お話の終わりに
魔王を倒した勇者はお姫さまとは幸せにならなかった。
あれから何十年か月日がたった。
私は少しずつ癒されていたけれど、やはりすべてを取り戻すことは難しく人より少しだけ寿命が短かった。
だけど幸せな日々だった。
結局結婚式は駆け落ち婚向けの教会ではなく旧魔族領の館で行った。
少ない知り合いを呼んだけれど、僧侶と聖女の二人が私たちの結婚を証明してくれた。
私たちに子はいない。
私が子を産む器官を取り戻せなかったからだけれど、泉の近くの子供たちの元はよく訪れた。
「あなたそんな顔しないの」
私は勇者を見て言う。
「君に巻き戻りの魔法を教えてもらっておけばよかった」
勇者は私にそう言った。
勇者はあの後魔法を覚えたけれど、それほど才能は無いらしく簡単な生活魔法しか使えない。
「教えても無理でしょうに」
私が笑顔を浮かべて言う。
「祝福に、魔法増強というのがあって、どんな魔法も精度が1000倍になるんだよ」
だから大丈夫と冗談なのかそうでないのか分からないことを勇者は言った。
「私は幸せだった。だから大丈夫よ」
勇者の手が横たわる私の頭を撫でる。
「あなたも、これからも幸せであることを祈ってるわ」
じゃないと報われないじゃない。
口癖のようになった言葉を言う。
「俺は充分報われたよ。
きみのおかげで報われた人生だった」
勇者はそう言っていた。
逆だ。逆なのだ。
「あなたのおかげで私の人生は報われたのよ」
私がそう言うと勇者は顔をくしゃくしゃにして私のことを抱きしめた。
そうして何刻か過ぎて、私はこの世を離れた。
あの人を残していくのは寂しかったけれど、はじめて勇者より先にいけることが少しだけ誇らしくて最期、彼の手をそっと握った。
それは待ってるよという印のつもりだった。
彼と約束をした。
もう巻き戻りの魔法は使わない。
他の人間にも使えないようにそれに至る研究の類は全て処分している。
だからこれでこの話はおしまい。
勇者は穏やかに幸せに暮らしました。
天寿を全うして多くの人に愛されて、彼は天寿を全うしてこの世を去るまで幸せに暮らしたそうです。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
本編はここで一旦終了です。
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