表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/11

第7話:星のかけらを、君に

 宇宙を漂うコトブキ号の窓辺で、晃司は外をボーっと見ていた。

 隣では、ポン子が毛布を掛けて、ちょこんと座っている。

 さらに、テーブルの横には、大根さんが湯気をふわりとまとっていた。


「……コウジ、寒くない?」


「いや、大丈夫だ。ありがとうな、ポン子」


「ダイジョウブ……オデン……アタタカイ」


 大根さんも、ぴょこりと頷いた。


 晃司は、少しだけ笑ったあと、ふと、遠くを見つめた。


「……今、……澄子のことを思い出してたんだ」


「スミコ……?」


 ポン子が、目を丸くする。


「コウジ、ニンゲンノ、ナカマ」


 晃司は、小さく頷いた。


「ああ。……澄子は、俺が地球にいた頃、いちばん大切だった人だ」


 夜空を見上げながら、晃司は静かに語り出す。




 ――あの日、澄子と二人で、流星群を見ようって約束してたこと。

 ――だけど、仕事の都合で、約束を果たせなかったこと。

 ――そして、澄子は「しょうがない」「大丈夫」と言ってくれたが、悲しそうな表情をしていたこと。




「……約束を破ったのに、澄子は最後まで俺を責めなかった。

 『きっと今も、おでん、なんか探して』って、笑ってるさ」


 晃司の声は、少しだけ震えていた。


「だから今でも、流星群を見ると、胸が、少しだけ痛ぇんだ」




 ポン子は、黙って晃司の手を握った。


「コウジ……ポン子、流星群探します!」


「……は?」


 晃司は、目を丸くする。


「イマスグ、ショウワクセイタイ、ミツケル! リュウセイグン、トドケル!」


 大根さんまで、ぐぐっと身を乗り出した。


 晃司は、吹き出して、頭をかいた。


「……まったく、お前らなぁ。……でも、ありがとな」







 数時間後――。


 コトブキ号の進路が微妙に修正され、小惑星が多い星をかすめる航路へ。

 エンジンが静かに脈動し、宇宙に、静かな奇跡が起きた。




 きら、きらきら……


 夜空に、細く、優しい光が流れる。

 それは、とても美しかった。




「……きれい……!」


「キラキラ……!」


 ポン子と大根さんが、小さな声をあげた。


 晃司は、ただ静かに、星たちを見つめていた。

 その胸の中には、澄子の笑顔が、ふわりとよみがえっていた。




「なあ、澄子見てるか?」


 窓の向こうに、そっとつぶやく。


「お前と見るはずだった流星群、今、ここで見てるよ。……大切な仲間たちと、一緒にな」



 大根さんも、ほんのり光りながら、そっと言った。


「ミツケタ、オデン……アイ……アタタカイ」




 晃司は、にっこり笑った。


「……そうだな。

 見つけて見せるさ、澄子の味も、ポン子の記憶も」




 コトブキ号は、流れる星々の中を、静かに進んでいく。

 夜空には、いくつもの願いが流れていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