2.私が手掛ける事業と変貌した幼馴染。
事業内容:
~サーティ公爵家領地にあるソルク湖の治水に関する事業~
我がサーティ公爵家領地に暮らす領民は長きに渡りソルク湖よりの河川の治水に悩まされ、農地としても困っているのが現状。
多雨では農地に水が多く農作物の根腐れの心配に襲われ、少雨では農地が乾燥してしまうのでは?農作物への影響は?と心を悩ませてきた。
そこで、ソルク湖の治水を提案します。
ソルク湖に時間により放水するという水門を作ります。丈夫なものでなくては、水圧に耐え抜くことはできないでしょう。
水門を開けるのは簡単ですが、閉めるのは力が必要となるので、屈強な騎士様などにお願いしたいと考えています。
水門の材質については、騎士様の鎧に用いているような金属。大規模なものになるので、かなりの量になるでしょうが、我が公爵家には良質の鉄が取れる鉱山があり、問題はありません。
水門は大きなものだとより大きな力が必要になるので、小さなものをいくつか設置することを提案します。
支流となる河川につき一つ水門を設置ではなく、水門と水門の距離で個数を設定すべきだと考えます。
水門の開け閉めについてですが、歯車を上手く利用して、ペダルをまわすようにしたいと考えております。
治水が上手くいけば生活用水としての活用も容易になる事でしょう。
これらすべてについては実際にソルク湖に行き、測量を行い模型を作りそれから具体的に決めていきたいと考えております。
スロート=サーティ
最後にサインまでしたし、お父様が納得してくれたらなぁ。
これ、ハロー侯爵家の領地にある湖の治水について考えたものをそのままサーティ公爵家領地にある湖に取り替えただけなんだよなぁ。
ハロー侯爵家の領民のことだけが気がかりなんだよね。あんな頭の中が年中無休の観光保養地の人に領地経営がまともにできるとは思わないし、侯爵家なのに財源が現在も危ういし。
私は直接ソルク湖に行き、測量を行い模型を作ることにした。
「ちょっと待ってください!お嬢様~‼」
侍女のキティに止められた。
「お嬢様がそのような格好で勇ましく出向くのは、些か貴族の令嬢…それも公爵家の令嬢としてはしたないですよ~」
確かにそうなんだけど、私はキズモノの出戻りだし、いいんじゃない?と思うのは私だけなのかなぁ?まぁ、社交界では面白おかしく私の事が話題になっているんでしょうね。噂を撒き散らしてるのは恐らく、ハロー侯爵家。まぁ、公爵家との離縁ですからね。話題になるでしょう。他人の不幸は蜜の味。って言うし。
「お嬢様!聞いてます?せめて護衛の一人も付けて下さい」
「あ、ゴメン若干うわの空だった。護衛?うん、それじゃ、一人」
「護衛の一人でもって言葉の綾ですよ!護衛をしっかり手配してください!あぁ、心許ないなぁ。このキティもともに参ります!」
結局、私とキティと二人の護衛の計4名でソルク湖に行くことにした。途中で見た領地はやはり灌漑施設がしっかりしていないのか、作物が十分に取れていないのかな?領民が痩せているように見えた。
それにしても…キティが連れてきた護衛の二人見覚えがあるのよね。片割れはうちの門番してる人だからわかるわよ?っていうか、門番もうちは強力なの?問題はもう一人よ!
「うーん、どっかで会ってるような気がするんだけど、うーんうーん」
「お嬢様?わからないのですか?彼の名前はヘンリー。昔よく遊んでいたじゃないですか!」
昔、よく遊んでいた??
「ええーっ⁈泣き虫アンリちゃん?だって、アンリちゃんは女の子じゃない…」
「自分は昔よく女の子に間違われていましたけど、お嬢様にまで間違われていたとは……」
「だって、泣き虫の可愛い女の子だと思ってたし。はぁ、あの可愛かった子が随分と大きくなって」
「親戚のオバサンのような感想ですね、恐れながら」
アンリちゃんは男の子だった。そして、騎士として逞しく成長して私の護衛をするまでに成長した。非常に感慨深いものがある。オバサンと言われようが、感慨深いんだもん!
「今はフリーランスの護衛してるの?」
「お嬢様はご存じないのですね。ヘンリーはうちの護衛ですよ」
えぇっ⁈…知らなかった。