第3話 対価
第3話です!
「……はぁ、……はぁ……っ」
古代守衛たちが沈黙し、静寂が戻った祭壇で、私はその場に膝をついた。
立っていられない。全身の筋肉から芯が抜け、鉛を流し込まれたような凄まじい倦怠感が襲う。視界がチカチカと火花を散らし、指先一つ動かすのにも、激痛に近い疲労が走った。
「おっと、大丈夫? ……あはっ、やっぱり『今の人間』には、俺を実体化させるのは少し荷が重かったかな」
目の前で、実体化したカリウスがケラケラと笑いながら、私の顔を覗き込む。
ウィッチハットの影から覗く黄金の瞳は、私の魔力を吸い取ってさらに艶やかに輝いていた。
「……あんた、……何を……」
「俺の魔法は、あんたの『魔力』を燃料にしてるんだよ。俺の身体は封印されてて魔法使えないからね。……あんなガラクタをお掃除するだけで、お嬢ちゃんの貯蔵庫はもう空っぽみたいだね。……可愛いなぁ、そんなにボロボロになって」
「……ひどい、じゃない……っ! 勝手に私の魔力使わないで、よねっ……!?」
絞り出した声は、自分でも驚くほど掠れていた。
カリウスは私の頬を冷たい指先で撫でると、耳元で悪魔のように囁く。
「あはは、ごめんごめん。でもさ、お嬢ちゃんが俺を抜いたんだろう? 俺を抜いた時点でもう、お嬢ちゃんの魔力は俺のものになったってことだ。……俺を握るってのは、そういうことだよ?」
「……なっ」
言い返そうとした私の視界の中で、彼の輪郭がふわりと滲み始めた。
指先の先から、光の粒子となって風に溶けていく。魔力の供給が途絶え、実体を維持する「枷」が外れようとしていた。
「おっと、もう実体化解けちゃうのか。……名残惜しいね。 ……あはは、またこの姿で会おうね、お嬢ちゃん」
陽炎のように揺らめき、透き通っていった彼の身体が、最後の一粒まで空間に溶け落ちる。
───ガシャンッ!
後に残されたのは、祭壇の石床に無機質に転がった、一振りの輝く「剣」だけだった。
私は震える手でそれを掴み、無理やり背負い袋に押し込んだ。
「これだけの、大物……。せっかく手に入れたんだ……絶対に、高く、売ってやる……!」
意識が遠のく中、私は這うようにして遺跡を後にした。
背中のバッグから、小さく、けれど愉しそうな笑い声が、私の意識を繋ぎ止めるように鳴った。




