表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ほのぼの宇宙航海記~澄子のおでんを、もう一度~  作者: カラスのカンヅメ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/11

エピローグ



 ――数年後。


 ナゴミ・ステーションの片隅、そこに、ひときわ柔らかな灯りを放つ一軒の小さなおでん屋があった。


 店の名は、《澄子》。


 白木のカウンターに、小さな暖簾。客たちが、ほっとひと息つけるその空間に、香ばしい出汁の香りが漂っていた。


「いらっしゃいませ。今夜は、こんにゃく、ちくわ、大根、しみしみですよ」


 笑顔で迎えるのは、ポン子だった。


 彼女は澄子のレシピをもとに、おでんを通して“ぬくもり”を伝える店を開いていた。


 客たちが笑い、会話がはずむ。


 ふと、カラン、と扉の音が鳴った。


 入ってきたのは、年季の入った宇宙服姿の老人――晃司だった。


「……お、ナゴミ・ステーションで一番うまいおでん屋があると、聞いて来たが空いてるか?」


 その声に、ポン子は涙を流しながら、ぱっと笑顔を広げた。


「コウジ!」


「久しぶりだな、ポン子」


 晃司はカウンターに腰を下ろし、ポン子は、大根さんと視線を交わす。


「大根さんも、久しぶり!」


「……ダイコンサン、カオ、ワスレナイ……」


「もう会えないかと思っていた」


「俺は、約束は守る方だぞ」


 ポン子は湯気の向こうで、お玉をゆっくり鍋に沈めた。


「今日は、ちょうど澄子さんの“黄金出汁スペシャル”、作ってあるよ」


「……そうか。あいつ、見てるかな。俺たちのことを」


「きっと見てるよ。だって、あの味があるんだから」


 熱々の大根を口に運びながら、晃司の頬がゆるんだ。



「……うん、やっぱり、これだ。澄子の味だ」



「……オカワリ!」



 静かに広がる湯気の中で、三人は黙って鍋を囲んだ。 誰も急がず、誰も焦らず。



 ただ、心がじんわりと温まる時間が流れていた。



 外には、宇宙の星々が静かにまたたく。



 旅を終えた者も、これから旅立つ者も、この店に立ち寄るだろう。



 そしてまた、ポン子は笑顔で出迎える。



 「いらっしゃいませ。今夜も、しみてますよ」



 ――それは、星の海に灯る、ひとつの“家”の光だった。



 (完)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