親友(ヤロー)が寝言で俺に愛を囁くしキスしてくるんですが!?
学校を終え、親友の平山翔矢といつものように下らない話をしながら下校する。
「なー彰、今日もお前ん家遊びに行っていい?」
「おーいいよ」
そう言って翔矢は、そのまま俺と並んで俺ん家に向かう。家に着き、俺が家のドアを開けると「ただいま~」と言って、あたかも自分の家かのようにずかずかと入り、翔矢は俺の部屋にまっすぐに向かった。
まあ、翔矢はほとんど毎日のように俺ん家に来てるし、夕飯食べてそのまま泊まっていくっていうのもよくあることだし。俺の両親もこいつのことを気に入ってるから、こいつがどんだけ家にいても怒らないし、寧ろ大歓迎って感じだし。何て言うかもう、こいつとは家族みたいな感じになりつつある。
◆
「なー翔矢、今日どうする?泊まるか──って、既に寝てるし……」
今日も当たり前のように翔矢と俺の両親とで夕飯を食べ、夕飯後俺は風呂に入った。風呂から上がって部屋に行くと、翔矢は俺のベッドの真ん中で大の字になってグースカ寝てた。
「おい、寝るなら風呂入ってから寝ろよ」
俺は翔矢の体を揺らしながら言う。すると翔矢はごろんと俺の方に寝返りを打ち、ぱちりとうっすら目蓋を開いた。
「おはようございます、翔矢君」
と、ため息まじりに俺が冗談でそう言うと。翔矢はふにゃっと笑い。
「おはよ~」
と言いながら、俺の方に手を伸ばしたかと思ったら、俺の頬に優しく手を添え──そして。
チュッ。
唇に触れる、柔らかいもの。
女の子とまだそういうことしたことないけど……これはそれだ、唇と唇を重ねるやつ──そう、キスだ。
──ドンッ!
キスされて思考が止まり数秒後。俺は無言で翔矢の体を押し飛ばした。すると。
「なんだよあきらぁ~朝の挨拶じゃん。照れるなよ~。やっと……結婚できたのに。好きだよ……彰。愛してる、よ……」
そういって翔矢は目蓋を閉じ、ぐおーっと鼾をかいた。
唇に手の甲を乗せ、ベッド横で内股気味に腰を抜かしたまま、俺は放心状態でいた。
……は?今のなに?結婚?俺と翔矢が??好き?愛してる??いや、今の完全に寝言……だよな?だとしても……おかしいだろ!?
なんで俺が翔矢と結婚しないといけないんだよ!てか、こいつどんな夢見てんだよ!!
…………
「……俺はこいつを抱く方か?それとも俺は、抱かれる方か?」
そう、ポツリと言うと俺はハッとして。
──って、なに考えてるんだ俺は!?
翔矢の変な寝言のせいで、俺はひとり眠れぬ夜を過ごすことになったのだった……