第三話 魔法の力
プルルルルル!
突如大きな音がヒナタの方から鳴った。ヒナタは手のひらほどの大きさの板を耳に当て何かと会話しているかのように話している。通信魔法のようなものだろうか。
「………!うそ、でしょ」
小さく言葉を出したヒナタは会話を終えてこちらをみた。泣きそうな顔だった。
「お願いミルク、一緒に来てほしい………」
どこに行くかはわからなかったが、彼女のか細い声に何かが起こったことを察してついて行くことにした。
到着したのは「病院」というところらしい。夢世界の回復魔法所と似たようなものだと思う。人の治療を目的とした場所だ。
道中で、何があったのか質問した。ヒナタは涙を堪えながら教えてくれた。
「大切な人が死んじゃうかもしれないの。ユキミおばさん。記憶のない私の面倒を見てくれてる、優しい人なの。さっき病院からの電話でおばさんが倒れて病院に運ばれてたって。初めてじゃないの。多分、もう延命は難しいって言われちゃった」
どうしようとつぶやくヒナタに私は側にいることしかできなかった。
「おばさん!」
ヒナタはベッドに寝転んだユキミさんに駆け寄った。ユキミさんはヒナタと他の人間界の住民と同じように黒い髪をしている。彼女は弱々しく震える手でヒナタの頬を触った。
「ごめんね………ヒナタ。あなたにあげる思い出は、最後まで………楽しいものにしたかったのに」
ピッ…ピッ…ピーーー。ベッドの隣にあった四角い箱から出る音が止まる。部屋にはヒナタの泣き声だけが響く。そんな中で、私はある異変に気付いた。
どうやらポケットに入れていた姫様の羽根が熱くなっている。羽根からは魔法を使う時のように光が生まれる。呼応するようにヒナタの身体もひかりだし、その光は部屋を包んだ。これほど眩しいのに、泣いているヒナタは気付いていないようだ。
光が収まるころ、止まっていた箱の音がまたピッ、ピッ、と鳴り始めた。そして、ユキミさんは目を覚ました。
「うそ、おばさん………い、生きてる!」
ヒナタの言った通り、ユキミさんは今生きている。いや、ここでは「生き返った」と言った方が正しいのかもしれない。おそらく、ヒナタが無意識に魔法を使ったのだ。
驚いていたヒナタはユキミさんが元気になった現状に気付くと「よかったおばさん生きてる」「元気だ」と言いながらユキミさんに抱きついている。ユキミさんも何故自分が生きているか理解できていないようだったが、喜ぶヒナタを撫で続けていた。
病院からの帰り道、行く宛のない私はヒナタの家に住まわせてもらえることになった。ユキミさんはしばらく様子見の入院らしい。
家に着くと、ヒナタに姫様の二枚の羽根を渡した。「ミルクとお揃いだね」と嬉しそうにヒナタは言っていた。きっと、彼女なら姫様の羽根を使いこなせるようになるだろう。ただのオシャレアイテムとして羽根を身に付けるヒナタの姿は予想した通り、姫様に似ていた。




