第二話 初めての人間界
人、人、人!!!溢れかえるほどの人の波に目を輝かせる。ここが人間界、周りには水晶で見た景色とまったく同じものが広がっている。
「ねえねえ」
辺りを見回しているといきなり背後から肩を叩かれる。振り返ると私と同年齢であろう黒髪の少女が立っていた。
「あなた、ここにずっと立ってたら危ないよ。ほら、信号が点滅してる。走って!」
黒髪の少女に腕を引っ張られ、しましまの地面から少し段差のある隅っこに移動した。さっきまで私がいたところは動く大きな塊が行き交っている。不思議だ………。
「ねえ、聞こえてる?あなた不思議。すごく変わってるね」
少女の言葉に?が浮かぶ。この子は何を言っているんだ?私が変わってる?私が?表情に出ていたのか、少女はすぐに謝った。
「あ、ごめんごめん。名乗ってもないのにいきなりごめんね!私はヒナタ。ヒナギクヒナタ。あなたは名前なんていうの?」
ヒナタというのか。変わっているというけれど、ヒナタもこちらからしたら変な子だ。一歩後退りながら「ミルク」と名乗ると「苗字は?」と一歩進んで聞いてくる。何それ、み、みょうじ?
「そっかぁ、ミルクちゃん変わってるもんね。道路の真ん中でずっと立ち止まったままだったし、髪も白いし。それってオシャレでしてるの?」
また変わってると言われたことは一旦横に置いておく。ヒナタの言葉で理解したことがある。「人間界の住民は、髪色が黒いのが当たり前で、白髪の人が見渡す限り私以外に一人もいない」ということだ。確かに、周りと比べれば私の見た目は浮いているのかもしれない。思考に夢中で質問に答えていなかったが、ヒナタは気にせず質問を続ける。
「もしかして、あなたも記憶喪失なの?」
あなた「も」?
「あなたもって………ヒナタは記憶喪失なの?」
質問を質問で返してしまったが、ヒナタは笑顔のままで答えてくれた。
「そうなんだ。私、記憶喪失なの。半年より前の記憶がないんだ。このヒナギクヒナタって名前も周りの人につけてもらったもので、本当の名前はわからないの。私が何者かもわからないの。でも大丈夫!今、私は楽しく過ごせてるし、ミルクもなんとかなるよ!力になりたいもん!」
記憶喪失、半年前、姫様がいなくなったのはおそらく半日前で、夢世界の一日が人間界の一年といわれている………。この世界のことを何も知らない私のことをヒナタは記憶喪失だと言って助けようとしてくれる。そんな彼女の優しさよりも、時間の関係性について考えてしまった私は冷たいだろうか。ふと自分の冷たさに悲しくなった。




