捌、青木
前回のあらすじ
いざ東●へ。ところがノアとはぐれた。
ノアと合流するために、一旦●の内口から出て、下見がてら自由通路を通り、日●橋口へ向かう。すごい人の数だ。
「おまたせ」
ようやくノアと再開する。
「お疲れ」
そう言う彼女の両手にはなにかのジュースが握られている。
「のむ?」
飲まないわけない。ありがたく受け取って飲む。甘い。
「人がいっぱいいて怖かった」
合流後、●ノ内線東●駅へ向かって歩く。
「これってさ、私がはぐれたことになるの?」
そうだけど、そうだ、と直接言いたくはない。常に見ていなかった俺にも非はある。
「もうはぐれたくない…」
そう言って彼女は俺のリュックのショルダーハーネスの長さ調節の紐を掴む。
ここで手を繋いであげなきゃ男じゃない。でもなあ。俺とノアの関係はそんなんじゃないし、そうなってもいけない気がするし、普通に恥ずかしいし。…手、繋ぎたい。
「ノア、」「ゆーいち、」
同時に互いの名を呼び、気まずくなる。一瞬、動き続ける人の群れの中、二人は固まった。
気を取り直して●ノ内線に乗車。霞●関で下車。ノアが事前に行くことを連絡してあるので、国の人が迎えに来てくれている。そのままとある建物のとある部屋へ連れられる。ここから俺は空気となり、国の人とノアとのやり取りをただ聞く。
「それで、どう戸籍を改めるんですか?」
「名字を変えてください」
当初のノアの名字はオキアであったが、今は俺と同じ西峯ということになっている。それを変えるということは書類上俺の家族ではなくなるということだ。何かそうするきっかけがあったのか、聞くに聞けない何かかもしれないし、そんなことないかもしれない。だから、ともまた違うが、深堀りしないでおこう。それにしても、戸籍を好きに弄れるなんて転移者の特権だな。地域の役場ではなく、首都まで来ないといけないが。
「わかりました。何に変更しますか?」
「青木でお願いします」
青木?
あおきあおきあおき…おきあおきあオキア
そういうことか。
「青木ですね。明日には反映されていると思います。しかしなぜ名字を変えたんですか?」
「あー、あのー、私東●大受けたいんですけど、英語のリスニングで前の方に座りたいなって」
これは転移者の特権だな。
「それだけのために…?」
流石に国の人も吃驚か。
「それだけではないけど…」
「では何か?」
「今は言えないです…」
理由をしつこく聞いても答えない。レディに全てを答えさせるなど失礼だ。国の人よ、しつこい男は嫌われるぞ。レディかどうかは関係ないか。
「それから、杖についてですが」
それから、俺達は車に乗せられ、どこかに連れて行かれた。
「ノア、どういうこと?」
「杖の研究もしてもらっているからね。ついでだよ」
オープンキャンパス行けるかな?
①国の人②役人③官僚
なんと呼ぼうか。官僚っていうのもあんまりしっくりこないんですよね。なんとなく。