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【絶望】異世界パチンカス【チートなし】【超短編_約3500字→7分】

作者:

 激熱スカ太は人生最大の不幸を味わっていた。


スカ太「あ、あ、あ……」


 よたよたと力なく、近所のぱちんこホールから外へ出た。


 ふらふらと進んだが、道路の真ん中で力なくへたり込んだ。


スカ太「あああああああああああ……!


(読み飛ばし可_ここから>)

 何で1000ハマった後に単発なんだよ意味分かんねーよそんなはずねーじゃん絶対確率おかしいよ1000ハマったら連荘すべきだろなんで俺だけこんな不幸なんだよ不公平だろしかも最後赤保留が当らなくて引き戻せないとかあり得ないだろそりゃ最後緑カットインだったよ?展開もちょっと弱めであれ?てなったよ?チャンスアップもないしでもさあ赤保留なら行けると思うじゃんあいつだけは信じたいじゃんもう何も信じれないよさすがに最後復活すると思ったのにスンだよスンしれっと次回転行きやがってよクソ台がよおユーザー心理全然わかってねえよ俺ならもっとマシな台作れるわていうかあんなクソ作ろうと思っても作れねーわあんなの列で導入してるこのホールもセンスねーよマジねーわあり得ねーよ前から思ってたんだよ回らねーわ当らねーわ連荘しねーわあのおばちゃんだけやけに連荘しまくるわ遠隔だろあーもー絶対遠隔もー二度と来ねーぜってー来ねーすぐ潰れるわこんなホールもう返せよ金返せよ頼むから返してくれよ今月マジ無理なんだよイベントだからって来てやったんだからああああああああああああああああああ!!

(<ここまで_読み飛ばし可)」


 ドン。


 トラックに轢かれて、彼の人生は終わった。


********


女神「スカ太……目覚めなさい、スカ太……」


 かに、思われた。


スカ太「え?なにこれ?復活演出?

 キュイン?きゅぴぴぴぴーん?」


女神「あなたは、まだ死すべき運命にありません。でもなんやかんやで元の世界じゃなくて異世界に転移させるのでそこで生きるのです」


スカ太「ぎゅいんぎゅいんジャキーン(手で可動役物をつくる)キュキュキュキュキーン」


女神「あの、聞いてます?」


スカ太「ピポピパピポプー……!

 いや、これ人生最高の喜びを表現してるから」


女神「あ、はい。では、転移させるので」


スカ太「ちょっと待て。


 まだチート能力というか祝福というか加護というか、何でも良いけど、努力無しで楽に必要以上に欲望を満たしてウハウハになれるアレを説明してもらってないんだが?」


女神「ありません」


スカ太「ん?」


女神「ないです」


スカ太「困るんですけど。チート無しでどこか知らん世界に放り出すってほぼ殺人なんですけど。普通人がどうやって生きてくっての?」


女神「普通にがんばってください」


スカ太「おま、マジか!常識を知らんのか?

こういうのは負け組が勝ち組になれるようにサポートする義務があるだろ!?」


女神「じゃ、送りまーす」


スカ太「おい、やめろ!復活演出と思わせて外すのは人類が最も犯してはいけない大罪だぞ!?

