零、魔法観
ここは本編ではないので読み飛ばしても問題ありません
魔法は文字通り、不思議なルールである。わたしたちが生きるこの世界において、魔法はこれまでには観測されておらず、空想上のものとされてきた。
現に、魔法といえば作り話における欠かせない要素の一つでしかなく、手の届かない存在だからこそ、それが登場する作品には高い評価を受けているものも多くある。
魔法、魔術、あるいは呪術、神術などは、その立ち位置、性質、構造原理が作品によってまちまちである。しかし、そのような作品に共通点を見いだせることもある。異世界などが舞台のハイファンタジーにおいては、誰しもが原理的に魔法やそれに類するものを使用することが可能で、実用的かどうかは本人の才能、魔力量に依存する。一方、ローファンタジーにおいては、ほんの一握りの選ばれし者のみが魔法を使え、それは才能というよりも偶然に近い。当然、私がつらつらと勝手に述べているこの共通点にも例外は存在するだろうし、異論も認める。
そして何より、ほとんどすべての作品において、魔法がどのような原理で動いているか明かされていない。勿論、そこがいい、謎は謎のまま、知ってしまっては冷めてしまう、という意見があることはわかる。しかし、やはり腑に落ちないモノがある。私がそういう気質であるとか云々の話ではなく、単純に、魔法を使ってみたい、という手の届かぬ願望に近づく(そう思えるような)ための道具として、私が文学を利用したいのだと思う。
選ばれた者だけでなく、誰しもが魔法を使える世界はどのようなものか、それは物語としては味気ないかもしれない。しかし、それ以上に好奇心が私の筆を動かしている。
私が思いつきで書いている新しい魔法体系について、賛同する、しない、ということではなく、これもまた、一つのあり方として、受け入れられれば幸いである。
終わりに、本作は、私の考えをただとりとめもなく書くのではなく、仮想の人物を中心に、あくまで物語として描いてゆく。
以上の文は、本作についてどのような意図で書いているかということを説明するものではあるが、忘れてしまっても構わないし、寧ろ、そうしていただければと思う。まっさらな気持ちで、本作をただの物語として読んでいただきたい。
私は、何の専門家であるということではないし、何か常人では知り得ないことを知っているというわけでもない、ということを予め断っておく。
次から本編スタートです。