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魔王様の溜息  作者: 黒筆猫
第3章 人間返還計画
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 なんだかこの世界に来てから驚いてばっかりです。


 急に残りたいと言った20代くらいの女の人(エダという名前だそうです)ですが、私に直接話すのは中々大変なようだったので、サーナと話をさせました。


 それによると、エダさんは元々は子供の頃に旅商人だった両親と、馬車で移動している所を盗賊に襲われ、両親は抵抗して死んでしまって、本人は奴隷商人に売るために捕まえられていたのを、お腹がすいて人間でも食べてしまおうと出て来ていた魔族(バーフェルドという名前で、実はサーナの従弟なんだって)が、盗賊を見つけて襲ったんだそうです。エダさんはまだ小さいので、育ててから食べようと連れて帰ったんですが、育てている内に、なんかお互いに情が沸いて来てしまって、なんて言うか、その、あれですよ、そうアレ、いたしちゃう関係なってしまったそうです。


 二人は仲良く暮らしていたんですが、私が人間を帰すって言ったものだから、サーナの従弟が逆らうと示しがつかないからと言われて、泣く泣く来たんだそうです。来て見ると、こう子供の見た目だし、お金の事でシャーナンと話をしている姿が、バーフェルドって人とだぶって見えたそうで、この人なら話を聞いてくれるかもって思ったけど、人間の方を向いている時の私はかなりの迫力があるそうで、シャーナンに抱き上げてもらう時、視線がずれてやっと言えたそうです。


 シャーナンが言うには、私はまだまだ魔力を抑え切れていないそうで、こぼれ出る魔力に普通の人は威圧感を感じるのかもしれないと言う事でした。


 ちょっと悪いことをしちゃったかな?


 とりあえず、バーフェルドさんを呼んで、話を聞いてから決めたいと思います。




 そんなことを考えているうちに、シャーナンが戻ってきました。


 実は、人間達の生活費で、売れるものを持って来て説明してくれると言う事なって、今、執務室でシャーナンが戻るのを待っていました。


「失礼します」


「入って」


 シャーナンが何か右手に持って入ってきました。赤い宝石のような物を何粒か持っているようです。ルビーみたいな物かな?


「こちらになります」


 そういって、机の上に10粒くらいのそれを置きました。


「これって、何なの?」


 そう言いながらも、何だかどこかで見たような感じがします。どこだったかなあ・・・


「あっ!」


 判りましたっ!ここに初めて来た時にきになった、あの赤い水晶ですっ!!


 私はそう思って、後ろの窓にある水晶を見るために振り返ります。


「あれ?」


 おかしいです。初めてみた時は赤い水晶だったそれが・・・




 鮮やかな赤い石になっていました。


「これって、水晶じゃなかった?」


「はい、こちらは元はそれと同じ物です」


 どう言う事でしょう?


「魔王様がお隠れになってから次の魔王様が御生まれになる迄、時間がかかることはお話しましたね?」


「最低でも10年だったよね?」


 シャーナンがよく出来ました、と言う感じで微笑みました。


「これは魔晶石と言って、次代の魔王様が御生まれになる迄、謁見の間に置いて魔王様の代わりに魔力を放出するのです。そして、放出しきりますと、砕けてこのような抜け殻になります」


「抜け殻?」


「はい、今お持ちしたのは先代様の物で、多少の魔力は残っていますが謁見の間に置いても、役に立ちませんのでゴミ同然の物です」


「魔力が無くなったのなら、私が又、入れればいいんじゃないかな?」


「一度魔力を入れた魔晶石は、同じ物しか受け付けなくなるのです」


「じゃあ、後ろにあるのは、新しい魔晶石って事なの?」


「はい、ですがもうミナ様の魔力を吸い切れなくなっていますので、後で外して保管しておきます。いくら1日の大半をここで過していたとはいえ、こんなに早く吸い切れなくなるとは素晴しいですわ」


「ふーん、そうなんだ。新しいのはいつ来るの?」


「いえ、2日もあればえて来ます」


「生えるのっ!?」


「はい」






 はっ!


 びっくりし過ぎて、思考が止まっていたようです。落ち着きましょう。


 すぅ~はぁ~すぅ~はぁ~




 何とか落ち着きました。


 でも待ってください。それがいったいどれ位の価値があるんでしょうか?私は机に向き直って聞いてみることにします。


「それで、この抜け殻がどれくらいになるの?」


「実はドワーフを雇っていまして、その報酬が月にこれ一つで十分だと言っています」


「この抜け殻一つでっ!?と言うか、ドワーフを雇って何を作ってるのっ!?」


 今日はびっくりのオンパレードです。抜け殻一つで一月分の報酬になる事も、わざわざドワーフを雇って、何を作っているのかっていうのも、驚きっぱなしです。


「はい、これ一つです。それとドワーフですが、最近はミナ様の着ておられる物を中心に作らせています」


 ドワーフすごっ!


 まあ、初めの日のゴスロリ以外は、妙に体にぴったりでオーダーメイドみたいだとは思ってたけど、本当にそうだとは思わなかったですよ。


 うーっ、驚いてばかりでは話がすすみません。宿代も考えて、1年分20個くらいでいいかな?


「一人20個として、数は集まるかな?」


 シャーナンがちょっと悩んでいるようです。


「足りない?」


「いえ、おそらく足りるとは思います・・・」


 ん?足りるなら何を悩んでいるんでしょう。


「実は私以外の魔大公もドワーフを雇っていまして、今後の報酬が足りなくなるかもしれません」


「んー、そっかー」


 どうしましょう?人間を帰すのは私の我がままです。そのせいで周りの人が困るのはちょっと問題があります。


 魔晶石の代わりになる物ですがなにか・・・







 はっ!


 私の魔力を吸った、後ろにあるこの石ですっ!


「この新しい魔晶石を、砕いちゃ駄目なのかな?」


 シャーナンがちょっと驚いているようです。


「ミナ様のですかっ?」


「うん、そう」


「そうですね・・・」


 考え込んでいるようです。もしもの為の物を、こんなことに使っちゃ駄目なのかな?


「そうですね、このペースで魔晶石が埋まるなら、少々は砕いても問題ないでしょう」


 やりました。これで問題解決です。


「それじゃあ、まずは今ある魔晶石を集めて、それで足りなかったら砕いちゃってね」


「かしこまりました」


 後は、今日中にバーフェルドさんが到着する予定なので、話をすればおっけーです。


 中々大変でした。


  ふぅ~

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