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女児型なると製造機 なるみ [ 試作型 ]  作者: しおまめさん


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1/2

なると製造機 なるみ2026

 玄関チャイムの後、「お届けものれ~す!」の声。先週、鳴海工機製作所に問い合わせたら、AI学習をかねた商品モニターを打診された。このタイミングで届いたのなら、待望の新型個人向けなると製造器だろう!


『味気ない、なるとレス()()()からの解放!!』

「なると製造機がうかがいました」


 急いで玄関に向かい、扉を開く。

 ちいさな、女の子が立っていた。

挿絵(By みてみん)

 ……小学生くらい?



「あの……荷物は?」

「ためしてないれす」

「え?」

「まだ、ためしてないのれす」

「ぇ……え?」

「ひ、ひっぐ」

「え、なに?」

「 ぅ わ あ ぁ ぁ あ んっ!! 」


 なると製造器が配達予定日に届かず、茫然自失の僕。

 おいおいと涙をこぼして玄関先で泣きじゃくる子供。



 御 近 所 の 白 い 目 。


「も~お荷物って言われたぁ~!」

「わ、わわ、ちょっとタンマッ!」

「も~おわた、すてられたれす!」

「とっ、とりあえず! 入って!」


 玄関先に這いつくばったまま、小一時間。泣くというより「っえぐ、ぅげぇ」と胃が引っ繰り返ったようにえずきだして、それすら声にならなくなった。


 用意してきた水を飲ませる。

 少しだけ落ち着いたらしい。



「大丈夫かな?」

「はぃ、れすぅ」

「僕の名前は、大鈴(おおすず)みなと。お嬢さんは?」


 少女は「おおすず、みなとさま」と復唱しながら、配送伝票らしき紙片を見て、大きく頷いた。どうも配達に来た先は合っていて、なにか会話に行き違いがあっただけらしい。さぁ新型なると製造器の性能や如何に?!



「ぅ、ひっぐ。人型なると製造機、なるみ2026試作型れす。産業廃棄物処理は嫌れす、恐い、最後のチャンスなのれす……ご迷惑はおかけません、1回おためしてください、お勉強も、たくさんがんばります」


 ……は?


「う~ん」



 壊れてしまった、先代なると製造器と見比べてみる。



 材料投入口、手回しハンドル、なるとの絞り出し口。

 これを蒸したら、なるとができた。

 白物家電というよりも調理器具だったが、パーソナルユースの『なると製造器』としては十分すぎる性能。しかし、修理を依頼するたびに販売に苦戦中とは聞いていて、きちんと手入れしながら、だましだまし使い続けてきたのだが――


 とうとう、先週末。

 ハンドルの回転に抵抗があったのでグッと力を込めると、見慣れぬ歯車がコロンと転がり落ちて真っ二つに割れた。それを見た時、嫌な予感はあった。


 生産終了、パーツが無かった。


 しかし。

 なると製造器のトップブランドは諦めていなかったーっ!!


 社運を賭けた起死回生のプロジェクト。最近のテクノロジーと学習機能AI搭載によって、味や食感、様々なレシピを覚え進化する、『自分好みに()()()()()()』と聞いた時は『ダジャレか?!』と思ったけれど。


 既に試作機がある。

 モニターを募集中。

 当然、快諾したが。



「なるみちゃんが、なるとをつくるの?」

「は~い!」



 なにがどうして……ロボットに変形したんだ?

 人型になったとは、聞いてない。

 こちらも「どんな形状?」とは、聞いてない。

 お互い様、か。



「僕、なるとを袋めんに入れて食べたかっただけなんだけど」

「ご迷惑は、おかけません。飲まず食わずで働きますれす!」

「いや、そういうわけには」

「ゎたし太陽光発電なのれ」

「あぁ、そういう意味で?」



 知りうる限り、なると製造器メーカーは鳴海工機のみ。食材としては一般的でも自家製なるとの需要は低すぎるし、競合他社があっても結局なるとができるだけ、単一機能すぎたことも一因だろう。


 なるみ2026は、違う。

 解決方法を搭載している。



 ()()()()()()()()()だ。


 まずは基本、なると作り。

 冷蔵庫から魚を取り出す。



「なるとの作り方は知ってるんだよね?」

「もちろんれす!」

「あ~よかったぁ」

「魚肉のすり身をのばし、色をつけた一枚を巻きこみ、すまきで巻いて蒸します。小口切りの断面が渦巻模様となるのが特徴です(出展:好事苑)」


 間違ってないけど。

 本当に……大丈夫?



「その機械的な返答、怖いわ」



 先代なると製造器を箱にしまう姿を、なるみ2026は悲しい瞳で見詰めていて「おつかれさまれす」と囁きながら、そっと古ぼけた紙箱に触れた。


 気のせいか、瞳も潤んでいるように見える。


 機械的な反応、人間的な振る舞い。

 見た目が子どもで、ふり幅ひどい。

 精神的にも不安定すぎる気がする。


 モニターを募集中、と鳴海工機は言ってた。

 何度も何度も突っ返されたとしか思えない。



「じゃとりあえず、ここで」

「わ~っかりまっした~!」


 接地面積は同じくらい。

 スペース的に問題無い。

 ただ、高さ方向が――


 机に立って生魚を持った小学生に、見下ろされる格好になった。



「前のより、かなり……場所を喰うね?」

「すみませんすみません、すみませんっ」

「や、平服しろって意味じゃないよ?!」


 僕は試作型なるみ2026と二人三脚で、なると製造機を立派な製品に育てあげ、世界へ送り出す第一歩を踏み出したッ!!


 いや、作ったのは僕じゃなくて。

 鳴海工機製作所なんだけど――

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