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断罪会回避しようとしたら、ヒロインに胃袋をつかまれました

作者: ソルト饅頭
掲載日:2026/06/13

『 ヒロインざまぁを回避するつもりが、お店を持つことになりました。』に出てきたキャロリーヌ視点の話です

アイデア出し、名前案、構成相談、推敲相談にAIを使用。本文は自身で執筆・編集しています。

キャロリーヌ・フォン・マクトナルスは転生者である。


彼女の前世の名前は鈴木民子。


しがないネット小説読みであった。



だが、ある日、気づいてしまう。


自身が悪役令嬢だという事に。



キャロリーヌは昨今の悪役令嬢としては珍しく、本当に悪役令嬢だった。


本来のキャロリーヌは特に可哀そうな境遇ではなかった。


むしろ、両親から甘やかされており、王太子の婚約者は自分だと当然に思っているような女性で、ヒロインと王太子の中を邪魔したり、ヒロインをいじめたり、ヒロインを殺そうとしたり、悪役としてやりたい放題であった。



そんなキャロリーヌに民子は転生していたのだ。



(このまま行けば断罪じゃない!!)



そう思った瞬間に幼きキャロリーヌは態度を改める。


わがままをぶつけたメイド達には優しくするようにしたり、両親からの甘やかしをたしなめたり、身が入らなかった勉強をちゃんとやったりなのだ。


そして、婚約者たる王太子レオンハルト・フォンドゥ・フォルテーグには


「殿下!」


「なに?」


「もし、好きな人ができたら、はっきり言ってください!円満に婚約破棄をしますから!!」


「えっ。あぁ、うん」


その言葉にキャロリーヌは内心でガッツポーズをした。


よし、これで断罪フラグが折れた。と。


一方でレオンハルトは困っていた。

キャロリーヌとの婚約は恋愛感情ではなく、政略である。


つまり、政治だ。


国内をより安定させるための婚約である。


そのために本来は同盟や同盟強化などで他国の王族と婚約を結ぶところを国内貴族であるマクトナルス公爵家を国王が選んだのだ。



(一応、将来的に王太子妃として外交と儀礼ができるなら、まだいいけれど)



ある意味で政治を見る目がないキャロリーヌにレオンハルトは内心で溜息を吐いた。



  

レオンハルトの内心を知らず、キャロリーヌは悪役令嬢ものでよくやることをする。


農業知識で領地改革をしたり、魔道コンロや前世の世界にあった便利グッズをこの世界の材料で再現したりなどだ。


その間に宰相の息子ユリウスと騎士団長の息子であるギルハルトと交友を結び、キャロリーヌは悪役令嬢どころか王太子に相応しい令嬢と評されるようになる。



だが、キャロリーヌにも弱点があった。



それは--料理ができないことだ。



前世では主に食べる専門であり、料理をさせたら友達からお前は料理をするなと言われるレベルの料理の腕だった。



(食べたい)


白米


味噌汁


焼き魚


お出汁がきいた卵焼き



でも、食べられない。


材料がないから。



そして、この国の食文化は前世の世界で言えばヨーロッパ風の食事や日本で言えば洋食がメインだから。 



パンにスープに香辛料がかかった肉料理、サラダなどだ。


つまり、和食などはない。


米はあったが、用途はパエリアやライスコロッケに使われるものばかり。


お菓子も和菓子はなく、ケーキやタルトなどの洋菓子ばかり。


レオンハルトとのお茶会にでる料理も主にケーキや茶菓子、サンドイッチばかりである。



しかも、日本では当たり前にあった醤油や味噌も思いかえせば作り方がわからない。


そう、あれらにはあれらならではの専門知識がいるのだ。


醤油は大豆からの加工や熟成がいる。


味噌は大豆と米麴と塩でできるとされているが、やはり、加工の工程はいる。


料理ができないキャロリーヌでは作れないし、人にやらせるにしても主にヨーロッパの文化圏に近い人々があれらの独特の匂いが許容できるかさえ分からない。



そして、キャロリーヌの家にいる料理人達は正規の料理人であり、日々の食事や晩餐、茶会の料理を考えるなど忙しいから、突き合わせるわけにもいかなかった。



しかも、ネット小説の悪役令嬢ものと違い、厨房の人々はキャロリーヌを厨房に入れなかった。


それもそうだ。厨房とは衛生管理がかなり大切な場所であり、料理が自分達の仕事だからだ。


入ろうとすれば、どこからか執事が現れて、遠ざける。



キャロリーヌの立場は公爵令嬢かつ王太子の婚約者。



料理スキルなど本来いらないものなのだ。


必要なのは晩餐などに使う目利きぐらいだろう。



だから、ネット小説あるあるの和食知識で無双というのはできなかった。




「食べたい」


「食べたい!!」


「和食が食べたいぃぃぃぃ!!」


何度、キャロリーヌの中にある民子が暴れただろうか。


料理人が作る料理はおいしい。


王宮が出してくれるケーキもおいしい。



だが、キャロリーヌの心の中には民子がいる。


日本人としての自分が和食を求めているのだ。


和食を食べたくて何度涙を流しただろう。


涙を流すキャロリーヌを見た使用人達が王太子との仲に悩んでいると誤解しているのは違う話である。



やがて、和食が食べられないまま、キャロリーヌは学園へと入る。


一年後に入ってくるヒロインことリオネットに怯え、生徒会に入ったり、学友になる女子生徒を作ったりして孤立しないようにたちまわる。



「もうすぐ、新しい一年生が入りますわね」


「えぇ、そうですわね」


学友となったルイーズと会話しながら、内心でいつ破滅フラグが来るかとビクビクしていた。




断罪フラグにビクビクしていたが、ヒロインたるリオネットは本来はいるはずの魔法科ではなく、なぜか原作にはなかったはずの家政科に入っていたのだ。


(あれ?あれれ?)



