覗かせて部屋の中を確認してから、アヴァンドが入ってきた。


 さっきまでいた机の前まで来て、姿勢を正すのを待ってから謝ります。


「不注意だったわ、ごめんね」


「いえ、スルネイト魔大公閣下のご配慮で事なきを得ましたので問題ありません」


 何と言うか、さっきまで魅了されるか私の魔力に当てられて恐慌をきたすかという状況だったのに、もう普段の彼に戻っています。こういうのを、胆力があると言うのでしょうか?


 そんなことを考えながら、決めたことを彼に告げます。


「決めたわ、このクルー・ウィックと言う男をスカウトしようと思うの。1人付けるから、今何処にいるのか調べて頂戴」


「承りました」


「シャーナン」


「はい」


「移動の早くて人間になれる人が欲しいから、サーナに人選をさせておいて」


「畏まりました」




 後は、クルーという人が、受けてくれるかが一番の問題なんですけどね。

誤字修正:4/27

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