 わかってんのかー!?」


 かー……かー……かー……


 残響を残して、スカ太は異世界に消えていった。


********


スカ太「マジか……」


 現代日本では考えられない晴天を見上げ、土むき出しの道にスカ太は座りこんだ。


スカ太「完全詰んだやん、これ……

 相変わらず金ないし。いや、あと20日でバイト代入ることを考えたら悪化してんぞ。

 あの女神なー……オーラ黄色いと思ったんだよなー、下から二番目に弱い女神だったんだろーな……やっぱレインボー以外の色は信じちゃだめだな……」


 ため息をついて、スカ太は辺りを見渡した。とにかく、なんとか生きる方法を探さなければならない。


 ここは、小さな街の通りのようだ。

 みすぼらしい木造の家が並んでいる。いくつかは出店のようだ。果物や魚が並んでいる。


スカ太「とにかく、メシと宿をなんとかしないと……」


 そのためには、金が要る。


 ダラダラと歩くスカ太の目に、ひとつの看板が飛び込んできた。


スカ太「酒場、だな……」


 とりあえず食うものはありそうだ。金はないが、最悪、食い逃げという手も……


いかつい店主「おう、らっしゃい」


 ないな。悪いことはダメだよね。


 スカ太は薄暗い店内を見渡した。


 十あまりのテーブルが、半分くらいうまっている。


 取っ組み合いになっても勝てそうな……相手はいなかったので、せめて温厚そうな口ひげの男の真向かいに座った。


スカ太「なあ、これ、この国の金か?」


 スカ太は口ひげの食事の脇においてある硬貨を指した。


口ひげ「そうだけど……」


スカ太「ちょっと見せてくれ。

 なあに、取りゃしねーよ。遠くから旅してきたからな、色々珍しいんだ」


 口ひげはいぶかしげな視線を送ってきたが、なにも言わなかった。


 スカ太はコインを手に取り、眺めたりコイントスしたりしてみた。


スカ太「おい、気づいてるか?」


口ひげ「?」


スカ太「さっきからさ、このコイン、3回連続で裏が出てるんだよ」


口ひげ「ふーん……」


スカ太「さすがに3回連続だからな……次は表だな」


口ひげ「そうかもな」


スカ太「……賭けるか?」


口ひげ「え?」


スカ太「いやー、表だろ、表だろって思うんだけどさ。


 今回はお前に譲るよ。表が出たらお前の勝ち。無いとは思うけど、4連続の裏だったらおれの勝ちってことで」


口ひげ「おめえ、金ないだろ?何賭けるんだ?」


スカ太「この服やるよ。表が出るだろうしさ。まあ、お近づきの印ってわけだ」


口ひげ「……いいのか?」


 スカ太は心の中で、ニヤリと笑った。


 やはりだ。この世界には確率という考えが浸透していない……!


 何連続でコインが裏だったとしても、次にコインが裏になる確率は変わらず50%……!


 この誤認を逆手に有利な勝負を仕掛け、俺がコイツの財産を全てもらい受ける!


 ぴん。


口ひげ「表だ」


スカ太「~~~~~~~!」


 落ち着け。大丈夫だ、激熱スカ太。


 上着を脱ぎながら、スカ太は自分に言い聞かせた。


 結局50%だからな、こういうこともある。だが大丈夫だ。俺は常に50%を分かっているんだ。


 常に確率の世界でギリギリを生きてきた俺が、負けるはずが無い……!


スカ太「3連続裏の後の表1回だからなー、まだ表が出やすいんだろうなー」


口ひげ「まあ、そうかもな……」


スカ太「まあ、今回も有利な表をゆずるよ。その代わり裏だったら、さっきの服に加えてこのコインももらうぜ?」


口ひげ「……いいのか?」


 スカ太は心の中で、ニヤリと笑った。


 フッ……バカめ!確率というものはそんな短期間に収束しない……!


 確率の収束とはもっと長いスパンで発生する現象だ。たとえ裏が100回で表が1回の状態でも、表が出やすくなる訳では無い。


 確率は変わらず50%……!


 ぴん。


口ひげ「表だ」


スカ太「~~~~~~~!」


 落ち着け。大丈夫だ、激熱スカ太。


 ズボンを脱ぎながら、スカ太は自分に言い聞かせた。


********


 激熱スカ太は人生最大の不幸を味わっていた。


スカ太「あ、あ、あ……」


 よたよたと力なく、酒場から外へ出た。


 スカ太の服は全てなくなり、残ったのは「さすがに要らねえ」と断られたパンツだけだった。


 ふらふらと進んだが、道の真ん中で力なくへたり込んだ。


スカ太「あああああああああああ……!


(読み飛ばし可_ここから>)

 期待値的には絶対勝ってた絶対勝ってたし期待値絶対稼いでたし100回やったら60いや80回は勝ってたねあーもーマジやってらんねー明日もっかいやれたら絶対勝つのになんなら勝ちすぎて酒場のオーナーとかなってたしほんとマジで100回やったら90勝ちの勝負逃すとかマジあり得ねーホントなら今ごろ勝ちまくった金で飯食って宿とって女でも買ってたハズじゃん?不運にも程があるだろ何でこうなったんだよもうパンツしか残ってねえよなんでこんな運悪いのおれ?マジないわ今日ホントおかしいそういえば1000ハマリの後単発だったし赤保留外すし女神黄色だしホント今日なんなの?宇宙全体の不幸が全部俺に集中するとか?そんな感じ?あーないわマジ死ぬしかない金ねーしさみーし腹減ってきたし金ねーしつかマジ何なの?普通ここまで剥ぎ取る?そりゃ俺が自分で賭けたけどそれは期待値あって勝算があったわけでなんなら勝たなきゃおかしい状況だったからでこんな不幸が起きるなら最初から賭けてねーしこんなことになるなら最初から言っておくべきだろパンツしか残ってねーし知り合いすらいねーしマジ田舎だし明日からどうすんのこんな知らん世界に一人とかマジでもおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!

(<ここまで_読み飛ばし可)」

 

なんだって?!オレ以外にも転生者が?

ヤツの名前は連荘 幻、常に「昨日は出てた」と言うがその現場を誰も見たことがない強敵だ……!

やめろ、その落ちてる銅貨はオレのものだ!手を出すならアレだ、マジでアレするぞ!

次回「紫保留が弱いのやめろ」

勝てる気がする……!今日こそは!


女神(黄色)「つづきません」

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