なんで?なんで?と思い続けていたが、ヒロインことリオネットはこちらに接触してこなかった。


しばらくすると




「あれ?リュカ」


「あぁ、キャロリーヌか」


「なにを食べているの?」



実は親戚であるリュカがなにかを食べていた。

普段は他人からものを受け取らないはずのリュカがだ。



「家政科の女子が作ったやつ」



リュカが見せたのはごつごつとした菓子を見せる。



「これは?」


「確か、女子はサーターアンダギーって言っていた」


(サーターアンダギー!?)


それは前世の世界で沖縄と呼ばれる場所の名産菓子である。



この世界にないはずの菓子がなぜある?



「食べる?」


リュカが差し出してくるサーターアンダギーを受け取り、一口食べる。



「なにこれ!?おいしい!!」


思わず叫んでしまった。


生地は表面は弾力、中はもっちり。


かけられた砂糖は甘すぎずに丁度いい量。


かつて食べたサーターアンダギーにとても近かった。



「リュカ!もっと、ちょうだい!」


「やだよ。俺のだし」


「でも、普段はお菓子食べないじゃない!」


「でも、これは食べられるから」


「ケチ!」


「なんとでも言え」


リュカが食べる姿を恨めしげに睨みつけた。




やがて家政科の女生徒のお菓子は他の学科にも広がるようになった。

貴族層が彼女のお菓子を食べるようになったのだ。


そして、同じく生徒会のレオンハルト、ユリウス、ギルハルトもその女子生徒に依頼し、菓子を作ってもらったらしい、


チョコケーキ


チュロス


果実のチップス



どれもこの国では珍しい菓子達だ。



「殿下。前にチョコケーキを作ってくれた女子生徒とは誰なのですか?」


生徒会の職務中に聞いてみる。


キャロリーヌも生徒会の役員であった。



「あぁ、家政科のリオネットという生徒だよ」


「!?」


リオネット!?


まさか、ヒロインのリオネット!?



「リオネットはすごいんだぜー!!サンドイッチもうまいんだ!!」

「あぁ。彼女の菓子や手料理は不思議と食べられる」


ギルハルトの言葉にユリウスが同意の言葉をかける。



「キャロリーヌ?」


レオンハルトが黙ったキャロリーヌに声をかける。



(まさか、ここに来て破滅フラグが進んだ!?)



いつの間にかレオンハルトもユリウスもギルハルトもリオネットに会っている。



『キャロリーヌ。君と婚約破棄させてもらうよ』



想像のレオンハルトがテンプレ小説の台詞を自分に告げるのがよぎる。



その隣にはリオネットがいた。


キャロリーヌはついにリオネットに会いに行こうと決意したのであった。




レオンハルトから、リオネットは家政科の自主練習用の厨房にいることが多いと聞き、向かう。


今は夜だが、彼女は夜でもいることがあるのだとか。



抜き足差し足で進むと



「!!」


匂いがする。



これは洋食ではなく出汁と焼けた生地の匂いだ!!



友達と家族で”あれ”を焼いた時の記憶が蘇り、キャロリーヌは廊下を走りだす。



教師がいないことが幸いだった。いたら絶対注意されていたからだ。



キャロリーヌが自主練習用の厨房のドアを開けると、リオネットがいる。


彼女はすごく驚いていたが、それでも近づく。




「‥‥っ」


「あの」


「‥‥ぁ」


「ど、どうしました?」


リオネットが訝しげにキャロリーヌを見る。



「ご飯を食べさせてください!!」



「はい?」



「お願いします!あなたが作っているものを食べさせてください!!」


「い、いいですけれど」



「やった!!」



キャロリーヌは気づいてなかったが、リオネットはかなり引いた表情をしていた。





生地のふわり感


卵と出汁の感触


野菜のしゃきしゃき感



これは完全にそれそのものではなかったが、確かに前世にあったお好み焼きに近かった。



全部が全部懐かしく、おいしかった。



公爵令嬢、王太子の婚約者の食べ方を忘れてがつがつと食べていく。


そんなキャロリーヌを見てリオネットは何も言わずにお茶を出してくれた。



ヒロインを破滅フラグだなんだと怖がっていたが、リオネットはかなりいい子だ。



そして、キャロリーヌは決意する。


リオネットに投資しようと。



全ては和食を食べるためである。



一方でリオネットはこの人、よく食べるなと思っていた。

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